マツダ「ロードスター」大人気「990S」廃止、初のデザイン変更、ACC装備、値上げ。ND型史上最大のマイナーチェンジの狙いは?

■大人気の特別仕様車「990S」が廃止された理由とは?

マツダは、2023年10月5日にロードスター/ロードスターRFをマイナーチェンジさせ、同日から予約を開始しました。発売は2024年1月中旬の予定になっています。

4代目ロードスターで最大のビッグマイナーチェンジを実施
4代目ロードスターで最大のビッグマイナーチェンジを実施

トピックスは、待望の先進安全装備の採用とコネクティビティの進化、走りのブラッシュアップ、デザインの刷新などで、4代目ロードスターで最も大がかりなマイナーチェンジになります。

新たに採用された「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)」は、設定速度での定速走行、車間距離を一定に保って走行できるアダプティブクルーズコントロール(ACC)です。

フロントグリル隣にアダプティブクルーズコントロール用のミリ波レーダーを配置
フロントグリル隣にアダプティブクルーズコントロール用のミリ波レーダーを配置

フロントグリル左側に配置されたレーダーセンサーが先行車を検知することで、定速走行や追従走行をサポート。

同装備は、ロードスターの「S Leather Package」「S Leather Package V Selection」「RS」に標準装備。ロードスターRFは「S」「VS」「RS」に標準化されます。

なお、ロードスター「S Special Package」はメーカーオプション設定で、ロードスター「S」と「NR-A」は装着不可です。

デザインで最も変わったのがヘッドランプ。ユニット内にデイタイムライトが備わり、ポジションランプとターンランプが切り替わる
ユニット内にデイタイムライトが備わり、ポジションランプとターンランプが切り替わる(ターンランプ時はオレンジに点滅)

今回、「MRCC」が採用できたのは、同機能のセンサーであるミリ波レーダーが最新世代になりグリル横に配置されたためで、デザインとリペア性との両立が図られています。

ビッグマイナーチェンジを受けたロードスター
ビッグマイナーチェンジを受けたロードスター

また、自転車も検知する「スマート・ブレーキ・サポート」「後進時左右接近物検知機能(SBS-RC)」にも対応し、約15km/h以下で後退中、車両の左右や後方に接近してきた車両を検知。「SBS-RC」は、車両が衝突を回避できないと判断すると、ブレーキ制御を支援することで、衝突時の被害の軽減が図られます。バックで駐車場から出庫する際などの万一に備えます。

センターコンソールがクッション入りの表皮巻きに変更
センターコンソールがクッション入りの表皮巻きに変更

「マツダコネクト」も進化。7インチから大型化された8.8インチのセンターディスプレイがフレームレス構造になりました。前方視界を確保しながら、エアバッグ作動時の干渉を避けるため、画面の縁部分ができるだけ狭くなっています。スマホ連携によりアプリの使用が可能になり、車の状態を確認できたり、「エマージェンシーコール」が使えたりできるようになりました。

新たに搭載された「アシンメトリックLSD」
新たに搭載された「アシンメトリックLSD」

走りのブラッシュアップでは、「Asymmetric Limited Slip Differential/アシンメトリックLSD」の搭載がトピックス(ロードスター「S」を除くMT車のみ)。

こちらは、従来の円錐クラッチ型LSDをベースに、加速と減速時のデファレンシャルギヤの差動制限力を変化させることで、減速時など、後輪の接地荷重変化に対して、旋回挙動を安定させることができる新しいLSDの技術コンセプト。軽量かつコンパクトで、耐久性の高い円錐クラッチ型LSDにカム機構が追加され、減速時と加速時で異なるカム角を設定。

メーターパネルのデザインやグラフィックも変更
メーターパネルのデザインやグラフィックも変更

アシンメトリックLSDの採用により、加速時、減速時それぞれに最適な差動制限力を実現するそうで、先述したように、とくに減速側の差動制限力を強めることで、リヤタイヤの接地荷重減少により、車両挙動が不安定となりやすいターンインでの減速旋回時の安定性を高めました。

さらに、ロードスターのエンジンやサスペンション、タイヤ特性に最適化されたイニシャルトルクと差動制限特性のチューニングにより、従来以上にスムーズでリニアな旋回特性が得られるとのこと。街中ではさらに軽やかに、ワインディングでは旋回時の安定性が格段に高まったとしています。アシンメトリックLSDは、ワンメークレースである「ロードスターパーティレース」でも実証されています。

電動パワーステアリング(EPS)にも手が入れられています。狙いは、より軽やかで正確なステリングフィールの実現で、ステアリングシステムにも改良が施されています。ステアリングラックの摩擦を低減しながら、モーターアシストの制御ロジックをより緻密に進化させることで、自然ですっきりとしたフィードバック感を実現。操舵初期から戻すまで、一貫してタイヤと路面のコンタクトが感じられるそうです。ドライバーの操舵意図が直接ロードスターに伝わっているような、高い一体感が追求されています。

マツダ・ロードスターRFも含めてマイナーチェンジを受けている
マツダ・ロードスターRFも含めてマイナーチェンジを受けている

エンジンパフォーマンスの進化も朗報です。「SKYACTIV-G 1.5」が、日本のハイオクガソリンに合わせた専用セッティングになり、さらなる高効率化を実現しているそうです。さらに、加速の伸び感を強化し、出力も3kW向上。MT車には「SKYACTIV- G 2.0」も含めた駆動力制御に最新の制御ロジックが採り入れられ、アクセルの操作レスポンスが改善。アクセルを踏み込んで加速するシーンだけではなく、アクセルを緩めて減速するシーンでも、よりドライバーの意に沿った駆動力の応答性を実現したとしています。

