ホンダ車のフロントガラスに必ずある謎の三角マーク、新型ステップワゴンにもありました【新車リアル試乗 9-13 ホンダステップワゴン ユーティリティ・整備性、その他 編】

■ステップワゴンの整備性はいかに

ステップワゴンの整備のしやすさを見ていきます
ステップワゴンの整備のしやすさを見ていきます

リアル試乗・ステップワゴンのユーティリティ編の最後は、ステップワゴンの整備性、その他について見ていきます。

といっても、いまどきのクルマのこと、ユーザーが手を入れられる部分はほとんどありません。

それだけに採りあげ項目数も多くはなく、ストレージ編の最後に入れるつもりでしたが長くなりそうなので、第13回目に持ってきました。

いわばユーティリティ編のおこぼれです。

●整備性、その他

・エンジンルーム

すき間が小さくないので手は入りやすそうだが、ボンネットを開いて整備をするひともいまは少ないだろう
すき間が小さくないので手は入りやすそうだが、ボンネットを開いて整備をするひともいまは少ないだろう

中はギッシリしていますが、補機類各々の間隔はあるほうです。

エンジンルームを開けたところでどのみちユーザーができることは少ないですが、フロントガラスがエンジンルーム一部を覆っているので、作業上、整備士泣かせの部分はあるかも知れません。

バッテリー交換だけは吸気管パーツを外さないとできないレイアウトになっている。面倒なひとは販社へ行くしかない
バッテリー交換だけは吸気管パーツを外さないとできないレイアウトになっています

バッテリー交換はすんなりいきません。交換するには本体上部にある吸気の取入口となる樹脂パーツを外す必要が・・・バッテリー交換を自前でするユーザーは少ないというメーカー判断でしょう。

・工具入れ

先代5代めから続く工夫ですが、工具は助手席下に置かれたボックスに、ジャッキは3列めシート左のドリンク置き場下に設けられています。トランクへの荷の有無に関わらず取り出せる場所なのがいい。

とはいうものの! スペアタイヤレスにただでさえ嘆いているのに、ステップワゴンもいまどきの風潮の例に漏れず、ジャッキも別売りときたもんだ。

いくらパンクの確率が低くなったとはいえ、これはあまりに乱暴じゃないか?と筆者は思うのです…

・フロントガラスの三角マーク

ホンダ車おなじみ・・・かどうか知らないが、ドライバー視線を安定させるための三角マーク(助手席側)
ホンダ車おなじみ・・・かどうか知らないが、ドライバー視線を安定させるための三角マーク(助手席側)
右側。ホンダ販社にさえ知らないひとが多く、ドライブレコーダー取付位置の目安マークと思っているひともいるようだ
右側。ホンダ販社にさえ知らないひとが多く、ドライブレコーダー取付位置の目安マークと思っているひともいるようだ

この「リアル試乗」の前に、お試しの単独企画で現行のホンダフィットを5部構成で採りあげたとき、話題にしたその5本め(2022年1月9日公開)で取り上げた三角マーク(この記事、非常に多く読まれました)。何もフィットに限らず、他のホンダ車にもあるのに、これじゃあフィットの立場がないじゃないかと、書いた私もフィットもむなしくなったマークです。

これはフロントガラスのフロントピラー上端から1/5ほどの位置に刻印され、「ドライバー視線を安定させるためのマークで、せまい道を通るときに視線のばらつきが少なくなる効果がある(ホンダ)」というものです。

筆者がホンダの方から教えられたのは2011年のことで、てっきり「知らぬ間に目に入るこの三角マークを目安にまっすぐ駐車できるもの」と誤認識し、「なぜそうなるかはわかっていない」といわれていたのですが、前記フィット試乗のときにあらためてホンダにたずねたところ、上記のような回答が得られました。

ただ、このとき2022年時点でも「なぜそのような効果が出るのかはわかっていない」と。

筆者がこのマークで好きなのは、その理由が解明できていないところ、そして当のホンダが堂々と「わかっていない」といっているところで、これだけ科学が進み、自動運転に近いことができている時代なのに、ひとの動作にはまだまだ解明できないことがあるのだと思うと、「宇宙人はいるか・いないか」にも似た神秘的なものを感じます。

