歩行者との事故をクルマは防げるか? トヨタ「人の能力を超える自動ブレーキ」技術公開

■クルマを信用してはいけない。けれど、クルマも進化している

横断歩道には標識もあるが、人間が絶対に見落とさないとは言えません
横断歩道には標識もあるが、人間が絶対に見落とさないとは言えません

交通事故は全て痛ましいけれど、なかでも悲しいケースが多いのは対歩行者。最近になってフロント部分の構造を工夫し衝撃を抑えるようにしたり、歩行者用エアバッグを装備するなど大幅に改善されているものの、決定的な対策とまでいかない。もちろんクルマ側に安全を担保する責任があるのだけれど、信号の見落としや認知症などによる事故は100%防げない。人間、必ずミスをする。

留守にする時に鍵を掛け、監視カメラを付けるのと同じ観点で、私は子供や孫に「クルマを信用しないこと」と言っている。信号のありなしを問わず、車道を渡るときは必ず右と左を見て安全確認させてきた。泥棒は悪いけれど、やる輩がいる。クルマも全く同じ。信号が青だからと躊躇無く歩き出すのは危険行為とまで思う。家族や子供には「安心するな」と繰り返し教えてあげて頂きたい。

一方で技術は進化する。現在、最新の自動ブレーキシステムでも、歩行者が見えてからブレーキを掛けるまで最長0.5秒程度掛かっている。50km/hだと7mほど進む。つまりブレーキ掛かるまで7m減速出来ないと言うこと。人間の反射時間は0.2秒ほど。ブレーキ踏み換え制動始まるまで早い人だと0.4秒。優れた自動ブレーキと優れたドライバーは同じくらいの制動開始タイミングになります。

先日行われたトヨタの『テクニカルワークショップ2023』で公開された自動ブレーキ技術は、歩行者の行動をディープランニングすることにより反応時間を0.1秒まで短縮できるというもの。人間じゃ100%無理です。人間の脳は常に0.2秒程度の反応遅れを持つ。人間が「今!」と思っている世界は0.2秒前。そいつを織り込んだアクティブ制御をしているから違和感ないだけ。

0.1秒で反応し、その0.1秒後にブレーキを掛ければ、ハンドル握っている人間は何が起きたか解らないウチに減速が始まっており、歩行者を視認した時には急減速中だろう。50km/hなら空走距離わずか1.3m! 対人事故の100%を防止できることは出来ないだろうが、10分の1以下に減らすことはできるし、減速しながら接触出来ればダメージだって大幅に少なくできる。

次に問題となってくるのが雨天や夜間、薄暮時。カメラにとって最も厳しい条件になる。人間の目でも見えにくいと思う。人間はどうやって運転しているかと言えば、速度を落として対応するのみ。見えないのだからゆっくり走るしか無い。それでも歩行者が出てきたら、もはやいかんともしがたい。厳しい視界条件の時に事故を防ぐには、カメラや人間だと難しい。他の技術が必要だ。

自動運転実験車両に取り付けられたライダーの例。センサーとしては高価とされています
自動運転実験車両に取り付けられたライダーの例。センサーとしては高価とされています

そいつに対する技術もテクニカルワークショップ2023で提案されていた。『ライダー』というセンサーで、カメラやレーダーより詳しい状況を検出可能。自動運転のセンサーとしても使われるほどで、歩行者もきっちりと追いかけられる。歩行者の場合、必ず足が地面に着いてます。レーダーでもクルマの床下を通して「何かいる」ことが解るのだった。すでに日産はこの情報を活かしてる。

クルマの陰に人がいたらレーダーで「何かある」と推定。カメラで人が確認できたら即座にブレーキを掛けている(すでに採用済)。ただ日産も最終確認はカメラ。雨や薄暮時だと反応遅れが出てしまう。最終確認をライダーで行えば、雨でも薄暮時でも瞬時にブレーキを掛けられる。さらに飛び出してくる歩行者が想定できる交通状況だと自動的に速度を落とす制御だって可能。

トヨタで開発中の「オンデマンドで走りを変更可能とする車両」
トヨタで開発中の「オンデマンドで走りを変更可能とする車両」

これらの技術、電気自動車との相性が良い。走行状態から減速に遷るまでの時間を短縮できるためだ。開発を急いで頂き、高齢者や速度違反、一時停止違反、信号無視などの違反歴を持つドライバーから「眼鏡等」と同じく高性能自動ブレーキ装着者を運転条件にしていくなどいかがろう。そうこうしているウチ、全てのクルマが新世代の自動ブレーキ付きに入れ替わると思う。

国沢光宏