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■北米仕様の新型アコードから読み解く、日本仕様の新型アコード
ホンダ・アコードが4年ぶりにフルモデルチェンジを受けて戻ってきます。先代は、2023年1月に販売を終了し、日本国内向けのセダンは、ラインナップから消えています。
11代目になる新型アコードは2024年春の発売予定で、1年数ヵ月ぶりの復活にもなります。
発売に先駆けて2023年9月21日(木)にティザーサイトがオープンするとともに、先行予約の受付が2023年12月に開始される予定です。新型アコードは、2022年11月に北米向けが発表されています。
セダン市場が世界的に縮小する中、アメリカ(米国)では、フルサイズピックアップ、SUVが圧倒的な強さを誇る中でも、2023年のトップ10には、トヨタ・カムリが7位、トヨタ・カローラが10位に入っています。なお、ホンダではSUVのCR-V(日本未導入)が5位。
ご存じのとおり、とくにアメリカでは、カムリとアコードは長年、ガチンコとなるライバルとして切磋琢磨してきました。
一方で、日本ではセダン市場は大きく縮小。トヨタ・クラウンが大変革し、日本車のFF系セダンは、レクサスES、マツダ3、マツダ6など少数派になっています。
セダン大国である中国市場も、SUVの割合が急速に増える中、セダンも依然として定番の位置を占めています。
そんな中、日本にも導入されることになった新型アコードは、60代以上のメインユーザーだけでなく、40代から50代前半までも含めた層にも訴求する意欲作。
●北米仕様アコードをチェック!
日本仕様の前に、まずは、北米向けの新型アコードについて概要をチェックしてみます。
パワートレーンは、進化した2モーター式ハイブリッド(2.0Lハイブリッド)のほか、1.5Lの直列4気筒直噴ターボを設定。そして、最上位のグレードには、ホンダ初採用の車載向けコネクテッドサービス「Google built-in(グーグル ビルトイン)」が採用されているのがトピックスです。
ボディサイズは、先代よりも2.8インチ(約70mm)伸び、シャープなフォルムとキャラクターラインが躍動感を演出。リヤのトレッドも0.4インチ(約10mm)広くなり、ロング&ワイドというべきシルエットになっています。
北米向けのパワートレーンは、駆動用と発電用のモーターが搭載される2モーター式ハイブリッドシステム。ハイブリッドシステムが改良されるとともに、新型2.0L直噴エンジンを採用。よりパワフルな走りを実現するとしています。
さらに、ハイブリッド車には走りのカスタマイズを可能にする「Individual」モードが新たに設定されます。また、1.5Lターボエンジン用の無段変速機(CVT)の騒音や振動を低減させるとともに、CVT制御をリファインし、ドライバーの意思に寄り添う爽快な走りが得られるそうです。
北米向けアコードには、最新の安全装備も用意されています。「ホンダ・センシング」のシステムの性能向上に向け、新たに視野角90度のカメラと視野角120度の広角レーダーを採用。検知範囲の広角化により、車両や歩行者だけでなく、自動車や二輪車に対しても認識能力を向上。
また、白線、縁石などの道路境界線や道路標識などの認識能力、アコード初搭載となる「トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)」が追加され、衝突防止性能も向上。
さらに、独自の表示機能を持つ10.2インチのデジタルメーターパネルが標準化されるなど、インパネの景色が大きく変わっているようです。
ハイブリッド車には、ホンダ史上最大となる12.3インチのタッチスクリーンが用意され、最上位モデルには最新のアプリやサービスが搭載された Google built-in (グーグル ビルトイン)を、ホンダとして初めて搭載。ナビゲーション、交通情報のアップデート、音声操作によるエアコンの温度設定などが可能。OSやアプリなどのソフトウェアは、OTA(Over the Air)により更新されるとのことです。
●数値はまだ未公表ながらも、全長とフロントノーズを延長
さて、北米仕様の説明が長くなりましたが、日本仕様についてご説明します。日本仕様と北米仕様は、ラインナップやインテリアの装備が異なる模様です。日本向けは、最上級仕様が用意され、どちらかというと中国仕様に近いとのこと。
日本仕様のディメンションは、現時点では明らかにされていません。ただし、全長とフロントオーバーハングを延長し、車格を感じさせるプロポーションが採用されています。
