220万人の旧型N-BOXオーナーは新型への乗り換えがオトクなのか?【週刊クルマのミライ】

■キープコンセプト&正常大進化の新型N-BOX

新型N-BOXでもカスタム(手前)と標準系による2タイプ設定は変わらない。販売比率的にはカスタムのほうが多くなると予想される
新型N-BOXでもカスタム(手前)と標準系による2タイプ設定は変わらない。販売比率的にはカスタムのほうが多くなると予想される

ご存知のように、ホンダN-BOXはこの秋にフルモデルチェンジを実施します。

「HAPPY Rhythm BOX」をグランドコンセプトに掲げる新型N-BOXのスタイリングが完全にキープコンセプト、いわゆる代わり映えがしないこともあって、市場の反応は賛否両論となっているように思えます。

大好きなN-BOXがそのままに正常進化したことを評価する声もありますが、現時点でメカニズムについての情報が未公開なこともあるのか、単純なスキンチェンジと捉えているユーザーも少なからずいるようです。

たしかに実車をみても、フルフラットとチップアップという2つの格納ができるリヤシートの構造はキャリーオーバー感もあります。おそらくハイブリッド機構は採用していないであろうことから、パワートレインの従来からの進化版であろうと予想されています。

価格帯も不明なため、従来モデルとの比較での優劣や判断はまだ出来かねるというのが現実でしょう。

●ファミリーカーとしての守備範囲を広げた

一見するとキープコンセプトながら、全体のフォルムは台形感が増した、スタンスを強調したものだ
一見するとキープコンセプトながら、全体のフォルムは台形感が増した、スタンスを強調したものだ

ホンダが示すコンセプトを整理すると、2011年の年末に誕生した初代N-BOXは「私のための車」を目指していました。2017年夏にフルモデルチェンジした2代目では「私のため」という基本は大事にしながら「家族のための車」へと進化しています。

そして2023年秋に生まれる3代目N-BOXは従来価値を守りながら、「仲間のための車」とカバー範囲を広げています。

スタイリングがキープコンセプトだからといって車両コンセプトまで変化がないわけではありません。

前述したリヤシートについても、使い勝手としては変化していないように見えますが、実際に座ったときのクッション性などの快適面では明らかに向上しています。友人と連れ立って、大人4人での移動が、今まで以上に楽しくなるのが新型N-BOXといえます。

従来型N-BOXのオーナーであればこそ、その進化幅の広さを実感できるのではないでしょうか。

●従来モデルのリセールバリューはどうなるか?

8年連続で軽自動車の新車販売トップを守るN-BOX。市場の保有台数は220万台を誇る
8年連続で軽自動車の新車販売トップを守るN-BOX。市場の保有台数は220万台を誇る

N-BOXの持つ価値観に共感しているオーナーの方は、予算が許すのであれば、新型に乗り換えても十分に満足できるといえるでしょう。

スタイリングに代わり映えがしないといっても、キャビンのイメージは一新しています。

これまではダッシュボード上に薄型メーターを配置するというのがN-BOXの伝統でしたが、新型ではオーソドックスな位置に7インチのフル液晶メーターがレイアウトされているなど2020年代のファミリーカーとして明確な進化を遂げています。

さらにスタイリングがキープコンセプトというのは、フルモデルチェンジしても旧型のリセールバリューに下げ圧力をかけないことが期待できます。

2022年まで8年連続で軽自動車の新車販売ナンバーワンを守っているN-BOXは、日本国内において220万人ほどのオーナーがいるといいます。そうしたオーナーにとって、愛車の価値(リセールバリュー)が下がらないというのは、下取りに出して新車に乗り換えるインセンティブになるでしょう。

価格帯が不明なため正直にいうと判断するのは難しいのですが、市場の保有台数とリセールバリューを予想するに、新型N-BOXの成功は約束されているといえそうです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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