■右ハンドル化のネガはなし
2017年6月に初代がリリースされたヒョンデ・コナは、現行型で2代目。日本に再上陸を果たしたヒョンデの中で、エントリークラスを担うコンパクトSUVです。
ヨーロッパ、アメリカで販売台数を順調に伸ばしており、2代目はバッテリーEV(BEV)も見据えた開発が行われていて、日本はBEVのみの投入になっていますが、ガソリンエンジン車やハイブリッド車も設定されています。
BEVで399万3000円〜489万5000円という戦略的なプライスタグを下げていることもあり、走りや内外装の質感はどうなのか? と若干疑いを持ちながら走り出すと、発進時からすぐに杞憂に過ぎなかったことを実感させてくれます。
上級のアイオニック5と同様に、右ハンドル化されていて、日本車からの乗り替えでも戸惑うこともないはず。
アクセルとブレーキ、ステアリング配置も違和感はなく、明らかなペダルオフセットは感じられませんでした。
操作性で多くの日本車や輸入車と異なるのは、ステアリングスイッチの配置。コナは、左側がADAS系、右側がオーディオやハンズフリー通話などになっています。また、回生パドルも左側がプラスで、右側がマイナスになっています。
●日本の交通事情、天候などに配慮したセッティングが光る
さらに、ヒョンデは、日本にも研究開発拠点のR&Dセンターを設け、日本の天候や交通事情などに配慮した走りこみを行い、走行モードの「ノーマル」は、ストップ&ゴーの多い日本の市街地での走りやすさを重視したそう。
モーター駆動となるBEVは、アクセルレスポンスが良すぎて、却ってギクシャクとした動きになりがちなモデルもあります。いわゆる「飛び出し感」が強いため、慌ててアクセルを戻すことで、乗員はもちろん、ドライバーも頭が前後に揺すぶられるような発進性になってしまうこともあります。
スポーツカーであればそうした過敏なセッティングもアリなのかもしれませんが、実用車のBEVでは、きちんとしたアクセルワークができるドライバーにとってはマイナスポイントになる場合もあるでしょう。なお、パワステは、最近のモデルとしては重めで手応えがあり、人よっては好みが分かれそうです。
コナの「ノーマル」モードは、確かにそうしたギクシャク感が微低速域も含めてほぼなく、信号待ちからの発進時などスムーズに加速していきます。
さらに、回生レベルは、4段階から選択できます。最も弱い回生モードでも、「AUTO」モードでも回生時に身体が前につんのめるような動きも少なく、車酔いを誘うような挙動を抑えているのも美点でしょう。急激なトルク変動で扱いにくさを抱かせることは、同モードではありませんでした。
「スマート回生モード」にすれば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を設定していなくても、ナビゲーションに設定された経路の道路状況に応じて、ブレーキの強度(回生)を自動調整してくれます。
なお、こちらは、センターディスプレイで自動制御を3段階から選択できます。また、いわゆるワンペダルモードのi-Pedalにすれば、停止まで回生ブレーキで行えます。最近のトレンドは、停止時はメカブレーキで踏ませるモデルが多く、このあたりはメーカーによって開発思想が異なっています。
なお、日本の雪上で走り込みを行うことで、「スノー」モードを煮詰めたとのことで、こうした発進性を備えるコナであれば、安心して雪道も走れそうです。
パワステの重さに対し、ハンドリングは軽快感があり、足まわりは比較的ソフトな設定です。街中では静粛性も高く、動的質感も十分に高いレベルにあります。
高速道路にステージを移し、新東名高速の120km/h区間で走っていると、風切り音やロードノイズが若干大きめに侵入してきます。それでもエンジンがないEVの利点である静粛性は十分に担保されています。
デザインの好みが分かれそうなコナ。それでも、使い勝手や居住性、積載性も含めて走りや快適性の面でも完成度は想像以上に高く、ライバルはBYDくらいという日本市場の状況。日本勢は、このクラスにBEVを投入できていませんので、コンパクトSUVのBEVでは有力な選択肢になるはずです。
●価格
「KONA Casual」:399万3000円
「KONA Voyage」:452万1000円
「KONA Lounge」:489万5000円
「KONA Lounge Tow-tone」:489万5000円
(文・写真:塚田勝弘)