ヒョンデ・アイオニック5に乗ってわかった、これは国産メーカーには作れない電気自動車だ!

■ヒョンデの電気自動車「アイオニック5」に乗ってみた

韓国・現代自動車が「ヒョンデ」(旧・ヒュンダイ)ブランドで日本参入を発表しました。オンライン販売のみ、ZEV(ゼロエミッションビークル)のみという戦略は非常にユニークで、むしろ少量販売を意識したものという印象もあります。

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ボディサイズは全長4635mm・全幅1890mm・全高1645mm。ホイールベースは3000mmで、最小回転半径は5.9mとなる

そして、日本に導入する電気自動車「アイオニック5」の出来のよさが自動車メディアやクルマ好きを中心に話題となり、日本自動車業界の黒船と話題になっています。

そんなアイオニック5に公道で試乗することができました。

結論からいえば「国産車から乗り換えても違和感がないであろうクルマ」という印象でした。

●アイオニック5のプロフィール

現代自動車の電気自動車専用プラットフォームに基づく、RWD(リヤ駆動)を基本としたモデルで、すでにグローバルには販売実績のある電気自動車です。

たとえば、ドイツでカーオブザイヤーを獲得しているなど、海外での評価も高いモデルであることも注目すべきポイントでしょう。

日本に導入されるのはバッテリー総電力量でいうと58kWhと72.6kWhの2種類で、72.6kWhのほうにはフロントモーターを配したAWD仕様も用意されますが、筆者が試乗したのは72.6kWhバッテリーのRWD仕様でした。一充電走行距離は618kmですから、実用上の課題も少なさそうです。

価格帯は479万円~589万円。最大80万円の補助金が期待できることを考えると、十分にリーズナブルな価格設定という印象ですが、安かろう悪かろうでは意味がありません。はたして、走り味はどうだったのでしょうか。

●クルマと対話しながら走らせるタイプではないが…

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ゲーム的な操作にリニアに反応する様は未来的は感覚だ

アクセルに対する反応がリニアなのは電気自動車だから当たり前の話で、ことさらアイオニック5の凄さとして評価するほどではないでしょう。パワートレインのレスポンスについては電気自動車として標準的であり、期待通りのレベルにあるといえます。

しかしハンドリングについては、想像を大きく超えるものでした。

試乗した72.6kWhバッテリー・RWD仕様の車両重量は1990kgもあって、けっして軽いクルマではありません。しかし、ステアリング操作に対する反応はアクセルレスポンス同様に機敏で、リニアです。

まるで、ゲームの世界でクルマを走らせているような気になるほど、ステアリング操作通りにクルマが向きを変えていきます。まったく重量感がないのには驚かされました。

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12.3インチの大型ディスプレイを並べたコクピットは電気自動車に期待する未来感をわかりやすく演出している

もっとも、アクセルオフやブレーキ操作によってフロントタイヤに荷重をかけたときのフィードバックが希薄で、タイヤのグリップしている状態がステアリングを通して伝わってこない味つけになっているともいえます。

このあたり、電気自動車にサイバーで未来的なモビリティ像を期待しているユーザー層には、逆に刺さるのではないかと感じます。

アイオニック5は「パラメトリックピクセル」をデザインテーマに掲げていますから、外観と走りのテイストがマッチしているという点ではポジティブに評価すべきといえそうです。

トヨタの豊田章男社長は、「EVらしいEVはトヨタは作らない」といった発言をしています。

トヨタは電気自動車においても四輪接地感を味わえ、クルマとの対話が楽しめることを重視するという意味でしょうが、ヒョンデ・アイオニック5のハンドリングは、そうした志向とは真逆といえます。未来的な世界観のハンドリングを持っている電気自動車だったのです。

その意味では、いまのトヨタに代表される国産車メーカーは絶対に作れない、作らないのがアイオニック5の乗り味です。

とはいえ、アイオニック5は日本人ユーザーの好みを無視しているというわけではありません。むしろ、日本人ユーザーが乗り換えても違和感のない仕上がりになっていました。

●国産車以上に日本車的な乗り味になっている

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輸入車だが日本市場に最適化させるためウインカーレバーは右側にある。その下に見えるのはシフト操作系レバー

象徴的なのは、ウインカーレバーがコラムの右側についていることでしょう。輸入車では国際規格に合わせて、右ハンドルでもウインカーレバーは左側についていることが多いのですが、ヒョンデは日本市場のニーズを調査した上で、わざわざ右ウインカーにしてきたのです。

さらにアイオニック5には、いまや必需品といえるドライブレコーダーもビルトインタイプが標準装備されているので、視界を邪魔することなく、スマートにドラレコを活用できます。

ヘッドアップディスプレイには速度標識を読み取って表示されていますし、先進運転支援システムはナビ連動となっていて、制限速度やコーナーに合わせて自動的にスピードを調整する機能も備えています。

今回の試乗では、そうした先進運転支援システムを活用する機会もありましたが、たしかに違和感のないレベルで、積極的に活用したいと感じる仕上がりになっていました。

もっとも完璧というわけではなく、とくにLKA(レーンキープアシスト 車線中央維持機能)については、若干の迷いが感じられる場面もありました。それでも全体としては、国産車の平均的な先進運転支援システムのレベルを満たしているのは間違いありません。

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基本はRWDで、バッテリー総電力量58kWhと72.6kWhの2タイプを設定。後者にはAWDも用意する

シフト操作系が、コラムから飛び出したレバーをひねるという部分は新鮮ですが、総じてコクピットドリルを受けなくとも国産車の経験があればすぐに乗りこなせ、機能も活用できるというのがアイオニック5に乗っての印象。

単に右ハンドル/右ウインカーということで、国産車からの乗り換えユーザーを受け入れやすいというだけでなく、かなり日本仕様として作り込んできていることが感じられます。

それはペダル類の配置にもいえることです。いまや、国産車でもグローバルモデルの中には右ハンドルのペダル配置などに難を感じるモデルもありますが、アイオニック5はシートのサイズ感なども含めて、完璧に日本仕様にローカライズされているという印象でした。

電子制御を活用したデジタル的な乗り味は、かつて国産車が目指していた世界でもあります。

アイオニック5に乗っていると、そうした時代のクルマが電気自動車で蘇ったらこうなるのでは、と感じる瞬間もありました。まさに日本車以上に日本車的世界の未来を示しているのが、ヒョンデ・アイオニック5だったのです。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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