■序盤はBS vs DL。特性の違いが順位を変えた。
2020年11月29日の13時に決勝レースのフォーメーションラップがスタートした2020 AUTOBACS SUPER GT最終戦『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』。
レース開始時の気温は9℃、路面温度は17℃という状況では、予定されていた2周のフォーメーションラップではタイヤが温まり切らないと判断されたようで、フォーメーションラップは3周となり、レース周回数は66周から65周へと変更されることになります。
GT300クラスでは、この3周のフォーメーションラップのうちにタイヤが温まった様子のSUBARU BRZ R&D SPORTはスタートラップのTGRコーナーでポールポジションの埼玉トヨペットGB GR Supra GTを抜きトップに浮上します。DUNLOPタイヤはブリヂストンタイヤよりも温まりやすいという下馬評通りの活躍ぶりをみせます。
しかし埼玉トヨペットGB GR Supra GTはBRZに抜かれはしたものの、その背後にずっと食らいつき、タイヤの温まりが十分になってきたのかプレッシャーを与え続けていくようになります。
そして9周目に再びトップに浮上、開幕戦での優勝を思い起こさせる逃げ切りの体制を作り上げていきます。
これまでの数戦の経験からセーフティカーの影響を受けないうちにピットインを済ませてしまおうというチームが多く、GT500クラスでの23周目あたりからルーティーンのピットインを始めるチームが続出します。
先陣を切ったのは6位だったLEON PYRAMID AMGでタイヤ無交換でピットアウトしていきます。
GT300の24周目にはランキングトップのリアライズ日産自動車大学校GT-Rがピットイン。ドライバーチェンジののちに4本交換でピットアウト。トップで周回を重ねていた埼玉トヨペットGB GR Supra GTは無交換でピットアウトし実質のトップを守ったままコースに復帰していきます。
全てのチームがピットインを終えると順位はトップが埼玉トヨペットGB GR Supra GT、2位にLEON PYRAMID AMG、3位にはADVICS muta MC86、4位にリアライズ日産自動車大学校GT-Rが入ります。トップ3のBS勢にYOKOHAMAタイヤがどこまで食い込んでいけるのでしょうか?
●逃げ切るGR Supra GT、自力で駆け上がるリアライズ日産自動車大学校GT-R
終盤、トップの埼玉トヨペットGB GR Supra GTと2番手のLEON PYRAMID AMGには1周ほどの差ができており、アクシデントが無い限りは順位の変動はないかもしれません。
ピット明けの順位のままでいけばシリーズチャンピオンはLEON PYRAMID AMGとなります。しかしランキングトップのリアライズ日産自動車大学校GT-Rは3位にさえなればチャンピオン。
ここでADVICS muta MC86とリアライズ日産自動車大学校GT-Rの激しい3位争いが始まります。
リアライズ日産自動車大学校GT-RはペースのあがらないADVICS muta MC86に対して1周あたり1秒以上も速いペースで走り、52周目に3位となります。
そして55周目、タイヤ無交換でペースが上がらなくなっていたLEON PYRAMID AMGをも抜き去り、文句なくチャンピオンとしてのポジションへと登りつめていきました。
そしてチェッカーフラッグ。優勝は埼玉トヨペットGB GR Supra GT、2位となってチャンピオンを決めたのはリアライズ日産自動車大学校GT-Rとなります。
3位は最後の最後でLEON PYRAMID AMGを仕留めたADVICS muta MC86となります。結局LEON PYRAMID AMGは4位となりました。
5位には今季の自身最上位となったPACIFIC NAC D’station Vantage GT3。
優勝した埼玉トヨペットGB GR Supra GTは今季のGT300クラスでは初のPole to WINを達成。
シリーズポイントではリアライズ日産自動車大学校GT-Rに及ばなかったものの、今季4回開催だったの富士戦で優勝2回を含むポイント獲得数が最多となったため、「富士マイスター」の称号が与えられることとなりました。
チャンピオンとなったリアライズ日産自動車大学校GT-Rは、今季GT300クラスのドライバーとチームの両タイトルを獲得。藤波清斗選手にも、そして長い間GT500にも席を置いていたジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手にも、また、チームにとっても、初のシリーズタイトル獲得となります。
優勝2回、2位2回。最終戦に直近のライバルよりも前でチェッカーを受け、運とは言わせない走りとチーム力で勝ち取ったシリーズチャンピオン。リアライズ日産自動車大学校GT-Rは近藤監督が作り上げた素晴らしい宝石といえるかもしれません。
コロナ禍の中、様々な困難がレース開催を危ぶんだ2020シーズンですが、主催者、プロモーター、メーカー、チーム、そのほかの関係者や、そして何よりファンの方々の熱い支えがあったからこそ、変則的なスケジュールの中でも全8戦が開催され、シリーズチャンピオンが決定しました。
コロナ禍の影響はまだ続くかもしれませんが、この熱き心で来年度もレースがSUPER GTが開催されることを願って止みません。
(写真:吉見幸夫 文:松永 和浩)