フィット試乗のときに載せたホンダの回答をふたたび掲載します。

【ホンダ回答】

視線が安定するというのが三角マークによる効果となります。

具体的には、意識せずとも視線が安定するようになり、効果としては狭路通過時にバラツキが少なくなる(=視線がふらつかないので、同じところを通れるようになる)というものです。

ただ、それがどのようなメカニズムなのかまでは解明しておらず、推察となっております。

1.人は、一つの環境の安定した世界を認識しているが、脳内では、頭部、身体、環境など様々な座標系があり、頭頂野で統合されている。

2.目を動かしても、世界が揺れないのは、随伴反射によって目の動きがキャンセルされるため。とはいっても若干のぶれはある。

3.そのため、三角マークによって視線が安定すれば、環境と車両近くの精度が高まり、同じ所が通れるようになると考えられる(仮説)。

外から見るとこの位置にある
外から見るとこの位置にある

これは昨年2022年1月時点でいただいたときの回答ですが、たぶんいまでも解明されていないでしょう。

筆者はこのマークは謎のままでいてほしいので、ホンダには解明しないでほしいと思っています・・・いや、解明してもだまっていてください。

●マニアック! ワイパー特集

という見出しで、前回CX-60試乗記事のときに凝ったワイパーの話をひとくくりにしましたが、ステップワゴンもほとんど同じ造りになっていたので、調子に乗って今回も同じ見出しで。

・低いワイパー停止ポジションと良好視界

外から見るとワイパーはほとんど隠れている
外から見るとワイパーはほとんど隠れている
st13 ut 4-2 wiper front from driver's seat
中から見るとこのとおりで、ワイパーは完全に見えない。いいぞ!

雨の日のワイパーは必要不可欠ですが、晴れの日にガラス下端で鎮座するワイパーほど役に立たないものはなく、ただの邪魔ものでしかありません。

資料でもカタログでも特に記載はないし、いまどきアピールするクルマもありませんが、ステップワゴンのワイパーの停止位置はかなり下にあり、外から見てまだ一部見えるものの、ほぼフルコンシールド式(隠された:concealed)になっています。

運転席からは完全に見えず、ドライバーの目に入るのはフードのみ。

あとはフードのプレスに工夫を与え、車両のおおよその先端と幅がわかる形になっていれば完璧です。

ワイパーON
ワイパーON
ワイパーOFF
ワイパーOFF

ワイパーはONにするとまず停止位置からいくらか(たぶん10mmほど)上昇し、ここがワイピングのスタート位置にして戻り時の反転位置になります。OFFにするとここで停止し、10mm下がってコンシールドに。

雨天走行で気になったのは、フロントガラスへの雨粒のぱらつき音。

雨天下走行では雨滴がガラスに落ちるぱらつき音が気になった。写真は高速路走行時のものだが、音が気になるのは街のりでも同様だった
雨天下走行では雨滴がガラスに落ちるぱらつき音が気になった。写真は高速路走行時のものだが、音が気になるのは街のりでも同様だった

軽量化やコスト削減ねらいか、クルマのガラスも以前より明らかに薄く造っているようで、雨降りでフロントガラスに雨滴がぱらつくときの音が、いまのクルマは以前よりも耳に触るようになりました。ステップワゴンも耳につきます。軽量化もわかりますが、音のためにも心理的にももうちょい厚くしてもいいのではないか?

余計な話ですが、ガラスはゲージ(厚み)が2.1mmのときに値段がいちばん安く、2.1mmより薄くしても厚くしても高くなります。薄くすれば成型にそれなりの技術を要する、厚くすれば単純に材料費がかかるようになるという論理。これは筆者が2003年ごろに得た知識で、いまはまたいくらか事情が異なるかも知れませんが、参考まで。

・ワイパー払拭範囲

広い範囲をよく拭き取る
広い範囲をよく拭き取る

助手席側上部の未払拭エリアも少なく、広大なガラスの多くをよく拭うようになっています。他のクルマと何ら変わるところはなく、だからどうしたといわれればそれまでなのですが、前回のCX-60でリヤワイパーのふき取り範囲の写真を撮っておきながらフロントを忘れたのでその巻き返しということで。

