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■「動くもの」のすべてをヤマハで! ロボット搬送でものづくりを支える
ヤマハ発動機(以下ヤマハ)といえば、バイクや船など、動くもの、人やものを運ぶものを作るイメージですが、実はもっともっと運ぶためのものを作っています。
例えば、材料を倉庫から製造現場に、出来上がった半完成品を工場内で次の工程へ、基盤となる場所へ正確に的確な部品を運んで組み付ける、など、ものづくりは作る人や作る機械が動くのでなく、作るものやその素材が動いて出来上がっていくものなのです。
バイクや船を作ってきたヤマハはそのことを知っていて、いかに自分たちが作りやすくするかを考え続けてきたようで、現在では、その運んだり作ったりする機械を作る部門があり、さらにそれを社外のメーカーへも売り出す。それがヤマハ発動機のロボティクス事業部です。
●国際ロボット展に展示されたヤマハのロボットたち
2023国際ロボット展では、そんなヤマハのロボットや搬送機器がたくさん展示されています。
その特徴は、工程の最初から最後まですべて運ぶ、面倒見る!といった気概を感じさせられるものです。
展示されたデモンストレーションでは、全天候型で使える、屋内外用自動搬送EV「eve auto」が運んできた素材を、タフネスAGVに載ったヒト協働の7軸協働ロボットが持ち上げたり運んだりして、リニア搬送システムに載せられた素材を精密に加工していく。といった一気通貫なラインのデモです。
全天候型「eve auto」は、ヤマハのゴルフカートとしても知られる「ランドカー」をベースに、屋外でも、傾斜があっても、多少の段差があっても走ってくれる自動搬送EV。工場内などで、素材や製品を自動で運んでくれるので省力化が可能であり、例えば工場内が工事でルートを変えたい場合などにもフレキシブルに対応可能。夜間でも文句言わずに働いてくれます。
その先に様々な素材を運ぶのに使われるのがAGV(Automated guided vehicle=無人搬送車)で、市販の黒いビニールテープを床に貼ることで走行ルートを自由に作れるタフネスAGV、3Kと呼ばれるような熱い場所、汚れる場所や、衛生面に気を遣う洗浄可能なウォッシャブルAGV。
設備が密集した現場や、段差がある屋外の現場などでも使える狭小AMRなどが展示されていました。
これらAGV「各車」には、30周年を迎えるヤマハPASなどで培った電動ユニットからのノウハウ、防水性や段差の乗り越え時の動きなどが応用され、発展してきています。このあたりもヤマハが「やってきたこと」から繋がっているのです。
●7軸のロボットはダンスもお仕事もできる
搬送された素材は、適材適所、的確な場所で加工しなければなりません。そのために活躍するのが7軸協働ロボットです。じつは、先日のジャパンモビリティショーでも、ヤマハブースで華麗なダンスを披露していましたが、今回は芸術面でなく本業(?)である産業面への貢献を披露していました。ひとの腕のように動く7軸というのは動く方向が7種類あるというわけで、通常多くて6軸に加えて、言わば最後に手首のひねりが加わって、奥の隠れたところに手が届くようなイメージなんだそうです。
しかも、人間同様の手加減、反動を感じて動くということが可能です。デモンストレーションでみたところ、USB(TYPE A)を抜き挿ししてるんですが、どう見ても機械が正確にプスプス指しているというより、不器用に確かめるようにモゾモゾ動いてます。それもそのはず、協働ロボットは、USBを挿す位置をあえてアバウトな情報でインプットし、きれいにハマる位置をモゾモゾと確かめながら最終的に正確に挿し込んでいたのです。
どうように、2つのギヤの間にもう一つのギヤを噛み合うように嵌めていくようなところでも、ギヤを少し動かしながらきれいに噛み合う角度を手探りしながら嵌め込んでいました。
さらに、塗装が済んだバイクのタンクなどの磨き作業として、ロボットがその反力を確認しながら複雑な曲面を一定の力で磨くような作業も可能なのだそうです。
2023国際ロボット展、ヤマハ発動機ブースで、ぎこちなくUSB-Aを抜いたり挿したりする7軸協働ロボット。実は、人間がUSBを挿すとき、穴の位置がはっきり分からなくても手の感触で挿せますよね。そのようにこのロボットは手探りができるんです。それを再現しているので一見ぎこちないのでした… pic.twitter.com/dAcIErpNhh
— クリッカー編集部 (@clicccar) December 2, 2023
2023国際ロボット展、ヤマハ発動機ブースで、ギヤをはめる作業を行う7軸協働ロボット。人間がギヤをはめるとき、きれいに噛み合うまですり合わせますよね。このロボットもギヤが噛み合うところを自分の「手の感触」で探り当ててギヤをはめるんです https://t.co/VYTUp4AlYO pic.twitter.com/1tyxyqUU9F
— クリッカー編集部 (@clicccar) December 2, 2023
2023国際ロボット展、ヤマハ発動機ブースで複雑なタンク形状を人間の手のようになぞるときの反力でバフがけの力を調整する7軸協働ロボットhttps://t.co/VYTUp4AlYO pic.twitter.com/n6zGZOyjBq
— クリッカー編集部 (@clicccar) December 2, 2023
さてさて、そうやって運ばれた素材は、いよいよ加工や組付けとなるわけですが、そこで活躍するのがリニア搬送システムです。多くの工場で部品などに使われているのが、ベルトコンベアなどにイメージされる搬送システムですが、リニアモーターによるリニア搬送システムは、その速さや正確さが特徴だそうですが、ただ速いだけでなく例えば、急な加減速によって粉体などが舞い上がることを防ぐようなスムーズで速い動きが可能になるのだそう。また、位置決め精度に関してはプラスマイナス5マイクロmという正確さです。
そして、リニアコンベアモジュールは、国内トップシェアを誇っていると言います。
ものづくりから生まれたものを作るための機械や仕組み。いいものを生み出すために、こだわった手段が形になったのだと思います。
今回のロボット展でのヤマハ発動機のキャッチフレーズ
ミクロンからキロメーターまで。
「運ぶ」と「運ぶ」を
コネクトするヤマハ発動機。
小さなものを正確に、ある程度の長距離も運ぶことができるヤマハ発動機、という意味がよく理解できました。
乗り物を作ってきた技術の応用がものづくりの技術になることも合わせて、ヤマハは絆を大事にしているんだと感じさせられる展示でした。
(文・写真:小林和久)