冬用タイヤ「スタッドレス」に替える? 替えない? 「オールシーズン」はあり? そのボーダーを探ってみた

■雪に弱い非降雪地域で、どうすれば冬タイヤ対策が万全なのか

雪道は自分のタイヤ対策だけでなく他車との状況環境把握も重要
雪道は自分のタイヤ対策だけでなく他車との状況環境把握も重要

雪が降ると大混乱に陥る東京。比較的降雪の多い山岳地域を除いて、関東平野全域が非降雪地域とあって、雪国のような降雪対策が準備されていないことが原因です。

その1都6県の首都圏に4000万人以上もの人口が集中していますので、ひとたび雪が降ると大混乱に陥ってしまうわけです。年に1〜2回の降雪に手厚い対策はできないのが、関東地方の現状と言っていいでしょう。

では、非降雪地域市民の冬タイヤ対策はどうでしょう。たしかに、車で出かけていて雪に降られたら、首都高への入路の登り坂を上がれなくなります。むしろ、下り坂で停まれないほうが怖いかもしれません。

意外に坂が多い東京の道は、夏タイヤで走行不能になる車が続出しパニック状態に陥ってしまいます。

では、首都圏に住む私たちはどこまで車の雪対応をすべきなのでしょうか。

●チェーンを車載しておけば急な積雪にも対応が可能

タイヤ冬対策の一覧
タイヤ冬対策の一覧

コストパフォーマンス、安全性ともにもっとも賢明な対策は、「雪が降ったら車に乗らない」ことです。

それでも、旅行などの出先で天候が急変し雪に降られることもあるでしょうから、緊急用にチェーンを車載しておくのがおすすめです。チェーンには現在、金属・非金属・布製の3種類がありますが、どれも装着するだけで夏用ノーマルタイヤでも驚くほど雪道の踏破性が高まります。

意外にも低振動・高耐久・スパイク付きで力強い踏破性能の非金属チェーン
意外にも低振動・高耐久・スパイク付きで力強い踏破性能の非金属チェーン

チェーンはあくまで緊急用の短距離走行に適しており、「スタックせずに車を動かせる」と考えたほうがいいでしょう。チェーンがあればチェーン規制時にも対応できるほか、アイスバーンも走行可能です。関東地方の降雪時にも対処できますので、ぜひ車載しておきたい冬対策ツールです。

金属チェーンなら3,000円程度、布製チェーンでも1万円前後です。出番の少ない関東地方なら、10年以上は使用可能です。安心がこの価格で買えると思えば、コストパフォーマンスのよい投資と言えます。

ただし、実際の使用にあたっては、装着は一般的に寒い雪が降る屋外で行わなければならず、速度制限もあり、騒音、振動、乗り心地の面でもデメリットがあることは覚えておいてください。特に、いざというとき装着できない…とならないように、一度練習しておくのが身のためかもしれません。

●雪国へ車で出かける人はスタッドレスへの4輪交換がマスト

一方、ウインタースポーツや旅行などで雪道を走る機会が少なくない方は、スタッドレスタイヤを購入してしまったほうが安全性・コストパフォーマンスともに有効です。

東京から雪国へ乗り込むには、もはやスタッドレスタイヤは必需品とも言える
東京から雪国へ乗り込むには、もはやスタッドレスタイヤは必需品とも言える

降雪時に着脱作業を伴うチェーンと較べて、スタッドレスタイヤは春に夏タイヤに交換するまで、シーズン中は履きっぱなしにするのが王道です。降雪時に着脱の手間なくそのまま雪道へと突入できますので、新雪・圧雪・シャーベット・アイスバーンなど、刻々と変化する路面コンディションでも安全に走行できます。

また、スタッドレスタイヤに交換する際は、ケチらずに4輪とも交換することをおすすめします。駆動輪のみの交換はFFなら後輪のスリップ、FRなら前輪のブレーキやステアが効かないなどリスクが大きく、あまりおすすめできる購入方法とは言えません。

カーショップではスタッドレスタイヤの4本セット販売やホイールセット販売を行っていますので、セット購入したほうが結局はお得。近年、アルミホイールの価格が下がっていることもあり、セット売りでアルミホイールを入手するほうがいいでしょう。

非降雪地域の新しい選択肢、オールシーズンタイヤ

オールシーズンタイヤはどうか
オールシーズンタイヤはどうか

ここ数年、にわかに注目され始めたのがオールシーズンタイヤです。夏冬通年履きっぱなしでOKでありながら、急な降雪・積雪時にもチェーン装着やスタッドレスタイヤに交換することなく雪道走行が可能。降雪による冬用タイヤ指定時にも対応しています。
スキー場など雪国に行く機会がないという太平洋側の都市部のユーザーには、いちいち履き替える必要のないオールシーズンタイヤのほうが、急な積雪で出先の駐車場から車を出せない…などといったトラブル対策に有効と言えるでしょう。

スタッドレスが普及した日本ではまだ認知度が高くないタイヤですが、タイヤメーカー各社がゴム質やトレッドパターン、ドライ・ウェット・スノーの各走行性能をバランスさせた新開発の製品をリリースするなど、ここ数年売上が伸びています。オールシーズンタイヤという新しい選択肢を検討してみる価値は大いにあります。

(猪狩 清十郎)