一般車も歩行者も通行禁止! 都内にもあるバス専用道路とは?

■国分寺に西武バス専用の道路がある

バス専用道路とは、バス以外の自動車・バイク・自転車・歩行者の通行を禁止した、文字通り「バスしか走れない」道路です。バス専用道路の多くは地方にあるのですが、実は東京都国分寺市にもバス専用道路が存在します。

東京都国分寺市にある西武バス専用道路
東京都国分寺市にある西武バス専用道路

国分寺のバス専用道路は、国分寺駅北入口バス停から西武多摩湖線の東側に沿って北上し、熊野神社通りに至っています。その距離は約400m程。道幅はバス1台ほどですが、途中の八幡神社付近の道幅が拡がっていて、バスのすれ違いができます。

このバス専用道路は、国分寺駅北側エリアの主要路線となっていて、1日約350往復も走っています。なお、バス専用道路の両端には、誘導員が待機していて交通整理を行っています。

西武バス専用道が西武多摩湖線と並行しているのは、多摩湖線の複線化用地を転用したからです
西武バス専用道が西武多摩湖線と並行しているのは、多摩湖線の複線化用地を転用したからです

西武バス専用道路が誕生したのは1959年だそうです。当時の国分寺駅北口周辺は道幅が狭く、輸送力の増強が困難でした。そこで、西武鉄道は、多摩湖線を将来複線化するために確保していた用地をバス専用の私道として転用し、輸送力を確保したのだそうです。

西武多摩湖線国分寺駅ホームの脇にある西武バス折り返し場・駐車場
西武多摩湖線国分寺駅ホームの脇にある西武バス折り返し場・駐車場

西武多摩湖線のホームには線路が1本しかありませんが、構造的には線路を2本にできるようになっていて、線路を増やすためのスペースは現在、西武バスの折り返し場と駐車場として使用しています。

●バス専用道路にはどんな種類がある?

国内のバス専用道路は、国分寺のように道路運送法で定義されたバス会社等が所有する私道と、道路交通法で定義された公道、そして軌道法で定義された専用軌道の3種類があります。

私道としてのバス専用道路は、道路運送法第2条第8項に規定された「専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道路で道路法による道路(高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道)以外の自動車専用道路のうち、バス会社等が自社の車両専用に設置した「専用自動車道」を指していて、西武バスの道路もこれに当たります。

福島県白河市のJRバス関東のバス専用道路は国鉄白棚線の線路敷を転用
福島県白河市のJRバス関東のバス専用道路は国鉄白棚線の線路敷を転用

私道としてのバス専用道路の多くは、廃止された鉄道の敷地を転用したものです。有名なのは、福島県白河市にあるJRバス関東のバス専用道路で、国鉄時代の1944年に白棚(はくほう)線の線路敷きを転用しました。

最近では、岩手県の大船渡線や、宮城県の気仙沼線のように、災害で被災したJR線をバス専用道路として復旧させてBRT(バス・ラピット・トランジット)化した例もあります。

鉄道線は一般道よりもカーブが緩いなど条件が良く、区間によってはトンネルや鉄橋でショートカットして所要時間の短縮を図れる場合もあり、なによりも渋滞の影響を受けずに定時運行が可能というメリットがあります。

南海りんかんバス女人堂〜高野山間のバス専用道路ⒸGoogle
南海りんかんバス女人堂〜高野山間のバス専用道路ⒸGoogle

純粋なバス専用道路として建設された道路で現存しているのは、和歌山県の南海りんかんバス・女人堂〜高野山間だけです。

私道としてのバス専用道路は私有地なので、一般車や歩行者の進入は禁止されています。しかし、バス専用道路の維持はバス運行事業者が行わないといけません。そのため、公道に転用、または廃止されたバス専用道路も数多くあります。

道路交通法で定義された公道としてのバス専用道路としては、通勤時間帯に一般車の進入を規制した例が、奈良県奈良市登美ヶ丘、広島県尾道市、沖縄県那覇市などにあるようです。ただし、登美ヶ丘は二輪・軽車両通行可(歩道あり)、尾道は自動2輪と歩行者通行可、那覇市はタクシー・許可車通行可(歩道あり)となっているほか、時間規制なので見た目は一般道と変わりません。

福岡市内にある公道のバス専用道路ⒸGoogle
福岡市内にある公道のバス専用道路ⒸGoogle

一方、福岡県福岡市東区にある公道のバス専用道路は、もともと西日本鉄道福岡市内線の廃線跡を転用した私道でした。公道となった現在も、バス以外の車両は許可車以外走ることはできませんが、歩行者の通行はできるそうです。

茨城県では石岡市、小美玉市に鹿島鉄道の廃線跡を転用した公道のバス専用道路があるほか、日立市にも日立電鉄の廃線跡を転用した公道のバス専用道路があります。

鹿島臨海鉄道の廃線跡を転用したかしてつバス専用道路
鹿島臨海鉄道の廃線跡を転用したかしてつバス専用道路
日立電鉄の廃線跡を転用したひたちBRT
日立電鉄の廃線跡を転用したひたちBRT

どちらも公道ですが、私道と同じようにバスしか進入することができません。なお、線路跡を全区間転用するわけではなく、渋滞が激しい区間をバス専用道路経由として、定時運行を確保することを目的としています。

2023年8月28日には、JR九州が日田彦山線BRTを開業させる予定です。日田彦山線は平成29年7月、九州北部豪雨で被災した添田〜夜明間をBRTとして復旧するものですが、線路跡をバス専用道路に転用するのは、山越えとなる彦山〜宝珠山間だけで、添田〜英彦山間、宝珠山〜夜明間は一般道を走行して、沿線の利便性の向上を図ります。

名古屋市のガイドウェイバスゆとりーとラインのバス専用道路
名古屋市のガイドウェイバスゆとりーとラインのバス専用道路

最後の軌道法で定義されたバス専用道路は、愛知県にあるガイドウェイバスゆとりーとライン・大曽根〜小幡緑地間にあります。

ガイドウェイバスは、車道の左右にあるガイドウェイに誘導されて走行するバスで、カーブでもハンドル操作をする必要がありません。そのため、ガイドウェイバスの専用道路は路面電車と同じ軌道法で定義されていて、他のバスとは位置づけが異なります。なお、一般道では通常のバスと同じようにハンドルを操作して運転します。

西武バスのバス専用道路は一見の価値アリです
西武バスのバス専用道路は一見の価値アリです

各地の例と比べると、西武バスの専用道路はちょっと特殊な事例かもしれません。しかし、都内の主要駅付近にあり、バスの運行本数も群を抜いているので、バス専用道路の効果はどこよりも高いのではないかと思われます。

(ぬまっち)

【関連リンク】

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この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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