■窓も開かないクルマが多い
D1GPでは毎年8月に福島県エビスサーキットで大会が組まれることが恒例になっています。そして今年は公式練習日がとにかく暑かった。二本松市の8月の最高気温ランキングで史上9位に入る猛暑日でした。
そんななか、ドライバーは長袖長ズボンのレーシングスーツを着て、グローブをはめて、ヘルメットをかぶるって運転するのです! しかも、内装やアンダーコートが剥がされた競技車両の中は、ゆうに60℃には達するでしょう。これは超過酷です。
まぁ、過酷さでいえばもっと長丁場の耐久レースなどのほうが大変かもしれませんが、最近のスーパーGTでは、GT500などはエアコンがついているそうです。それに比べると、D1GPマシンはエアコンはついていません。
じっさいエアコンをつけると重くなるのと、そのためにほかの部品の配置の自由度が下がったり、故障の原因になったり、コストもかかることなどを考えると、メリットよりデメリットのほうが大きいのでしょう。
いっぽうでドリフトの場合、レーシングカーとは異なる車内事情もあります。たとえばエビスサーキットの場合、走行1本あたりの時間はせいぜい30〜40秒ていど。それ以外の時間は「待ち」です。そのあいだ走行風なんか入ってこないんです。なにもしなかったらドライバーはぶっ倒れてしまいます。
それでは、D1GPマシンはどんな暑さ対策をしているのか見てみましょう。
まずはシンプルな装備ですが、小窓を設けているクルマがあります。じっさい現在のD1マシンではサイドウインドウは樹脂製のはめ殺しにしていて、開かないクルマも多いのですが、小窓を開けているクルマもあります。なにもないよりは多少風が入ってくるようです。
ファンを使ってドライバーに風を当てている車両もあります。クオーターウインドウの部分に吸気口を設けて、ジャバラのホースでドライバーの首もとなどに風を送ります。このホースの途中にファンがついていて、強制的に送風するようになっているので、停車している際にも風が入ってきます。
同じようにしてヘルメットの中に送風するシステムを使っているドライバーもいます。ヘルメットに専用のカバーをつけて、掃除機くらいのホースを連結します。
ヘルメットにはもともと通風のための穴が開いているので、そこからヘルメット内に風が送れるわけです。このヘルメット用のカバーはレース用として売られているそうです。
そして、D1GPでも使われることが多くなってきたのがクールスーツです。
これはホースで接続したタンク内の冷水をモーターでベスト内に循環させ、身体を冷やすというもの。レースでは昔から使われていますが、D1GPでもかなり普及してきました。なお、D1GPの場合、連続で走行する練習走行の場合でも、1セッションが15分くらいなので、レースに使うものよりもタンクは小さめのものを使っているチームが多いようです。
ピットではスポットクーラーも使われます。上部のダクトから冷風が出るやつですね。これは自動車用というわけではなく、工場などで使われることも多いので、ご存じのかたも多いでしょう。このようにして各チーム少しでもドライバーの暑さをやわらげようと工夫をしています。それでもそうとう暑いと思いますけどね。
さて、2日間で第2戦と第3戦が行われたD1GP EBISU DRIFTですが、第2戦の単走優勝はSEIMI STYLE DRIFT SAILUN TIREのシルビアに乗る田中省己選手でした。
第3戦の単走優勝はTeam TOYO TIRES DRIFT–1のGRスープラを駆る川畑真人選手。
そして、ラウンド優勝は第2戦、第3戦とも無敵の強さを発揮したLINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGEのシルビアに乗る小橋正典選手でした。
当初9月に予定されていたセントラルサーキットでのラウンドが中止になってしまったため、D1GPの次戦は10月末のオートポリスになります。
(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス)
【関連リンク】
D1グランプリの詳しい情報は、D1公式サイト(www.d1gp.co.jp)で。