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■ステップワゴンのライトを見る
ステップワゴンリアル試乗の第6回めは、ステップワゴンのライト性能について見ていきます。
●ヘッドライトの種類は機種数と同じ3種類
ステップワゴンの機種数は、安いほうから「ステップワゴンAIR」「ステップワゴンスパーダ」「ステップワゴンスパーダPREMIUM LINE」の3つですが、ライトの種類も各機種それぞれに応じた内容になっています。
全体の輪郭形状は共通しており、片側当たり筐体内で3つに分かれている部屋のうちの両脇がロービーム、中央がハイビーム、その3つをサイドから下辺にかけてのかぎかっこ(「」)形状の車幅灯兼デイライトランプが支え、このランプはさらにターンシグナルも受け持っています。
どの光源もLEDで、ために正式名称は「フルLEDヘッドライト<インラインタイプ/デイタイムランニングランプ付>(オートライトコントロール機構付)」。
ここまでが最廉価ステップワゴンAIRも含めた全機種共通内容。
3車3様になるのはここから先で、ステップワゴンスパーダ以上では外観にスモーク処理が施され、AIRではマニュアル式だったレベライザーがオート式になると同時にコーナーリングランプ(正式名・LEDアクティブコーナリングライト)が追加。これら2機種の配光は自動のロー/ハイ切り替えですが、先行車や対向車との位置関係に応じてロー以上ハイ未満の光を放つアダプティブ式ライトはステップワゴンスパーダPREMIUM LINEだけが持っています(アダプティブドライビングビーム)。
アダプティブ式はホンダのミニバンでは初なのだそうな・・・あれ、3代めオデッセイにあったのは何だったっけと資料を調べなおしたら、あちらは「AFS(アダプティブ・フロントライティングシステム)」で、舵を切った方向に光源を振り向けるもので、同じアダプティブでも配光の変化が左右にとどまるのか、上下左右にまでおよぶかの違いがあります。
余談ともかく、いちばん気に入っているのがステップワゴンAIRとさんざん書いた割に、今回ステップワゴンスパーダを取り上げたのは、AIRではライト性能がシンプルすぎて話がもたないこと、PREMIUM LINEは日程が合わなかったため、せめてコーナーリングライトの話もできるステップワゴンスパーダにご登場願ったわけです。
●実践・オートハイビーム
したがって、今回のライト編には、特徴的な機能の話は少ないのですが、いざ使ってみると、特に要望点も感覚に合わない点もなく、ここまで何度か書いてきた「あたり前」な働きをしてくれるステップワゴンスパーダのライトでした。
スイッチ構成は写真のとおりで、まことにもって迷惑な新オートライト規制にミートしたもの。
エンジンONが昼間なら消灯のまま、夜間ならライトが自動点灯となる「AUTO」を定位置に、手前ひとひねりで車幅灯落ちとなる「スモール」、フルひねりで「OFF」となり、いずれも指を放すとAUTOに自動戻り。AUTOからの向こうまわし固定で強制点灯・・・ひと目「OFF」や「AUTO」の刻みが逆になっているので混乱しますが、これはまわすスイッチ側に文字があるためで、操作は一般のクルマと何ら変わりはありません。
オートハイビームの作動条件は次のとおり。
1.エンジンON(パワーモードON)。
2.ライトスイッチが「AUTO」位置。
3.レバーが中立位置(ロービーム位置)。
4.ヘッドライトが自動点灯中であること。
5.自車周囲が暗い。
起動させるための操作は不要で、メーターに緑の表示灯が点けばそれが待機状態。状況に応じて自動でロー/ハイを切り替えます。
スイッチレバーが中立位置で働くのもありがたい点で、クルマが頑なにローを維持しているときに任意でハイにしたいときはレバーを前方に押しやればハイになる・・・クルマ任せの状態でも従前どおりの操作で手動割り込みできるのがありがたいわけ。レバー前方押しで自動ハイビームになるクルマとなるとそうもいきません。自前でハイにしたくとも、すでにレバーが前方にあるため、どうしようもないのです。
結論からいうと、ステップワゴンスパーダの自動ハイビームは、おおかた遜色のない作動を見せました。