ロードスターRFのリヤまわり
ロードスターRFのリヤまわり

また、ソフトトップでは82%に達するという(RFは54%)MT車に、サーキットでの走行に最適化された「DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)」の新制御モードである「DSC-TRACK」が新たに追加されています。

「DSC-TRACK」では、スポーツ走行におけるドライバーの運転操作を最大限に重視し、ドライバーがコントロールできないような危険なスピン挙動に陥った場合に限って制御が介入するとのこと。愛車を傷つけるリスクを減少させつつ、モータースポーツがより楽しく、安全に楽しめる機能になっています。

●ヘッドランプ内にデイタイムライトを移設

エクステリアデザインでは、LED化ヘッドランプが変わり、デイタイムライトがヘッドランプ内に配置されています。ウインカー操作時には、ポジションランプがターンランプに切り替わります。生き物の瞳のような表情を維持しつつ、スピード感やライトウエイトスポーツカーらしさを表現したそうです。

より精緻な表現になったリヤコンビランプ
より精緻な表現になったリヤコンビランプ

リヤコンビランプは、歴代のロードスターに共通して採用されている「円形+楕円」のモチーフをより鮮明に表現。このリヤコンビランプは、ジェットエンジンのアフターバーナーからインスピレーションを得たそう。なお、前後ランプやターンランプなどを含め、すべてのランプがLED化されています。

足元では、ホイールデザインが変更され、軽やかさと機能美を表現した新たなホイールが設定されました。ホイール中央から周辺へまっすぐに伸びたスポークが、車軸からタイヤに動力を確実に伝えているような意匠になり、スポーツカーとしての性能の高さや強さ、精緻さが表現されています。16インチは機能性と軽さを、17インチはダイナミックで華やかさが追求されたそう。

ホイールデザインも刷新され、16インチ、17インチで表現が変わっている
ホイールデザインも刷新され、16インチ、17インチで表現が変わっている

ボディカラーでは、「エアログレーメタリック」が追加されています。スムーズに勢いよく流れる空気をイメージしたそうで、ソリッドカラーのような鮮やかさとメタリックカラーならではの陰影感をバランスさせたというカラー。ロードスターに、軽快さとクールな印象をもたらしています。

新色の「エアログレーメタリック」
新色の「エアログレーメタリック」

インテリアでは、センターコンソールがプラスチックのハードパーツから、クッション入りの表皮巻き(ステッチ付)に変わり、質感や触感が向上。メーターの文字盤が漆黒になり、フラットでハイコントラストなグラフィックに変更されています。メーター左には、「MRCC(ACC)」などの表示がされます。

●特別仕様車「マツダ ロードスター S Leather Package V Selection」を設定

特別仕様車「マツダ ロードスター S Leather Package V Selection」を設定
特別仕様車「マツダ ロードスター S Leather Package V Selection」を設定

また、マイナーチェンジと同時に、特別仕様車の「マツダ ロードスター S Leather Package V Selection」が設定されました。どこか懐かしさを抱かせる仕様で、クラシックかつ上品な仕立てが特徴。ゆったりとしたドライブを狙いと掲げ、新たにスポーツタン内装とベージュ幌が設定されています。

そのほか、ボディ同色の電動リモコン式ドアミラー(手動可倒式)、ナッパレザーシート(スポーツタン)、ドアトリム、インパネ、センターコンソールの合成皮革(スポーツタン)、16インチアルミホイール(高輝度塗装)が用意されています。

最新の「マツダコネクト」に進化
最新の「マツダコネクト」に進化

なお、人気を集めた特別仕様車の「990S」と「ブラウントップ」が廃止されています。大人気の「990S」は、当初1年だった予定を2年まで延ばしましたが、特別仕様車の希少性も大切にしたことで廃止にしたそうです。ただし、軽量化に特化した企画(仕様)も今後検討するとしています。

価格は装備の充実だけでなく、原材料費その他のコストアップのため、全体的に上がっています。

●メーカー希望小売価格一覧(消費税込)

■マツダ ロードスター(ソフトトップモデル)
機種/トランスミッション/旧価格/新価格
(※駆動は全て2WD(FR)/エンジンは全てSKYACTIV-G 1.5)
S/6MT/2,689,500円/2,898,500円
NR-A/6MT/2,843,500円/3,064,600円
S Special Package/6MT/2,906,200円/3,087,700円
S Special Package/6EC-AT/3,021,700円/3,203,200円
※特別仕様車990S/6MT/2,959,000円/廃止
S Leather Package/6MT/3,257,100円/3,498,000円
S Leather Package/6EC-AT/3,372,600円/3,613,500円
※特別仕様車BROWN TOP/6MT/3,257,100円/廃止
※特別仕様車BROWN TOP/6EC-AT/3,372,600円/廃止
S Leather Package White Selection/6MT/3,297,800円/廃止
S Leather Package White Selection/6EC-AT/3,413,300円/廃止
S Leather Package V Selection/6MT/-/3,553,000円
S Leather Package V Selection/6EC-AT/-/3,668,500円
RS/6MT/3,422,100円/3,679,500円

■マツダ ロードスターRF(リトラクタブルハードトップモデル)
機種/トランスミッション/旧価格/新価格
(※駆動は全て2WD(FR)/エンジンは全てSKYACTIV-G 2.0)
S/6MT/3,527,700円/3,796,100円
S/6EC-AT/3,555,200円/3,823,600円
VS/6MT/3,823,600円/4,154,700円
VS/6EC-AT/3,851,100円/4,182,200円
VS White Selection/6MT/3,864,300円/廃止
VS White Selection/6EC-AT/3,891,800円/廃止
VS Terracotta Selection/6MT/3,864,300円/廃止
VS Terracotta Selection/6EC-AT/3,891,800円/廃止
RS/6MT/3,988,600円/4,308,700円

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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