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■4名乗りで最高飛行速度は約240km/h
アメリカ・シリコンバレーのエアモビリティ企業「ASKA」が、2023年7月21日、世界初となる空飛ぶクルマ「ASKA A5(以下、A5)」の実用化に関し、米国FAA(連邦航空局)の型式証明手続きを正式に開始したことを発表しました。
公道を走れるだけでなく、空を飛んで移動できる4人乗りのeVTOL(イーブイトール[Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft]/電動垂直離着陸機)がA5。
すでに、このモデルは、米国DMV(自動車管理局)よりナンバープレートを取得し、公道での走行試験を実施済み。それに加え、今回は、FAAによる認証書(COA)と特別耐空証明を取得して飛行試験を開始したことで、空を飛ぶために必要な米国の認可を得ようと動きだしたといいます。
しかも、このモデルは2026年の商業化を目指しているとのことで、なんと1機=78万9000ドル(約1億1186万円)で販売予定なのだといいます。
●航続距離を伸ばすための秘策とは?
近年、空中を飛び、人や荷物を運ぶ新しい移動手段として注目されているのが空飛ぶクルマ。特に、eVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ばれるモデルは、いわゆるドローンのクルマ版ともいえるもの。
垂直離陸が可能なうえ、電動なので排気ガスを出さず環境にも優しい。まさに、エコで新しい移動手段といえるのがeVTOLで、日本を含めた多くの国で、さまざまな企業などが実用化に向けた開発を行っています。
A5も、そんなeVTOLタイプのひとつ。4名乗り(パイロット1名、乗客3名)が可能で、ヘリコプターのように垂直に離陸し、小型飛行機のように飛行します。
また、翼を格納するとSUV程の大きさになり、前述の通り、公道走行も可能。通常の駐車場に機体を駐車することもできるそうです。
このモデルは、飛行も走行も電動モーターで行いますが、電動システムだけの従来型eVTOLでは、バッテリーの容量や重量などの問題で、飛行できる航続距離をあまり伸ばせないという課題がありました。
そこで、A5では、バッテリーシステムに加えて、ガソリンエンジンをレンジエクステンダー(発電機)として搭載し、飛行中にバッテリーを充電することで飛行距離の問題に対処。
つまり、このモデルの動力システムは、日産「セレナ」などに搭載されている「e-POWER」のようなシリーズハイブリッド方式を採用しているといえます。
また、タイヤに搭載されたインホイールモーターとプロペラの推力を利用することで、滑走路からの離着陸も可能。垂直離着陸と比べ、エネルギー消費量を大幅に低減することができます。
ちなみに、離陸後の飛行航続距離は250マイル(約400km)を実現。最高飛行速度は時速150マイル(約240km/h)を発揮するといいます。
●開発チームには日本出身のエンジニアも多数
ASKA社によれば、型式証明手続きは、すでにPhase1規格を合格。次のマイルストーンとなるG-1認証基準へ向けて前進しているのだとか。
そして、晴れて型式証明が取得できれば、2026年頃の販売を予定。お値段はこれも前述のように、1機78万9000ドル(約1億1186万円)。すでに5000万ドル(約70億円)以上の予約を個人、企業、医療関係団体より確保しているといいます。
なお、A5の開発を進めている企業ASKAは、カリフォルニア州マウンテンビュー市を拠点とし、2018年に設立されたスタートアップ企業。創設者は、カプリンスキー・ガイさんと、名古屋出身の日本人カプリンスキー・真紀さんで、同社の開発チームには日本出身のエンジニアも多いのだとか。
つまり、日本の「モノづくり」に関する技術などが、ふんだんに活用されているのがA5だといえます。A5の成功により、日本の底力を世界に示すことができるのか? 今後に注目です。
(文:平塚 直樹)