「おおかた」というのは、筆者は前方に対向車or先行車、歩行者やのら犬、のら猫がいない限りは、住宅街であれ市街地であれ、街灯が灯っていてもハイビームにするのですが、ステップワゴンスパーダの場合はローを続けることが多いものでした。
シーンによっては正確に作動することがありましたが、あくまでも例外的。このあたり、他社にも共通する点で、これを筆者は、以前は2段式の欠点と捉えていました。
推測するしかないものの、もしステップワゴンPREMIUM LINEのアダプティブ式ビームが他車に幻惑を与えないほど周囲を緻密に捉えているなら、AIR & スパーダの2段式だって遜色ない判断力を備えているに決まっている・・・いかに判断力があろうと、しょせんロー以上ハイ未満の光の選択肢がない2段式である以上、ちょっとでも街灯が灯っていようものなら無難なローを続けざるを得ない。これが2段式は役に立たないと誤解させていたのでした。
ただ、筆者は「レバー前後だけのロー/ハイの自前切り替えがそんなに手間かね?」と思っている者で、これが自動で切り替えてくれるようになったところであまりありがたみを感じることができないでいます。
アダプティブ式の値段がまだ高いうちは最上級機種のみの搭載にとどめ、普及機種は少しでも安く抑えられる2段式をということでしょうが、いくらかでも価格上昇するのは違いないわけで、普及機種だからとアダプティブ式のシンプル版として無理に2段式を起用せず、もっと安くするためにも従来どおりの手動切り替えでいいと思っているのですが、2020年代の新車としては載せないわけにはいかないのでしょうな。
話がずれましたが、街乗りでは無難なローを維持する2段式ビームも、光の少ない道では自信満々に働き、これも他社の2段式と共通しています。
すなわち、外光も周辺車両も少ない、夜の郊外の高速道路に山間路…試したのは、この試乗では毎度おなじみ関越自動車道と群馬の赤城山で、関越自動車道(の下り)は前橋ICを過ぎたとたんに3車線から2車線に絞られ、同時に道路照明もほぼなくなりますが、このような区間でのロー/ハイ自動切り替えはほぼ確実でした。
これは赤城山の暗闇でも同じで、料金所跡を越えると現れる、最初のヘアピンカーブまでの、わずかな屈曲を伴う直進路は、まるで墨汁の中を泳いでいるような暗闇が広がりますが、ここでも働きは確かなもので、暗闇に突入するやいきなりハイビームになり、対向車が現れるとローに落とし・・・を繰り返します。
●斜め前方の配光特性とLEDアクティブコーナリングランプ
直進走行でもカーブでも、配光特性に不足を感じることはありませんでした。
この手の記事での報告の仕方としてはまことにつまらない書き方になりますが、これもごく「あたり前」に働いてくれたのだからしょうがない。
と、これは前照灯の話で、やはりあるとありがたいのはコーナーリングランプ・・・正式名称・LEDアクティブコーナリングライトです。
作動条件は以下のとおり。
1.エンジンON(パワーモードON)。
2.車速40km/h以下。
3.ヘッドライト点灯中にターンシグナル点灯。
4.ヘッドライト点灯中にハンドルを約95°以上操作。
アクティブコーナーリングライトはライトユニットサイド部にあり、見た目がちっこい割にはなかなかの照射力を誇ります。
前進時はターンシグナルやハンドル操作による片側だけの点灯ですが、シフトをRに入れたときは両側点灯してくれるのもありがたい。他社がどうだったか厳密に調べていませんが、後退時の両側点灯は、ホンダは早くから採り入れています。
室内から見たときの照射範囲は写真のとおり。
交差点では進入前から行く先を照らしてほしいこと、山間道ではカーブのたび、ターンシグナルとは無関係にコーナー視界がほしいことから、斜め前方を照らすランプは、ターンシグナル連動を第1に、次にハンドル連動であるべきで、その点、このアクティブコーナリングライトは理想に近いのですが、「アクティブ」がつく割に消極的なところもあって、流れのあるバイパスや高速道路での車線変更時はターンシグナルを灯しても、コーナーライトは点灯してくれません。「40km/h以下で」という車速制限が与えられているからです。
他社同類ランプも含め、これがまったく理解できない。保安基準に規定があるのかと思って調べてみましたが特に明記は見つからなかったのと、そもそもこの制限車速もメーカーによってまちまちなので、たぶん規定はないのだと思われます。いっそ車速制限を撤廃し、昔のランプのように、ただターンシグナルに連動して点くだけにしてくれればいいのに。同じことを考えるユーザーは少なくないでしょう。
