4代めエクストレイル「フロント/リヤシート」のすべてを解説【新車リアル試乗 10-11 日産エクストレイル ユーティリティ編・室内空間 前編】

■エクストレイルの室内空間はいかほどに

今回はしおりさんといっしょにシートを中心に見ていきます。
今回はしおりさんといっしょにシートを中心に見ていきます。

リアル試乗・エクストレイルの第11回は室内空間編。ここではとりわけシートを中心に焦点を当てていきます。

●室内空間

・前席居住性

室内幅は1540mm。センターコンソールが幅広なので、隣の乗員に触れることはない。ドアとの間隔もよく確保されている。
室内幅は1540mm。センターコンソールが幅広なので、隣の乗員に触れることはない。ドアとの間隔もよく確保されている。

このクルマのサイズともなるとキャビンもサイズ任せに大きくなるため、身体のどこがどこに接触するということはないし、試乗車はガラスルーフがついていますが、ガラスルーフ装着による40mmの室内高減少などものともしません。

フロントピラーは太くはなく、細いわけでもありませんが、運転席側でさえ遠い位置にあるのと、実際の太さよりも細く見せる工夫を与えた断面形状になっているため、運転視界も良好の部類です。

ひとつ難点は、フロントピラーを寝かせすぎているため、ピラーそのものは遠いのにピラー上部からルーフサイドにかけてのカーブが頭にかなり近いことです。周囲確認でちょい窓から顔を出したいとき、頭を簡単にぶつけます。

・後席居住性

床がほぼ平らなので、長距離走行でもストレスなく過ごすことができる。
床がほぼ平らなので、長距離走行でもストレスなく過ごすことができる。

座面奥行きは充分。フロアはセンターがわずかに上がっているものの全体的にはフラットに近く、いってみればお茶の間・・・は古いか、リビングのソファに座っているのとほぼ同じです。スライドを最後端にすればなおリビングになる。

ルーフが後ろまで伸びているので、セダンと異なり、当然頭上に下がってきたルーフやガラスが迫ることもなし・・・セダンやクーペが衰退したのは、案外このあたりにも理由があるのかも知れません。

・ロールサンシェード

ロールサンシェード。
ロールサンシェード。

リヤドアには、G/G e-4ORCEだけですが、ロールサンシェードが内蔵されています。上に引き上げ、上部の穴ふたつをフックにひっかけるだけなので途中固定はできませんが、ないよりはあったほうが便利でしょう。ミニバン型ではよく見かけますが、たぶんSUVではめずらしいんじゃないか…前に乗ったCX-60はどうだったっけ?

・前席シート単体

前席シート。
前席シート。

G/G e-4ORCEは運転席と助手席が、X/X e-4ORCEは運転席のみパワー仕様。電動ランバーサポートは全機種標準装備です。

電動ランバーサポート・最小状態。
電動ランバーサポート・最小状態。
電動ランバーサポート・最大張り出し状態。
電動ランバーサポート・最大張り出し状態。

G/G e-4ORCEについていうと、両席のスライド、リクライニングが電動、加えて運転席は上下リフター、サイサポートが電動調整可能。

以前の日産車のパワーシートは水平近くにまで倒せませんでしたが、いまはフルに倒れるようになっています。

運転席パワーシートスイッチ。
運転席パワーシートスイッチ。
助手席側は機能が最小限だ。
助手席側は機能が最小限だ。

サイズは大きな車室空間を活かし、遠慮のないシート容量になっています。幅も座面奥行きもたっぷりした寸法を持ち合わせており、大柄野郎にも充分対応するでしょう。

これじゃあ差しづらい。
これじゃあ差しづらい。
これしか顔を出していないからだ。
これしか顔を出していないからだ。

大急ぎで改良してほしいのは、ベルト金具差し込み先のバックルの位置。

まるで茂みの中から顔を出す子猫のように、座面、背もたれ、高いコンソールに囲まれた三角地帯からバックルがちょこんと出ているだけなので、着座状態(で締めるのだからあたり前だが)でベルトが、まあ挿しにくいこと、挿しにくいこと。

