日産に続きホンダもテスラ方式の充電コネクタを採用したが、日本は変わらないといえるワケ【週刊クルマのミライ】

■テスラは充電規格・NACSを公開している

テスラのNACSは、北米での普及を狙ったCCSより圧倒的にコンパクト。
テスラのNACSは、北米での普及を狙ったCCSより圧倒的にコンパクト。

ホンダは2025年より北米で販売するEV(電気自動車)の充電ポートに、北米充電規格(North American Charging Standard 、略称NACS)を採用することを発表しました。

NACSというのは、EV専業メーカーとして世界のトレンドをリードするテスラが独自に開発した充電規格のこと。いわゆる「テスラ・スーパーチャージャー(急速充電器)」で採用されている充電規格のことです。

北米においてはテスラのスーパーチャージャー網は、もっとも充実した急速充電ネットワークとなっていますが、そうした流れを強化する動きは以前からありました。

ご存じのように2022年の段階でテスラはNACSの規格を公開しています。充電ネットワーク事業者や自動車メーカーがNSCSを採用するよう働きかけていました。

ホンダがNACSを採用するという判断は、そうした流れの中にあるもので、けっして意外なものではありません。

●日産はアダプターで対応する方針

日産は、2024年以降に販売される「アリア」にNACS充電アダプターを付属させる予定。
日産は、2024年以降に販売される「アリア」にNACS充電アダプターを付属させる予定。

NACSへ対応する日系メーカーは、ホンダだけではありません。

北米向けにはCCS1(テスラ以外のメーカーが北米で推していた急速充電規格)を採用している日産アリアについても、将来的にはNACSに対応することが発表されています。

現時点ではCCS1を基本としつつNACS対応アダプターを使うことで、テスラに対応した急速充電ネットワークを利用できるようにしていくといいます。そして2025年以降は、NACS充電ポートをアメリカやカナダ向けにリリースするEVに搭載すると日産は発表しています。

●NACS規格は日本で広まるか?

コンパクトで取り扱いやすいのがNACS規格の特徴といえる。
コンパクトで取り扱いやすいのがNACS規格の特徴といえる。

では、NACS規格は北米以外にも広まるのでしょうか。

おそらく、答えはノーです。

家電のコンセントには様々な規格があり、国や地域によって異なっています。家電メーカーは、長年にわたり地域のインフラに合わせた製品開発を行ってきました。

同様にEVの急速充電規格についても、北米においてはテスラ・スーパーチャージャー(NACS規格)がデファクトスタンダードになりそうなので、ローカライズ(地域最適化)の一環として北米で販売するEVについては、NACS充電ポートを搭載するという話にみえます。

実際、テスラも日本仕様では日本が生んだ急速充電規格、CHAdeMOに対応するアダプターを用意するなど、ローカライズしています。

かつて自動車メーカーのエンジニアに、「複数の充電規格に対応することは、コストアップにつながるのでは?」という質問をしたことがありますが、その回答は「右ハンドルと左ハンドルを作り分けていたり、燃料規格の違いに合わせてエンジン制御系をローカライズしていたりするのに比べれば、複数の充電規格に対応するというのは、大きなコストアップ要因にはならないのでは」というものでした。

欧州はCCS2規格を推していますし、日本と中国は共同で「Chaoji」という急速充電規格を開発しています。ユーザー利便性とは別に、各国の思惑が見え隠れするのが急速充電規格ともいえます。

最終的に、特定の充電規格が世界のスタンダードになる可能性もありますが、ホンダや日産がNACSに対応するという発表は、現時点においては北米市場における最適化と捉えるべきでしょう。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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