電動モビリティはエンジン車の先を行く。スマホ連携のプログラムアップデートに大感動【バイクのコラム】

■四輪の最新トレンド「OTA」を疑似体験できた

筆者が購入したのはストリーモ社の「STRIEMO S01JT」。現在のメーカー希望小売価格は30万円
筆者が購入したのはストリーモ社の「STRIEMO S01JT」。2024年2月時点のメーカー希望小売価格は30万円

2023年12月10日に公開した当連載において、免許不要で公道を走れる電動キックボードというイメージの強い、特定小型原動機付自転車を購入・継続してレポートするいう内容のコラムを書いていたことを覚えていらっしゃいますでしょうか。

購入したのはSTRIEMO S01JTという、前輪駆動・後2輪の特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)でした。

そんな愛機が納車から3ヵ月ほど経ったころ、メーカーのストリーモ社から「【改善対策】コントローラープログラム書き換えのお願い」というメールが届きました。不具合を改善するためにパワーユニットの制御プログラムをアップデートして欲しいという内容です。

改善内容自体は四輪車でも実施されることがあるもので珍しいとは思わなかったのですが、その手法が専用アプリをインストールしたスマートフォンを介して、車体側の制御プログラムをアップデートするというものだったのは、物珍しいという印象を受けます。

四輪ではOTA(Over The Air)といって、車体に通信機能を持たせ最新状態にアップデートするという技術がトレンドになっています。

制御プログラムの改善対策は専用アプリをインストールしたスマートフォンを介して行えるのは未来的
制御プログラムの改善対策は専用アプリをインストールしたスマートフォンを介して行えるのは未来的

さすがに特定小型原付のようなマイクロモビリティは、それ自体に通信機能を持たせることは難しいのかもしれませんが、こうしてスマートフォンを介してすぐさまアップデートできるというのは、OTA的な世界のエクスペリエンスとしてポジティブな印象を受けます。

そうした未来的なワクワク感を除いても、整備工場に持っていく必要がないぶんだけ時間の節約にもなりますし、不具合のあることを知った状態で乗る時間を最短ゼロにできるという点でも安心です。

筆者の知る限り二輪のエンジン車では、こうしたプログラム変更には対応していません。免許不要で運転できる特定小型原付は、シェアリングで使うことを考慮してスマートフォンと連携する設計になっているのも、こうしたアップデートを可能にしているのかもしれません。

●車両情報確認やセッティング変更もスマホでできる

コントローラーファームウェアのバージョンが最新になったこともスマートフォンで確認できる
コントローラーファームウェアのバージョンが最新になったこともスマートフォンで確認できる

すでに車体とスマートフォンを連携する専用アプリはインストール済みでしたので、アップデートはモノの数分で終わりました。

これがエンジン車でECUのプログラム変更なんてことになると、整備工場を予約して、車両に乗っていって、しばしプログラム変更を待つということになりますから、下手すると半日仕事になってしまいます。時は金なりですから、こうして短時間で改善が実施できるのは、次世代モビリティにおいて当たり前の機能となっていくのでしょう。

ところで、スマートフォンに専用アプリをインストールしておいたのには理由があります。

STRIEMO S01JTはスマートフォン連携が必須だからです。

たとえば、車体のボタンにより、歩道走行モード(最高速6km/h以下)/モード1(同12km/h以下)/モード2(同20km/h以下)と3つのドライブモードを切り替えることもできるのですが、より詳細にセッティングするにはスマートフォンで行う必要があります。

加速モードは3段階から選ぶことが可能
加速モードは3段階から選ぶことが可能

スマートフォンのアプリを使えば、モード1とモード2においては加速モードを「マイルド/スタンダード/スポーツ」から選ぶことができます。

デフォルトでは加速モードはマイルドになっていますから、かなり大人しい走りしかできないのですが、スポーツモードにするとモーター駆動らしいレスポンスを楽しめます。

スポーツモードでは加速感がかなりシャープになるので、乗り慣れてから選んでほしいとは思いますが、逆にこの加速モードを味わうことなく、STRIEMOのパフォーマンスを判断するのも間違いでしょう。加速をスポーツモードにすればキビキビ感があって、走る楽しさのあるモビリティであることを実感できるはずです。

●スマートフォンがデジタルメーターに変身する

バッテリー充電率や航続距離可能距離なども表示。ロック解除もスマートフォンで行える
バッテリー充電率や航続距離可能距離なども表示。ロック解除もスマートフォンで行える

そのほか、ボタン作動音やウインカー作動音などもスマートフォンの専用アプリで切り替えることができ、自分好みに変身させることができるのもポイントでしょう。

なにより、スマートフォンを使わなければロック解除ができませんし、充電率なども確認できません。専用アプリをインストールすることはマストなのです。

なお、ロック解除については、デフォルトではアプリの画面をタッチする方式ですが、アプリを立ち上げたスマートフォンを近づけることで、自動的にロック解除する設定に変えることもできます。

スマートフォンをホルダーで固定すれば、デジタルメーター的に利用できるな画面も用意される
スマートフォンをホルダーで固定すれば、デジタルメーター的に利用できるな画面も用意される

専用アプリのダッシュボード画面にすると、充電率・走行可能距離・速度・ドライブモードなどが表示されます。

ハンドル部分にスマートフォンホルダーを追加すれば、あたかもデジタルメーターのように活用することができるのです。

エンジン車の二輪においてもスマートフォン連携はトレンドですが、ここまで連携できているモデルはないでしょう。もはやデジタル化においては、特定小型原付のほうが進んでいるのかもしれません。

ところで、2022年10月から始まった本連載【バイクのコラム】は今回で最終回。前身となったコラム【RRR(リターンライダーリハビリテーション)】の第一回が公開されたのが2019年9月でしたから、4年半もリターンライダーである自動車コラムニストのバイク談義にお付き合いいただいたことになります。

これまでご愛読いただき本当にありがとうございました。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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