それにしてもこのランプ、チビのくせになかなか広範囲に照らすので、夜の運転で助けられるユーザーも多いのではないでしょうか。
「点滅」するターンシグナルに対してコーナーリングランプを「点灯」させるため、以前は意外と複雑になる専用回路を要し、自作するのも困難だったのですが(単純にリレーで連動させるとコーナーリングランプも点滅してしまい、意味がない)、いまはBCM(ボディーコントロールモジュール)にてありとあらゆる電装品がおおもとのコンピューターで統合制御されているため、そう大きく値段が跳ね上がるとは思えません。もともとスパーダやスパーダPREMIUM LINEにはあるのだし、こんないいもの、AIRのユーザーにも差し上げてしかるべきでしょう。マイナーチェンジではAIRにも展開されると予測しておきます。
ひと工夫加えてほしいのは、同じLEDでもヘッドライトはエンジンONにするや、いきなり「バッ!」と灯るのに、こちらアクティブコーナーリングランプは、じんわり・・・というよりも恐る恐る光る印象です。運転者からすると逆であってほしく、正面のライトはじわっと灯り、視界のハシで光る(顔が進行方向を向くにせよ)コーナーリングランプこそ「アクティブ」に「パッ!」と光ってくれるほうが運転者にはわかりやすい・・・タダ同然でできるんじゃないかな。
新オートライト規制施行後の新車は、夜間のエンジンON時からライト点灯、ステップワゴンもその例に漏れませんが、他とちょっと変わっているのは、信号待ちなどでの停止時に消灯させても再発進時に即再点灯しないことです。
再点灯する速度は筆者のメーター読みで、20km/h弱ほどになってから。エンジン始動と同時にいきなり正面で「バッ!」と光るのは人間の目の生理に合わないから、シフトDか走り出しの0km/h超えで初めて点灯させてもいいじゃないかとこのリアル試乗で何度も書いていますが、再発進時に遅延点灯させる考え方があるなら最初の点灯もシフトDか0km/h超えで行ってほしいところ・・・新オートライト規制は「走行中に消灯できないこと」が主旨なのであり、「始動中は常に点灯であること」じゃないから規制には触れないぞ!
・・・今回、山間道での話や写真が少なめですが、赤城山の中腹手前から霧に見舞われ、途中で引き返したためです。かんべん!
●リヤライト
危うく忘れるところでしたが、リヤライトのお話。
初代、2代目のステップワゴンで特徴だったリヤボディ両脇で上から下まで一直線に構成されるリヤライトのデザインが、現代的にLED化して6代目で帰ってきました。
LED化により、初期2世代に対して細身。その中でなお細いタテ筋が2本走っており、LEDでなければとうていできないスタイルになっています。
といっても、タテ線上端スレスレまでフルに光るのではなく、発光部はある程度の高さまでに抑えられています。細かい数値は忘れましたが、確か地上1.5mだったか、そこから上は光らせないという世界的な規制だか業界自主規制だったかのように記憶しています。
外側のタテ線がテールランプ。内側のタテ線は上から順にターンシグナル、ストップランプ、リバース。というわけで、テールとストップは面積が変わるタイプです。リフレクターは筐体下端にひとつ。このリフレクターは、ステップワゴンAIRではリヤバンパー内に設置されます。
各ランプの点灯状態の写真を、今回は「メーター編」で掲載した液晶の車両表示と共に載せておきます。
フロントランプであれリヤランプであれ、故障するとユニットごとの交換とバカ高い費用を強いられる自動車用灯火のLED化に大きな大きな疑問と反論を抱いている筆者ですが、筆者が抱く、新型ステップワゴンのリヤボディに見る近未来感は、リヤランプのLED化によるところ大と認めざるを得ません。
なかなかいいぞ、新型のリヤデザイン!
というわけで、今回はここまで。
次回は「車庫入れ編」です。
(文:山口尚志(身長176cm) 写真:山口尚志/本田技研工業/モーターファン・アーカイブ)
【試乗車主要諸元】
■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕
●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)