トヨタからプラド改め新型「ランドクルーザー250」シリーズを世界初公開。北米中国にハイブリッド、日本にはガソリン/ディーゼルなど多様に用意

■「GA-Fプラットフォーム」がベースで、車両全体の剛性を30%向上

2023年8月3日新型ランドクルーザー250ワールドプレミア
2023年8月3日新型ランドクルーザー250ワールドプレミア

2023年8月2日、トヨタは、新型ランドクルーザー「250」シリーズをワールドプレミアしました。

日本では、特別仕様車の「First Edition」を含め、2024年前半の発売が予定されています。また、ヘビーデューティーモデルのランドクルーザー「70」も、今冬、継続販売モデルとして日本に再び販売される予定で、「300」も含めて日本で再びランドクルーザーの全3シリーズが揃います。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のエクステリア

世界中で愛されてきたランドクルーザーは、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」を掲げた、日本のクロカン4WDの王者。72年前の誕生から現在まで、約170の国と地域で累計1130万台(レクサスLX、GX)に達しているそうです。

ランクル・シリーズは、常に最新技術が投入され、最上級モデルとしての進化を担うステーションワゴンの300シリーズ、高い耐久性、走破性が求められるヘビーデューティーモデルの70シリーズ、悪路走破性をベースに扱いやすさと快適性を備え、日常生活と実用を支えるライトデューティーモデルのプラドの3シリーズが展開されてきました。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のエクステリア

プラドというサブネームが与えられていたライトデューティー系。トヨタは、世代を重ねるごとに進化を遂げ、高級で豪華な路線にシフトする傾向にあったと振り返っています。こうした状況下で開発されることになった250シリーズは、商品の最終責任者である当時の豊田章男社長が、「ランクルは人々の生活、地域社会を支えるためのクルマであるべきで、より多くの人の生活を支えるライトデューティーモデルは、ユーザーが求める本来の姿に戻す必要がある」という基本的な考え方を提示したそうです。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のリヤビュー

そこで開発陣は、「The Land Cruiser:質実剛健を追求し、ユーザーの生活と実用を支え、信頼されるクルマ」という、ランクルの原点に回帰する開発コンセプトを掲げたそう。ランクルを作り直す精神で開発を推進したとしています。

新型となる250シリーズは、ランクルの中核モデルとして、300シリーズと同様に「GA-Fプラットフォーム」がベース。「GA-Fプラットフォーム」の採用により、従来型比で大幅な剛性強化フレーム剛性+50%向上をはじめ、車両全体の剛性としても+30%の向上を実現。さらに、サスペンションの基本性能向上も盛り込まれています。悪路走破性の指標となるホイールアーティキュレーション(タイヤの浮きづらさ)も向上されています。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のリヤまわり

オフロード、オンロードを問わず、性能向上に寄与するシステムの採用もトピックス。電動パワーステアリング(EPS)により、悪路走行時のキックバック(ハンドルを取られる感覚)の低減、すっきりとしたステアリングフィール、低速時の取り回し性向上などに貢献するとともに、「レーントレーシングアシスト」も用意されています。

力強いフェンダーアーチが目を惹く
力強いフェンダーアーチが目を惹く

さらに、トヨタブランド初採用の「SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism」により、スイッチ操作でフロントスタビライザーの状態を切り替え可能になります。オフロードの悪路走破性、乗り心地とオンロードでの操縦安定性を両立に寄与します。そのほか、「マルチテレインモニター」、「マルチテレインセレクト」機能の拡充によるオフロード走行支援の向上も見逃せません。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のインパネ

パワートレーンの注目は、ランクル初のハイブリッドの設定。とはいえ、「人の命や暮らしを支える」というランクルの使命を受け継ぎ、DNAである「信頼性・耐久性・悪路走破性」を追求しながら、多様なアプローチでカーボンニュートラルを目指すトヨタの取り組みを反映。ランドクルーザーに相応しい力強い走りや、環境性能を実現するハイブリッドシステムを含め、多様なパワートレーンが用意されています。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のステアリングまわり

また、従来型以上にランクルにふさわしい力強い走り、高い環境性能を実現する多様なパワートレーンも用意されています。北米・中国向けには、最高出力243kW(330PS)、最大トルク630Nmの「T24A-FTS」型2.4LガソリンターボハイブリッドとDirect Shift-8ATの組み合わせを用意。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のキャビン

