エアクリーナーとは?吸入空気中のゴミや異物などを除去する部品【バイク用語辞典:吸気系編】

■吸入空気をフィルターで濾過してシリンダー壁面の損傷や異常摩耗などを防止

●フィルターの目を細かくすると吸入抵抗が増えるので濾過率と抵抗のバランスが重要

吸気系の最上流に位置するエアクリーナーの役目は、吸入空気中のゴミや小さな異物を除去してクリーンにすることです。そのため、エアクリーナーには高機能のフィルターが内蔵されています。

吸入空気をクリーンにするエアクリーナーの役割と構造について、解説していきます。

●吸気系の全体像

エンジンの燃焼室でガソリンを燃焼させるためには、ガソリンと吸入空気を適正に混ぜ合わせた混合気を形成する必要があります。

吸気系とエアクリーナー
吸気系とエアクリーナー

吸入空気はエアダクトから吸い込まれ、エアクリーナーの中のフィルターで濾過された後、吸気ポートに流れ込みます。

吸気ポートには燃料を供給するキャブレターや噴射弁が装着され、その下流または上流には吸気量を調整するスロットルが装着されています。キャブレターや噴射弁から微粒化されたガソリンが、吸気の流れに乗って供給され、ポート内で混合気を形成した後エンジンのシリンダーに吸入されます。

●エアクリーナーの役割

走行中に取り込む外気の中には、外気の状態によっては空気中のゴミや砂ぼこり、異物が混入しており、そのままエンジンに吸入されるとシリンダー壁面やピストンリング、バルブシート(弁座)の損傷や異常摩耗などのトラブルを引き起こします。

それを防止するのが、吸気系の最上流のエアクリーナーの役目です。エアクリーナーには、濾過機能を持つエアフィルター(エレメント)が内蔵されています。濾過機能を高めると吸気抵抗が大きくなるので、吸気抵抗の少ない高効率のフィルターの開発が進められています。

エアクリーナーには、排気量や最高出力に見合った容量が必要です。また、エアクリーナーは、吸気系内で発生する吸気脈動に影響を与えるので、エアクリーナーの搭載位置や容量によって、出力特性や吸気音の消音も制御できます。

●エアクリーナーの種類

エアクリーナー内のフィルターは、乾式と湿式に分けられます。

乾式は、乾燥した状態で使用するので定期的に交換する必要があります。一方の湿式は、フィルターにオイルを浸み込ませて使用し、定期的に洗い油や灯油などで洗浄することで繰り返し使用できます。

・乾式
濾紙や不織布でできており、濾過面積を増やして吸入抵抗を減らすために波目状に折り畳まれています。比較的ホコリの少ない場所を走行するオンロードモデルには、乾式が使われます。

・湿式
ウレタンフォームと呼ばれるスポンジ状のものが使われています。ホコリの多い場所を走行するオフロードモデルには、湿式が使われます。

●新気の導入方法

通常、吸気系はエンジン上方に装着されることが多く、エンジンの発熱によって吸入空気の温度が上昇します。空気は温度が上がると膨張して密度が下がるので、吸入空気温度が上がると酸素量が減少して出力が低下します。

これを改善するために、カウル付きロードバイクのようにカウル前面など車体前方から温度の低い空気を取り込みエアクリーナーに供給する方法が採用されています。また、車体前面から走行風を導入すると、圧力が高いのでさらに吸入空気量を増やす効果もあります。


エアクリーナーは、吸入空気をクリーンにすることが主目的ですが、濾過効率と相反する吸気抵抗低減との両立が重要です。

また最近はバイクの排ガス規制や騒音規制が強化されているので、エアクリーナー容量や形状の最適化によって、吸気音低減や脈動効果を利用した出力向上も実現されています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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