ティーダは運転席側だけバックルの足(ワイヤー)を伸ばして締めやすくしていたのに、あの親切心はどこいった? これだけは乗り降りのたび辟易しました。

・パーソナルドライビングポジションメモリーシステム

パーソナルドライビングポジションメモリーシステムのスイッチ。
パーソナルドライビングポジションメモリーシステムのスイッチ。

G/G e-4ORCEの運転席用は、各部シートポジションとドアミラー角度を併せて記憶するパーソナルパーソナルドライビングポジションメモリーシステムが標準でついています。

メモリー数は2名分。

<メモリー方法>

・シートポジションとドアミラー角を好みのポジションにセットする。
・SETボタンを押し、5秒以内に記憶させたい方の番号のボタンを押す。
・記憶が完了するとブザーが鳴り、スイッチ内の表示灯が5秒間点灯する。

CX-60試乗のときに「くだらない使い方」として紹介しましたが、筆者はこのエクストレイルでも、「どうせ乗るのはひとりだから」と、1番に運転ポジションを、2番にフルリクライニングした休憩ポジションをセットして使っていました。出張から会社に戻りたくないとき、仕事をサボりたいときに高速SAでひと休みするのに便利です。

横になるときはボタン2を押す。目が覚めたらボタン1ひと押しで運転ポジションに復帰。かあちゃんと共用するならともかく、運転するのは自分だけという方、よかったらお試しください。

・後席シート単体

後席シート・スライド最後端位置。
後席シート・スライド最後端位置。

リクライニング、スライド機能付き。センターにはアームレストもあります(「後席居住性」項しおりさん写真参照)。

シートは筆者がいつもここで提唱しているとおり、前席スレスレまでスライド・・・というより、筆者が使っていたティーダがこのようになっており、前席からふり返って後席に置いた荷物をつかむのに便利に使っていたから唱え続けているわけ。そこまでの使い方を日産が意図したかどうか知りませんが、アイデア元は日産自動車のようなものです。ただし、前項シートメモリーの「くだらない使い方」は私のアイデアでございます。

どことはいいませんが、星が6つあるマークの会社のクルマはリヤスライドがなく、以前「なぜスライドさせないのか」たずねたところ、「安全のためにがっちり固定したいため、可動しないようにしたい」とのことでした。うそだァ。だったらフロント席にスライドがあるのはおかしいでしょ?

・前席乗降性

ガラスは結構後傾している。
ガラスは結構後傾している。
ピラー上部から開口部上辺にかけてのカーブが、ひとによっては乗降時の邪魔になるだろう。
ピラー上部から開口部上辺にかけてのカーブが、ひとによっては乗降時の邪魔になるだろう。

周囲スペースが許せばドアは90°近く開くのはありがたい。

開口部は前後・上下とも寸法があるので乗降性に、基本的には難なし。「基本的には」と書いたのは、「1列め居住性」項で述べたフロントピラー上部からルーフサイドへのカーブが災いし、特に乗り込むときに上半身をややのけ反らす必要があるため。ピラー角を起こすか、フロントガラスのラウンドを弱めてピラーをちょい前出しすれば解決できるでしょうが、これはフルモデルチェンジの機会でないと改善できないことなので、5代めエクストレイルのときはぜひ解消を。

・後席乗降性

同じくドアは90°近く開く。こちらは開口部の前後・上下とも充分な寸が確保されているので、乗降に不自然な格好を強いられることはありません。

難癖つづきで恐縮。

衝突対応策によるボディの肥大化で遠慮ないサイズのクルマすべてにいえることですが、ドアが厚く造られているため、特にリヤドア後端がホイールアーチに載っかったクルマは、開きかかったドア後端が室内側から見えません。ドアは思いのほか厚く、降りる側からすると、つかんだドアグリップのはるか向こうにドアエッジがある・・・せまい場所では、ドアオープンをよほど慎重にしないと、わずかな開口でも隣のクルマに接触する可能性があります。

リヤドア後端高さにがっちりしたサイドプロテクターがあるといいですが、とにかく厚いドアのクルマではドア開閉は慎重になさいますよう・・・

なお、前後ドア開口部周辺の寸法は写真のとおりです。

次回も「ユーティリティ・室内空間編」を続けます。

(文/写真:山口尚志 モデル:星沢しおり)

【試乗車主要諸元】

■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕

★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円

★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円

●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400~4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)