三菱アウトランダーPHEVの使用済みバッテリーを搭載した「バッテリキューブ」の実証実験を日立製作所と開始

■電動車のリユースバッテリーを活用した可動式蓄電池で循環型経済構築を目指す

車の電動化が進むほど、明確な課題として浮かび上がってくるのがバッテリーのリユースやリサイクルです。航続距離の長短などに注目が集まりがちですが、充電インフラの整備とともに、使用済みバッテリーをどうするかは、バッテリーEVの”普及のカギ”を握っているといえます。

「バッテリキューブ」から給電している様子
「バッテリキューブ」から給電している様子

2023年9月25日、三菱自動車と日立製作所は、電動車に搭載されているバッテリーのサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現を目指して、電動車の使用済みリチウムイオン電池(リユースバッテリー)を活用した、可動式蓄電池「バッテリキューブ」の共同実証を開始しました。

「バッテリキューブ」に搭載されているリユースバッテリー
「バッテリキューブ」に搭載されているリユースバッテリー

日立が2021年から開発を進める「バッテリキューブ」は、電動車のリユースバッテリーを活用した可動式蓄電池です。

「CHAdeMO V2H」規格を採用することで、従来の定置型蓄電池と比較して設置工事が容易になるとのこと。安全かつ柔軟に店舗などの電気設備と脱着できるため、設置やメンテナンスの作業効率を大幅に向上することができます。

さらに、クラウド上の遠隔監視システムにより、「バッテリキューブ」に搭載されたリユースバッテリーの稼働状態をリアルタイムに管理し、状態に応じた運用、メンテナンスが可能。

そして、様々な乗用車、トラックなど、電動車メーカーのリユースバッテリー搭載が想定された設計が行われているのも特徴です。今後のカーボンニュートラル実現に向けて電動車を導入する企業・自治体は、車両の動力としてバッテリーを使用した後に「バッテリキューブ」に搭載し、自社のエネルギー用途に使用することで、電動車バッテリーの資源循環モデルを構築できます。

今回の実証では、三菱自動車が販売するプラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」のリユースバッテリーが「バッテリキューブ」に搭載され、実用性を検証。

三菱自動車と日立が目指す電動車バッテリーのサーキュラーエコノミーのイメージ図
三菱自動車と日立が目指す電動車バッテリーのサーキュラーエコノミーのイメージ図

具体的には、広域災害などによる停電が想定されていて、日立ビルシステムの「V2X」システムと、「バッテリキューブ」を「CHAdeMO V2H」コネクターで接続。日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」を「バッテリキューブ」からの給電で駆動するというもの。

これまで実績のある「V2H」機能搭載の電動車からの給電に加えて、「バッテリキューブ」からの給電を組み合わせることで、企業における災害発生時の継続的なバックアップ電源確保を狙いとしています。

三菱自動車と日立はそれぞれ、電動車バッテリーのリユースとバッテリキューブの事業化を2024年度に開始する予定。両社が連携して、企業や自治体などに「バッテリキューブ」の導入を推進する構えです。

また、再生可能エネルギーの有効活用に向けて、電動車や「バッテリキューブ」と太陽光パネルなどを連動させるエネルギーマネジメントの共同実証も行われる予定。さらに、電動車のバッテリーを再利用するだけでなく、その後の再資源化に至るまでの構想も検討され、電動車バッテリーにおけるサーキュラーエコノミーの実現を目指すことになります。

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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