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■日本車の「統一顔」はいまどうなっているのか?
日産ノートがマイナーチェンジを実施、進化した「デジタルVモーショングリル」が話題です。かつてはこうした「統一顔」は欧州プレミアム勢の専売特許でしたが、最近は日本車でも同様の試みがかなり定着したようです。
そこで、今回は日本車の「統一顔」についてあらためてチェックしてみたいと思います。
●日本的な造形に織り込まれたグリル
日産の「Vモーション」がフロントグリルに見られるようになったのは2010年頃から。最初は当時のマーチやジュークなどでは、既存のグリルに若干無理矢理V字のメッキパーツを組み込んだものでしたが、リーフなどで、ボンネットフードからの流れをV字につなげて違和感を感じない表情へと進化しました。
現在ではノートやセレナなどのように、日産のデザインフィロソフィである「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」の一環として、抑制の効いたボディスタイル全体の中に組み込まれているのが特徴。つまり、グリルだけが独り歩きしないのです。
ただ、新型のように「デジタル」などという名前を付けると、そればかりが話題になってしまう危険性もあります。まあ、そういう意味では、80~90年代のマーチやプリメーラなどに見られた「ウインググリル」の方が、スッキリとさりげなくてよかったかも?なんて思うんであります。
●ブランド認知のための超個性派グリル
日本車でグリルといえば、何と言ってもレクサスのスピンドルグリルでしょう。そもそも北米市場などにおいて、個性を打ち出す必要性に迫られての発想でしたから目立って当然なんですけれど、それにしてもグリルばかりが話題になる好例です。
最近は「スピンドルボディ」や「ユニファイドスピンドル」など、可能な限りボディと一体化し、グリルだけが浮かないよう進化しています。ただ、デジタルVモーション同様、そんな命名をすればするほどグリルが前面に出てしまうところが皮肉ではあります。
したがって、スピンドルボディもいいのですが、今後は最初にスピンドルグリルを採用した4代目GSの初期型のように、よりさりげない表情に戻していく、という方向性もアリなんじゃないかと思うのです。
●グリルだけを前面に出さないトータルデザイン
マツダも、初代のCX-5以降の新世代商品では「シグネチャーウイング」を中心とした「統一顔」を継続しています。ただ、マツダの場合は有名な「魂動デザイン」というフィロソフィとして、スタイリング全体の中のいち要素としてグリルが考えられており、「この顔を見ろ!」といったモノではありません。
とはいえ、「この顔、いい加減飽きた!」などというユーザーの声も聞こえてきています。その点はマツダも認識しているようで、昨年のジャパンモビリティショー2023に出品された「アイコニックSP」は別の方向性を示していました。
新たにデザイン本部長に就任した中山雅氏は「魂動デザイン」の解釈をより幅広くとらえるとしており、同車のフロントには新しい表情が伺えます。一部の媒体では、次期マツダ2は現行と全く異なる表情になるなんて話も報じているのですが、いずれにしても、顔だけが前面に出るようなことは今後もなさそうです。
●機能を形にした「顔」にも転換期が来た?
スバルの場合は、ご存知「Dynamic × Solid」なるデザインフィロソフィの元、水平対向エンジンのピストンをイメージした「Cシェイプ」型のランプとヘキサゴングリルの組み合わせを訴求しています。
この組み合わせはシンプルなので、本来いい意味での「緩さ」がある筈なんですが、若干表現が硬直化しているようです。「最近のスバル車は変わり映えしない」なんて声があるのですが、それはスタイリング全体から受ける印象に加え、その硬直化も影響していそうです。
そのスバル顔も、昨年末に北米で公開された6代目のフォレスターでは変化の兆しが伺えます。ランプとグリルが一体化された新しい表情は、力強さを打ち出すSUVに限っての表情なのか?とは思いますが、発想の幅が広がったことは歓迎するべきです。
さて、こうして日本車の「統一顔」を見てみると、各社とも今まさに変化の真っ最中にあるところが面白いですね。その理由は様々ですが、カーデザインの進化として見れば、部分に特化しない本質的なスタイリングに期待したいところなのです。