まずい棒など自虐ネタ満載、開業100周年を迎えた銚子電鉄が「新しい中古車」を導入!

■銚電まつりの会場で発表

千葉県銚子市を走るローカル私鉄・銚子電気鉄道が、2023年7月5日に開業100周年を迎え、7月9日に犬吠駅で銚電まつりを開催しました。

開業100周年を迎えた銚子電気鉄道
開業100周年を迎えた銚子電気鉄道

銚子電鉄は経営危機を打破するために売り出した「濡れせんべい」が大ヒット。さらに、自虐ネタで名付けた「まずい棒」も大ヒット!

駅名のネーミングライツ販売や、映画「電車を止めるな」を製作するなど、様々な経営努力により、2期連続で黒字化を果たして、メディアにも度々採り上げられています。

銚電まつりの会場では、竹本社長が2023年度中を目標に新車両の中古車を導入すると重大発表を行いました。現在、銚子電鉄の公式Twitterでは、導入予定時期を2024年2月頃と発表。

中古車は、本州にある私鉄から導入するということで、ネット界隈では一体どんな車両がやって来るのかが話題になっています。

銚電まつりの会場で新車両の導入を発表した竹本社長
銚電まつりの会場で新車両の導入を発表した竹本社長

現在、銚子電鉄では2000形2両編成2本と、3000形2両編成1本の6両を使用しています。

2000形は伊予鉄道800形を譲り受けたもので、2010年7月から運用しています。元々は1962年に製造された京王電鉄2010系・2500系で、1984年・1985年に伊予鉄道が譲り受けた車両で、銚子電鉄へは再譲渡された形です。

銚子側の先頭車は京王2010系として新造した、当時の非貫通2枚窓の前面スタイルなのに対して、外川側の先頭車は伊予鉄道時代に運転台を設置した車両なので、前面デザインが貫通形となっているのが特徴。現在、2001編成は青色系のツートンカラーに塗装。2002編成は、茶色+赤色の銚子電鉄旧標準色に塗装されています。

2000形2002編成は銚子電鉄旧標準色に塗装。外川側先頭車は貫通形です
2000形2002編成は銚子電鉄旧標準色に塗装。外川側先頭車は貫通形です
2001編成
2001編成

3000形は、伊予鉄道700形を譲り受けた車両で、2016年3月から営業運転をしています。この車両も元京王電鉄の車両で、1963年に5070系として製造。1967年に5100系に形式を変更しています。その後1986年、1988年に伊予鉄道に譲渡されました。3000形の塗装は、かつて運行していたトロッコ列車「澪つくし号」の復刻カラーとなっています。

3000形は元京王5100形→伊予鉄道700形です
3000形は元京王5100形→伊予鉄道700形です

2022年11月には、2002編成、3001編成にロマンスシートを設置しました。

3001編成に設置されたロマンスシート
3001編成に設置されたロマンスシート

ロマンスシートとは、2人掛けクロスシートのことです。座席はしなの鉄道から譲り受けたもの。車窓を見ながら移動することができるので、観光客には好評です。


●新しい“中古車”の有力候補は?

2000形、3000形が伊予鉄道から譲渡された理由のひとつは、車体サイズが銚子電鉄の規格に収まっていたことです。ちなみに、車体幅は2000形が2600mm、3000形が2744mm。全長はどちらも18mです。もうひとつの理由は伊予鉄道の架線電圧が直流600V(高浜線)、750V(横河原線・郡中線)であること。同じく、直流600V電化の銚子電鉄への入線に際して、電気機器の改造をする必要がなく、導入コスト的に有利でした。

静岡鉄道1000形
静岡鉄道1000形

以上の条件と本州の私鉄であること、2023年度に引退が予想されている車両から考えられる最有力候補は、静岡鉄道1000形ではないかと思います。

静岡鉄道は、直流600V電化の路線なので電気機器の改造をする必要がありません。全長は18m、車体幅は2744mm。現存する2編成のうち、7月16日に引退する1011編成は1984年の製造で、銚子電鉄の車両よりも20年以上も若い車両です。もう1編成の1008編成でも1976年製です。また、1000形はオールステンレス車体なので長寿命。塗装する必要もなく、ローカル私鉄には好都合な車両です。

北陸鉄道8000系8800番台は元京王井の頭線3000系です
北陸鉄道8000系8800番台は元京王井の頭線3000系です

なお、北陸鉄道浅野川線8000系8800番台を熱望するファンもいるようです。

北陸鉄道8000系は、元京王井の頭線3000系です。8800番台は3000系の第1・2編成だった車両で、車体幅が2700mmと狭いのが特徴です。ちなみに、第3編成以降の8900番台は車体幅が2872mmと広くなっていて、銚子電鉄の車体規格をオーバーしてしまいます。

8800番台のうち現存するのは8801編成だけで、8802編成は2022年で運行を終了しています。実は引退した8802編成のステンレス製ドアは現在、銚子電鉄2000形の2002編成に使用されています。

銚子電鉄2000形2002編成のドアは北陸鉄道8000系8800番台8802編成のステンレス製に交換
銚子電鉄2000形2002編成のドアは北陸鉄道8000系8800番台8802編成のステンレス製に交換

しかし、8801編成の譲渡には大きな壁が立ちはだかっています。それは、北陸鉄道浅野川線の架線電圧が1500Vであることで、銚子電鉄に入線するためには電気機器を改造する必要があります。また、8801編成の製造は1962年で、実は2000形と同じ古さ。ですので、8801編成が譲渡される可能性は低そうです。

直流600V電化で引退が進んでいる車両としては、東京メトロ丸ノ内線02系もあります。

東京メトロ丸ノ内線02系
東京メトロ丸ノ内線02系

02系は、1988年〜1992年に製造されたアルミ車体の車両。制御装置も、省エネルギー性に優れたVVVFインバータを採用しています。

ちなみに、丸ノ内線の車両が銚子電鉄に入線した実績はあり、銀座線および丸ノ内線方南町支線で活躍した、2000形を改造した1000形が2015年まで活躍していました。現在も丸ノ内線方南町支線で使用された2040号を改造した1002号が、銚子電鉄仲ノ町車庫で保管されています。

丸ノ内線方南町支線から銚子電鉄に来た1000形1002号
丸ノ内線方南町支線から銚子電鉄に来た1000形1002号

しかし、02系の先頭車にはモーターがないので、モーターと電気機器を搭載する電装改造が必要。線路の幅も銚子電鉄と違うので、台車の交換も必要。集電方式も違うので、パンタグラフの搭載などの改造も必要で、導入コストが高くなって銚子電鉄への導入は難しそうです。

果たしてどんな車両が銚子電鉄にやって来るのか。いろいろ推理しながら続報を待ちましょう。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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