中近東・東欧、その他向けとして、最高出力207kW(281PS)、最大トルク430Nmの「T24A-FTS」型2.4LガソリンターボとDirect Shift-8ATの組み合わせが用意されます。

豪州、西欧向けには、最高出力150kW(204PS)、最大トルクは500Nmに達する「1GD-FTV」型の2.8Lディーゼルターボ(48Vシステム搭載)が設定され、トランスミッションは、Direct Shift-8ATが組み合わされています。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のシフトまわり

そして、西欧・東欧、日本・中近東、その他向けとして、最高出力150kW(204PS)、最大トルク500Nmを誇る「1GD-FTV」型2.8LディーゼルターボとDirect Shift-8ATの組み合わせを設定。さらに、東欧・日本、その他向けとして「2TR-FE」型の2.7Lガソリンエンジンと6 Super-ECTの組み合わせを用意。

パッケージの進化、デザインの見どころもチェックします。パッケージは、安全なオフ、オンロード走行に貢献するため、低く設計されたカウル(カウルトップ)とインパネの上面により、見通しのいい良好な前方視界が確保されているそうです。悪路でも路面を見下ろしやすいように、ベルトラインも低く設計されています。

また、ランクル伝統のホイールベース数値(+60mm)として、悪路走破性を圧倒的に向上させる一方で、ミラー全幅(ミラー・トゥ・ミラー)は従来型以下とすることで、すれ違いのしやすさなど、取り回し性にも配慮されています。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のサイド、リヤビュー

また、壊れにくく、仮に壊れても修理しやすい設計を各所に採用しながら、個性的なランクルを楽しめるカスタマイズへの対応にも配慮しているそう。

なお、新型250シリーズのボディサイズは、全長4925mm(+100)、全幅1980mm(+95)、全高1870mm(+20)、ホイールベース 2850mm(+60)となっています[()内は従来型との比較]。

3つのキーワードを掲げてエクステリアをデザイン
3つのキーワードを掲げてエクステリアをデザイン

また、デザインは、ランクルらしさを追求しつつ、現代的な仕立てになっています。伝統とモダンを統合しながら、「Reliable(過酷な使用用途にも耐えられる信頼性)」、「Timeless(永く愛せる飽きのこないシンプルさ)」、「Professional(プロが使う、無駄のない道具に共通する洗練された機能美)」をキーワードに掲げ、内外装がデザインされています。

エクステリアは、水平基調のデザインによって再現された、ランクルらしいシルエットが目を惹きます。インテリアは、高級で豪華な雰囲気から、リアルオフローダーらしい機能性を感じさせる意匠に変わっています。強さと安定感のある空間、水平基調のインパネ、どんな環境下でも迷わずに操作がしやすいスイッチ形状が採用されるなど、悪路走行時も含めた機能性向上にも配慮。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”250″(プロトタイプ)のリヤフェンダーとサイド面

そのほか、先進機能の採用をはじめ、機能の向上が盛り込まれた最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」も全車に採用され、対応する事故形態を拡大させることで安全性の向上が図られています。

●70シリーズも日本で復活

日本での復活を果たす70シリーズは、そのキャラや特性を維持しながら、時代に合わせた進化が盛り込まれています。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”70″(プロトタイプ)のエクステリア

パワートレーンは、力強い動力性能と低燃費を両立する2.8Lディーゼルエンジンと6ATを採用。従来のガソリンエンジンから、高い信頼性を誇る「1GD」型の2.8Lディーゼルターボエンジンに一新されます。高トルク、高出力を兼ね備えたディーゼルエンジンならではの、タフなオフロード性能を確保しながら、低騒音、静粛性を実現。また、燃費性能の向上にも取り組まれているそうです。

ランドクルーザー
ランドクルーザー”70″(プロトタイプ)のリヤまわり

もちろん、耐久性に優れ、信頼度の高いラダーフレームが継続採用され、自慢のオフロード走破性を維持しながら、さらにオンロードでの乗り心地も向上するというのも朗報です。

300系とプラドを受け継ぐ250シリーズ、日本での復活を果たす70という選択肢が揃うことになるランドクルーザー。世界的なSUV、クロカンモデルの人気に応えるのはもちろん、日本でもさらに人気沸騰となることは確実。

価格や納期も含めて、ランクルから目が離せなくなるのは必至です。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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