<ワイパーメンテナンスポジション>

接触するのは助手席側だけで、運転席側はそのまま起き上がった
接触するのは助手席側だけで、運転席側はそのまま起き上がった
通常の停止位置でワイパーアームを起こそうとすると、助手席側アームがフードに接触する
通常の停止位置でワイパーアームを起こそうとすると、助手席側アームがフードに接触する

ワイパーがこれだけ低い位置で止まるとワイパー交換時にアームを起こすことができません。ステップワゴンの場合を調べてみたら、停止位置から運転席側は起きますが、助手席側はフードに引っ掛かることがわかりました。

というわけで、ステップワゴンにもワイパーブレードのゴムパーツ交換時のためのモードが用意されており、取扱説明書には「ワイパーメンテナンスポジション」と記載されています。

1.エンジン(パワーモード)をOFFにする。
2.OFFにしてから10秒以内にワイパースイッチレバーを上(MIST位置)に2秒以上押し上げる。

ワイパーが動き、反転位置で停止するので、ここでアームを起こして交換作業が可能になります。

・ウォッシャーノズル

ブレードと一体のノズルからやじろべえのようにウォッシャー液が噴射される
ブレードと一体のノズルからやじろべえのようにウォッシャー液が噴射される

ある時期から少し前までのホンダ車は、ガラス下半分に霧状のウォッシャー液を噴射、というより噴霧していましたが、他のホンダ車は知らず、前回のCX-60同様、このステップワゴンもウォッシャーノズルがワイパーアームと一体になっていました。

ブレードに沿って横広がりに、拭う先を直前に濡らしてくれるので乾燥部分を拭ってガラス傷が抑えられるのが利点。使用する液量が少なくてすむメリットもあるかなと思いましたが、そうでもないかも知れません。その理由は以下を読み続けてください…

・ウォッシャータンク

ウォッシャー液注入口
ウォッシャー液注入口
キャップ裏には無数のエンボス付きベルトがつながれており、どのエンボスまで濡れているかで液の残量を示す
キャップ裏には無数のエンボス付きベルトがつながれており、どのエンボスまで濡れているかで液の残量を示す

ウォッシャータンクはエンジンルームの車両左側にあります。

タンク本体は目に見えず、液注入口とその下の首だけが見えるタイプで、残量はキャップに接続されたエンボス付きベルトで確認するもの。

走行中に使ったわ、ウォッシャー撮影に使ったわでいじくっているうち、前回のCX-60に続けてまーたやっちまいました、タンク空。

CX-60その他の高級車と異なり、ウォッシャー液量の低下を示すランプなどがないので、今回はモーター空まわりのうなり音で気づきました。

またまたウォッシャー液をカー用品店で購入し、注入して液が表面張力すれすれまで入れて補充・・・と、見る角度を変えたら、タンク本体が下のほうに見えました。左前輪からルームを覗き込むと平べったいタンクが・・・だまされた。でも初代シティよりましか。とにかく前言撤回!

それにしても空になるのが早いなと思ったらそれもそのはずで、旧5代めが2Lだったのに対し、新型では1.5Lと小さくなっていました。なくなるのが早いはずだ。せめて2~2.5Lはほしいところで、筆者の旧ジムニーシエラだって2L入るぞ。

・リヤワイパー

こちらのウォッシャー液噴霧はオーソドックスだ
こちらのウォッシャー液噴霧はオーソドックスだ
リヤワイパーの払拭エリア
リヤワイパーの払拭エリア

最近のこのタイプのクルマでは、見た目をすっきりさせたいのか、バックドア上部の空力パーツ内にワイパーを仕込み、逆扇子型にガラスを拭うクルマがありますが、どう考えても理に叶っていないと思います。

ステップワゴンは支点がガラス下に据え付けられ、くの字ではないアームとブレードと重なったタイプなので、ほぼ180°の広がりで拭ってくれます。払拭のようすは写真のとおり。

何とまあ、6回も連続したステップワゴンのユーティリティ編はここまで。

次回は「カスタマイズ編」です。

(文:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm) 写真:山口尚志/本田技研工業/モーターファン・アーカイブ)

【試乗車主要諸元】

■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕

●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)