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■日本では好き嫌いが分かれそうなデザインだがアメリカでの競争力は高いだろう
●韓国車、中国車をポジティブに評価すると…?
何となく理由は解るけれど、韓国や中国の電気自動車をポジティブに評価すると、必ずや「自分で買ってから紹介するべきだ」とか「燃えたらどうする?」みたいな話になる。自分で買った車しか評価出来ないのなら極めて限られた車種になってしまい、車選びのガイドなど出来ない。また、燃えるかどうかの保証は評論家の役割じゃなく、ナンバーを交付した国交省の仕事だ。
どんな苦言を貰っても、良い車だと思えば躊躇わずポジティブな評価をするし、良くないと思ったら忖度無くネガティブな評価をします。そもそも「国」という記号性で×を付けるという考え方をしていたら、いつか足下をすくわれることになるだろう。黎明期の日本車が欧米に出て行った際、正当な評価をしてくれたメディアもあった。フィルター無しで紹介したい。
●先代コナEVは火災17件、リコール8万台だが新型は発火事故無し
最初からネガティブなネタになるけれど、先代コナEVは少なくとも17件の火災を起こし、8万台のリコールを出している。当然ながら大問題になってしまう。原因を調べてみると制御系とLGのリチウム電池に問題があったとのこと。抜本的な対策を行った結果、新型コナEVに搭載されている電池は現時点で発火事故を起こしていない。また日本仕様のコナはLGでなくCATL製となる。
もう一つネガティブな話を。ネーミングは容易に想像できる通りハワイ島の『カイルア・コナ』から取っている。メインマーケットはアメリカということから、デザインが相当個性的。「攻めた」と言い換えてもよい。平均的な日本人のだと「好き嫌いが分かれるスタイル」ということになるのだろう。ここで興味を失ってしまう人も多いと思われることを考えれば残念な「ハードル」である。
されど”関門”をくぐり抜けて試乗してみると、これがなかなか! 日本の電気自動車だけでなく、欧州の電気自動車と比べたって遜色ないレベル。韓国車のレベルは高い。だからこそ2022年の欧州COTYでヒョンデ・アイオニック5の兄弟車であるKIA6が1位。アイオニック5が3位になった。欧州のジャーナリストも納得する仕上がりということ。先入観無しでハンドル握ったら、どこの車か解らない。
●日本車より日本語を理解してくれる音声認識機能
日本だとコナより少し高い価格帯に属す電気自動車リーフと比べたなら、どの評価項目でも圧倒している。
ドライバーズシートに座ると、キッチリお金が掛かったインテリアに感心する。シートのしつらえはよく、ダッシュの樹脂の質感など高い。ドライビングポジジョンの日本製電気自動車に共通する腰高感も無い。装備表を見て頂ければ納得できる通り、装備内容も充実しており贅沢。
ADASに代表される電子装備は日本勢を圧倒する。左にウインカー出せばメーターパネル内にある液晶に左後方を出す。巻き込み防止に役立つ。車線変更などで右ウインカー出すと右後方を出す。同時に右後方に接近中の車両あったらヘッドアップディスプレーは左後方のコーションを出す。コナの価格帯でここまでやってくるのは凄い。
ナビも上級グレードだとカメラで先方の風景を表示し、それに右左折の指示を上乗せしてくれる。ポケモンGOのバーチャルモードをイメージしていただければいい(写真を参照のこと)。
けっこう手前から正確な距離も出すため、余裕持って目的地を目指せる。素晴らしいのは音声認識。韓国車なのに日本車より正確に日本語を認識してくれるのだった。聞けば、改良の速度が速いそうな。
●日本メーカー出身のテストドライバーが走りを味付け
走りの満足度も高い。電気自動車はアクセル踏んだ量と実際の加速感を自由に決められる。開発ドライバーのセンスということになるのだけれど、雪道やスポーツなど4つから選べるモードの「標準」では自然かつ滑らかに走ってくれる。スポーツは元気。ECOを選ぶとマイルド。聞けば日本のメーカー出身のテストドライバーが中心となり味付けしているそうな。
絶対的な動力性能は今回試乗した204馬力の上級グレードだと一昔前の「ボーイズレーサー」のような元気良い走りを楽しめる。135馬力のベースグレードでも街中を普通に走るなら問題無いレベルとのこと。
車体の剛性感や乗り心地(大きな入力だと少し挙動大きめ)、ブレーキのタッチなど申し分なし。買った人の満足度は高いと思う。不満な部分だってデザインを除けば無し。
価格はナビやADASや文字通りフル装備で399万3千円から。東京都だと65万円の政府補助金の他、45万円追加。さらに太陽光発電を入れている家庭だと30万円の上乗せ。地域や条件により259~334万円で購入出来てしまう。魅力的なプライスだと思う。買うかどうかはコッチに置き、乗ってみることをすすめておきたい。韓国に偏見の無いアメリカ人なら、コナの競争力は絶大だと思う。
(文:国沢光宏/写真:小林和久)