■BYDブースは人、人、人
東京モーターショー改め、ジャパンモビリティーショーが始まりました。といっても、我々が訪れた10月25〜26日はメディア関係者のみの取材に限られたプレスデー。それにも関わらず、会場内は大変な熱気。一般公開日はどうなってしまうんだろう……と心配になるほどの賑わいぶりでした。
このプレスデー期間中、各自動車メーカーやサプライヤー、自治体・各種団体などは、報道陣向けに「プレスブリーフィング」と呼ばれる“発表会”を行ないます。今回のショーの目玉や、会社としてのビジョン、昨今の業績など、語られる内容はさまざまですが、ブリーフィングの時間はすべて15分単位。この15分を取材するために、記者やカメラマンは各ブースを大移動していくわけです。
とくに注目度の高いメーカーになると、前のブリーフィングが終わってから次のブースにいくと、すでに黒山のひとだかりで撮影ができない……ということも少なくありません。その対策として、先にブースで好位置に陣取る“席取り係”を配備するメディアもあるほどです。
今回のブリーフィング中、とりわけ熱い注目を集めていたのがBYD。かなり大規模サイズのブースであるにも関わらず、ブリーフィング時はまわりの通路まで人が埋め尽くすほどの大人気。右も左も人、人、人。初出展ということもありますが、なによりそのプロダクトに大勢が並々ならぬ関心を抱いていることが窺えます。
●メルセデス×BYDが共同開発したミニバン
そんなBYDブースには、コンパクトSUVのATTO 3やコンパクトハッチのドルフィンといった販売中の最新BEVはもちろん、まもなく導入されるはずのハイエンドセダン、シール(日本導入予定)も展示されています。
さらに、BYDが展開するプレミアムブランド、仰望(ヤンワン)のオフロードSUV「U8」による、得意の“タンクターン”(独立式の4モーターを駆動することにより、その場で360度回転することができる仕組み)の実演も!
熱気と活気に満ちたBYDブース中、「あれ?」と思わず二度見する人続出だったのがデンツァD9。
いわゆるラージサイズのミニバンですが、我々日本人にとってはなにやら見覚えがあるというか既視感があるというか……そう、アルファード/ヴェルファイアに一種通じる趣があるんです。
デンツァというのは、メルセデス・ベンツとBYDの合弁会社。中国市場向けに中国製のNEV(新エネルギー車)を開発・製造することを目的として、2010年に出資比率50:50のジョイントベンチャーとしてスタートしました(2022年にはダイムラー10%、BYD90%の保有比率に変更)。
顔つきこそアルファードをどこか彷彿とさせるD9ですが、全長5250×全幅1960×全高1920mmと、アルファードより255mm長く、110mm幅広く、サイズ感ではアルファードよりもレクサスLMに近いといえます。
パワートレインはPHEVとBEVの2タイプを用意していて、今回日本へやってきたのは後者。航続距離は500〜600kmと余裕たっぷりで、ふっかふかのソファのようなシートを備えた室内はとっても豪華。
室内には巨大なディスプレイがそこかしこにしつらえられていることと、BEVならではの静粛性もあいまって、ときには走るプライベートシアターにも変身しそうなD9。これぞ現代っ子のためのショーファードリブンといえるかもしれません。
500万円台を優に超える価格帯といわれるD9ですが、2022年8月の発売から1年ちょっとで10万台超を売り上げたという事実にも、「うん、この車だったらありえるだろうなあ」と納得してしまいます。
なお、BYDの方によるとデンツァD9はあくまで参考出品ということで、日本での販売の予定はいまのところ無いそう。とはいえ、お客様からの反響が大きければ、「山が動く」可能性だってあるはずです。
ところで今回のBYD、車以外に個人的なツボだったのがブーススタッフみなさまのお衣装。レセプションの女性たちのシンプルな白ワンピース姿はもちろん、車両脇に立つモデルさんや車両の説明をしてくださる男性スタッフのグレー基調のスーツ姿がとってもお洒落(大きな声では言えませんが、皆さま大変なイケメン揃いでもあるのです)。
さらにさらに、BYD自慢のブレードバッテリーや、バッテリー自体をシャシーの一部として取り込んだ「セル・トゥ・ボディ」構造(シールから採用)など、普段は見ることのできない構造部分をじっくり観察できるのもショーならでは。説明員の方々も、とっても丁寧に解説をしてくださいました。
日本へ本格参入したばかりのBYDって、いったいどんな会社? と気になっていた方も多いはず。今回のジャパンモビリティショーは、その疑問を解き明かすひとつの鍵になりそうです。
(文:三代やよい)