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■開業日には発車式やパレードも実施
2023年8月26日(土)に日本で一番新しい路面電車、宇都宮ライトレールが開業しました。国内で新規に建設された路面電車としては75年振りとなりました。
開業初日の8月26日は、午前中に開業式・発車式を開催。宇都宮市長、芳賀町長、宇都宮ライトレール社長、および国土交通省政務官、栃木県知事が出席しました。発車式の後、鬼怒通りで出発パレードを行いました。
営業列車は、15時から開業日特別ダイヤでの運行を開始しました。15時、16時台に宇都宮東口停留場を出発する列車については、26日朝8時から整理券を配布したほか、各駅でも乗車人数を制限しました。そんな中、大勢の人たちが宇都宮ライトレールに初乗りしようと早朝から集まっていました。
●宇都宮ライトレールの運行形態
宇都宮ライトレールは、栃木県宇都宮市の宇都宮東口停留場から、芳賀町の芳賀・高根沢工業団地までの14.6kmを結ぶ路線です。停留場は19設置。このうち、宇都宮市内に宇都宮東口停留場〜ゆいの杜東間の15停留場、芳賀町内に芳賀台〜芳賀・高根沢工業団地間の4停留場が設置されます。
途中、宇都宮大学陽東キャンパス・平石・清原地区市民センター前・芳賀町工業団地管理センター前の4停留場には、トランジットセンターを設置。駐輪場とタクシーなどの地域交通乗降所、パーク&ライド駐車場(宇都宮大学陽東キャンパスを除く)、バス停留所(平石を除く)を整備して、沿線への交通の便を図っています。
開業後一定期間は、余裕を持たせた暫定ダイヤとしていて、ラッシュ時に約8分間隔、それ以外の時間帯は12分間隔で運行します。
運行時間帯は平日が4〜0時台、土・休日が5〜23時台とし、東北新幹線の上り一番列車と、下り最終列車に接続して利便性を高めています。将来的には運行本数をラッシュ時6分、日中10分間隔となる予定です。
最高速度も、当面は軌道法に基づいた40km/hとして、全線を約48分で結びます。こちらも将来的には特認を得て最高速度を50km/h、鬼怒川橋梁付近を70km/hに引き上げて、所要時間を約44分に短縮し、さらに全区間を約37〜38分で運行する快速列車も運行する計画です。
●完全新規のLRT路線としては国内初
宇都宮ライトレールはLRT(ライト・レール・トランジット)としても分類されています。国土交通省ではLRTを「LRV(低床式車両)の活用や、軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システム」と定義しています。従来のLRT路線は既存の路線を改良したもので、完全に新規で建設されたLRT路線は宇都宮ライトレールが国内で初めてとなります。
宇都宮ライトレールを運行する車両HU300形ライトラインの全長は、軌道法の上限30mに近づけた29.52mとしています。
車内は100%低床構造でバリアフリーに完全対応。定員は国内最大の160名を誇ります。
●宇都宮ライトレールの効果は?
国土交通省はLRTの整備効果として、交通環境負荷の軽減、都市内の自動車交通をLRTに転換することによる道路交通の円滑化、移動のバリアフリー化、鉄道の乗り入れや他の公共交通機関との乗り換え利便性向上や、パーク&ライド駐車場・駐輪場の整備を図ることで、都市内交通の利便性が向上するとしています。また、道路空間の再構築やトランジットモールの導入等により、中心市街地の活性化や、都市と地域の魅力の向上が期待できるとしています。
宇都宮ライトレールの沿線には、宇都宮大学や清陵高校などの学校や、ベッドタウンとなるゆいの杜、清原工業団地や芳賀・高根沢工業団地があります。宇都宮ライトレールは、並行する鬼怒通りの渋滞の影響を受けずに、安定した運行をすることができるのが大きなメリットです。
宇都宮ライトレールの開業に合わせて、8月27日(日)から宇都宮駅東側の路線バスを見直して、宇都宮大学陽東キャンバス付近にあるベルモールや、清原地区市民センター前、芳賀町皇后業団地管理センター前を起終点とした路線を新設する一方、一部の路線を廃止しました。
また、HONDAは現在、宇都宮駅とHONDA生産企画統括部・パワートレイン生産企画統括部を結んで運行している従業員専用のバスを9月1日で廃止して、宇都宮ライトレールへの移行を促すそうです。
宇都宮ライトレールの運行開始に合わせて、宇都宮東部・芳賀地区の交通網が変わり始めています。今後のどのように発展していくのか注目です。
(ぬまっち)