実車から伝わってくるのは、クリーンな面構成と長いノーズからつながる印象的なキャラクターライン、そして、流れるように弧を描くルーフラインで、ひと目で美しく、スタイリッシュなシルエットとして浮かび上がってきます。
前後ライトは、ブラックアウトされたフルLEDで、精悍な雰囲気を漂わせています。フロントマスクは、ワイド&ローなスタンスで精悍さを漂わせ、リヤにはフルLED化により薄型灯体、横一文字のシグネチャーも配されています。
ヘッドライトは、中央上から右に向かってデイタイムランニングライト、ポジション、ターンシグナルを配置。下側は中央から右に向かって、アクティブコーナーライト、ロービーム(2つに分かれたロービームの間にハイビームを配置)が用意。前照灯をブラックアウト化し、デイタイムランニングライトを主役としたハイコントラストな構成になっています。
●最上級セダンにふさわしく先進的になったインテリア
パッケージングのコンセプトは、従来型の良さを受け継ぎ、さらに進化させたパッケージとしていて、クラストップのロー&ワイドに加えて、低く見切りのいいボンネットフード、運転に集中できるノイズレスな視界が確保されています。
一方のインテリアは、エクステリア以上に大きく変わった印象を受けました。Dセグメントにふさわしい風格や質感の高さを抱かせるのと同時に、先進的なメーターやセンターディスプレイが目を惹きます。メーターフードを廃止して視界の良さを確保するとともに、多彩な表示が可能なヘッドアップディスプレイを用意。ヘッドアップディスプレイで運転に必要な情報はもちろん、オーディオや選局(選曲)などの情報も確認できます。
インパネで革新的なのが、ホンダ車として初採用(日本向け)となる車載向けコネクティッドサービス「Google ビルトイン」の搭載。北米仕様は、最上位グレードのみですが、日本仕様は同サービスが標準になります。
「Google アシスタント」「Google マップ」「Google Play」などが車内で発話やステアリングの音声スイッチなどで容易に操作できます。「Google マップ」は、メーターにも表示できます。
Google化に伴い、新型アコードでは「ホンダ・インターナビ」は未設定になるようです。ホンダが長年培ってきたプローブ情報を含めた同ナビの行方がどうなるか気になるところですが、新型アコードでは、上記のGoogle化に加えて、「Apple CarPlay」「Android Auto」などのスマホ連携にも対応しています。
「Google ビルトイン」とともに注目なのが、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)の進化です。12.3インチの「ホンダ・コネクト」ディスプレイをはじめ、10.2インチフルグラフィックのバイザーレス液晶メーター、11.5インチ相当のヘッドアップディスプレイが用意されています。
●「エクスペリエンスセレクションダイヤル」とは?
ユニークなのが「エクスペリエンスセレクションダイヤル」と呼ばれる、ダイヤル表示型の操作部が、インパネ中央に配されること。表示部はアナログやデジタル表示など切り替えが可能で、エアコンや時計などの情報を表示。ダイヤルを操作することで、ユーザーごとのエアコン設定、オーディオソース、照明などを一括で設定できます。
「エクスペリエンスセレクションダイヤル」による操作だけでなく、タッチコントロールでセンターディスプレイの操作、設定が可能。「Google アシスタント」を使えば、「OK,Google」と発話もしくはステアリングスイッチを押すことで、目的地設定、オーディオやエアコンなど、運転操作に関わる(ウインカーやワイパーを動かして…など)以外の多くの操作が発話でできます。
短時間ですが、触れて操作した印象は、日本車では現時点でトップクラスのHMIに仕上がっている印象を受けました。なお、「エクスペリエンスセレクションダイヤル」は、ドライバーの手元であるセンターコンソールではなく、センタークラスター(インパネ)側に配置されています。
ほかのメーカーやブランドは、センターコンソールに操作部を配置することが多く(最新のトレンドは、操作部のレス化です)、センターコンソールに表示部(エアコンや時計など)を備えたダイヤル式を用意するのは、珍しいといえるでしょう。エアコンパネル(ヒーコンパネル)をどうにかしよう、と考えたことが発想としてあり、時計も兼ねた同ダイヤルを開発したそうです。
