リアル「じぷた」、国産初の消防ポンプ自動車「日産180型」、オート三輪ポンプ車も。激レアクラシック消防車に注目【東京国際消防防災展2023】

■国産ポンプ車第1号や、オート三輪ポンプ車も展示!

2023年6月15日(木)〜18日(日)に東京ビッグサイトで開催された「東京国際消防防災展2023」の会場には、クラシック消防車も展示されました。

T型フォード消防ポンプ自動車(手前)と馬引き蒸気ポンプ(奥)
T型フォード消防ポンプ自動車(手前)と馬引き蒸気ポンプ(奥)

屋外に展示されていたのは、日産180型消防ポンプ自動車。1941年に蒲田消防署に配置された国産初の消防ポンプ自動車です。

国産初のポンプ式消防車自である日産180型消防ポンプ自動車
国産初のポンプ式消防車自である日産180型消防ポンプ自動車

ベースとなったニッサントラック180型は、80型の後継モデルとして1941年に登場。出力85psの6気筒エンジンを搭載しています。消防ポンプは市原ポンプ製作所製です。

市原ポンプ製作所のポンプとホースリールを装備。ハンマーを搭載しています
市原ポンプ製作所のポンプとホースリールを装備。ハンマーを搭載しています
助手席側にはサイレンを鳴らすハンドルが取り付けられています
助手席側にはサイレンを鳴らすハンドルが取り付けられています

このポンプ車は、東京オリンピックが開催された1964年まで活躍。引退後は高輪消防署二本榎出張所で保管されていましたが、日産名車再生クラブの手により、2年間かけて走行可能な状態にまで復元されました。

東京機械工業株式会社のブースには、オート三輪消防ポンプ自動車が展示されていました。

東京機械工業のオート三輪消防ポンプ自動車
東京機械工業のオート三輪消防ポンプ自動車

この消防車は三菱重工業製のオート三輪「みずしま」のシャシーをベースとして、1957年に製造されました。車体後方には三菱重工業製KE-55形エンジン(55ps)を搭載しています。

消防ポンプはKMC(カタクラ・マチノ・カンパニー)製のコメットを搭載しています。 乗車定員は5名。運転席の左右に補助席、後部に2名分の立席スペースがあります。

センターに運転席、その左右にも座席があります
センターに運転席、その左右にも座席があります
後方の立席スペースにはサイレンを設置
後方の立席スペースにはサイレンを設置

このオート三輪消防ポンプ自動車は、栃木県の某消防署から日本機械工業が譲り受けたそうです。当時はかなり傷んでいたそうですが、東京国際消防防災展2023に間に合わせるために、車体をきれいに仕上げたそうです。

今後、エンジンをレストアして走れるようになるといいですね。

●絵本から飛び出したリアルじぷた!

じぷたをリアルに再現した三菱ウィリスCJ-3B消防ポンプ自動車
じぷたをリアルに再現した三菱ウィリスCJ-3B消防ポンプ自動車

東京消防庁エリアに展示されていた三菱ウィリスCJ-3B消防ポンプ自動車は、1960年に日本機械工業が製造。名古屋の自衛消防隊で活躍しました。

1500L/分の消防ポンプを搭載
1500L/分の消防ポンプを搭載

引退後は板橋区内で保管されていましたが、消防自動車博物館が引き取ってレストア。その際に、絵本の「しょうぼうじどうしゃ じぷた」(福音館書店)に登場するじぷたをリアルに再現しました。

消防ポンプの放水能力は1500L/分。絵本と違うのは、実車が左ハンドルとなっていることぐらいだそうです。

展示車は左ハンドル仕様となっています
展示車は左ハンドル仕様となっています

消防自動車博物館は、現在、茨城県筑西市のザ・ヒロサワ・シティ内にあります。


海外で活躍したクラシック消防車も展示。これは、アメリカン・ラフランス社900シリーズ ポンパー(消防ポンプ自動車)。ペンシルバニア州ストックデールEngine17-2が展示されていました。

アメリカン・ラフランス社900シリーズ ポンパー
アメリカン・ラフランス社900シリーズ ポンパー
後部の立席スペースには、戦前の地下鉄のリコ式吊り手のようなものがついています
後部の立席スペースには、戦前の地下鉄のリコ式吊り手のようなものがついています

Engine17-2は1962年に製造。1963〜2009年にストックデールで活躍しました。エンジンは6気筒のモデルNを搭載。消防ポンプはツインフロータイプです。

ツインフローの消防ポンプを搭載
ツインフローの消防ポンプを搭載

アメリカン・ラフランス社製の消防ポンプ自動車は、1917年に東京市が初めて輸入。また、富山市でもアメリカン・ラフランス社製の消防ポンプ自動車が活躍していたことがあり、この地方では消防車の事を「ラフランス」と呼ぶ人がいるそうです。この消防車は有限会社コムテックが所有しています。

T型フォード消防ポンプ自動車
T型フォード消防ポンプ自動車

T型フォード消防ポンプ自動車は1920年に輸入されました。

車体には、消防ポンプとケミカルタンクを搭載。後部には立席スペースを備えています。

消防ポンプとケミカルタンク
消防ポンプとケミカルタンク
後部の立席スペース
後部の立席スペース


馬引き蒸気ポンプは消防ポンプ馬車で、1860年に艤装されました。消防蒸気ポンプとしては国内最古のものです。

馬引き蒸気ポンプ
馬引き蒸気ポンプ

搭載されているメリーウェザー社製蒸気ポンプは、艤装よりも前に製造されたものだそうで、1841〜1842年のエクアドル・ペルー戦争でついた弾痕が煙突に残っています。

煙突に弾痕が残っています
煙突に弾痕が残っています

どのクラシック消防車もとても貴重なものばかり。国内にはまだまだたくさんのクラシック消防車が保存されているようなので、いろいろ見てみたくなりました。

(ぬまっち)

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この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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