筆者は、かつてのオデッセイに搭載されていた「プログレッシブコマンダー」を思い出しました。「プログレッシブコマンダー」は、ジョイスティックとコマンドホイールの組み合わせで、周囲にハードスイッチを配置。対する「エクスペリエンスセレクションダイヤル」は、ダイヤルと時計の表示部というデジタル化とシンプルな構成になっています。
「エクスペリエンスセレクションダイヤル」は、お気に入りの空調、モードを一発で選び起動できるだけでなく、機能やデザインなどユーザーだけのモードも作成できます。ユーザーだけのカスタマイズにより、夫婦や家族間で新型アコードをシェアする際も、エアコン、音、照明を一発で呼び出せます。
物理スイッチを極限まで減らすとともに、多様な機能を用意するため、慣れも必要でしょう。しかし、煩わしいようでも、先述したように、音声で容易に操作できるのはうれしいところ。
そのほか、多彩なアンビエントライト(夜間イルミネーション、機能表示アシスト)、またセンターディスプレイで設定できる「マルチカラーイルミネーション」では、システムがレコメンドしたカラーでキャビンを演出する「Recommend Mode」と、色の世界観を光で表現する「Theme Calla」モードを用意。また、オーディオシステムでは、BOSEと共同開発された12スピーカーのサウンド紙システムが搭載されます。
●日本向けのパワートレーンは、最新の2.0Lハイブリッド「e:HEV」
最新の「ホンダ・センシング」も搭載されます。「Honda Sensing 360」が日本向けに初採用され、約100度の有効水平画角を持つフロントセンサーカメラをはじめ、フロントレーダーと各コーナーに5台のミリ波レーダーを装備。前方交差車両警報、車線変更時衝突抑制、車線変更支援が「ホンダ・センシング」に加わり、2025年にはドライバーの運転負担をさらに減らす、ハンズオフ機能付「Honda Sensing 360 次世代技術」追加される予定になっています。
新型アコードには、走行モードの切り換えに個別設定が可能な「INDIVIDUAL」もあり、アダプティブクルーズコントロール(ACC)の設定で省燃費モードの「ECON」にしつつ、パワートレーンの設定を「スポーツ」にすることもできます。つまり、追従走行時には、ゆったりエコドライブしながら、ACCをオフにして積極的に走る際は、キビキビ走ることができるように設定することも可能。
日本向けのパワートレーンは、2.0L直噴アトキンソンサイクルエンジンとモーターが組み合わされた、2モーター内蔵電気式CVTのみ。最大トルクを大きく高めながら、優れた静粛性を実現するとしています。北米向けの1.5L直噴ターボエンジン車、中国向けにプラグインハイブリッド(PHEV)車は、現時点ではアナウンスされていません。
●ホンダアクセスによる2タイプの純正アクセサリー装着車を設定
また、ホンダアクセスによる新型アコード向けの純正アクセサリーにも注目です。「TOURING LINE」と「SPORTS LINE」の2タイプが設定されています。
凜々しいを意味する「Dignified」とアスリートを組み合わせた「Dignified Athlete(ディグニファイド・アスリート)」がコンセプト。「2つのスタイルで、よりあなたらしいアコードへ。」というグランドコンセプトのもと、2つの個性が仕立てられています。
写真の「TOURING LINE」は、ボディカラー塗装のエアロパーツが上質感をもたらし、煌めき感のあるアルミホイールが足元に華を添えています。
具体的には、ロアスカート(フロント用、サイド用、リヤ用)をはじめ、左右セットのフェンダーガーニッシュ、トランクスポイラー、19インチアルミホイール(切削/グリントブラック塗装)、クロームメッキのアルミホイールガーニッシュ、アルミホイール用ナット(ブラック/キャップタイプ)、ドアエッジフィルム(クリア/フロント・左右4枚セット)、ドアハンドルプロテクションフィルム(クリア/フロント・左右4枚セット)、ランセンスフレーム(ダーククロームメッキ/フロント・リヤ用)が装着されています。
ボディカラーは、プラチナホワイト・パールで、ロアスカートやトランクスポイラーも同色。
「SPORT LINE」は、躍動感のあるデザインに、精悍な印象を付加するブラックカラー塗装のエアロパーツとホイールが組み合わされ、ボディカラーによっては、2トーンカラーのような見た目に昇華できます。
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久、塚田 勝弘、ホンダ)