磐越西線の「SLばんえつ物語」が1年ぶりに運行を再開

●再開初日は7月29日

2023年5月19日(金)、JRグループは夏に運行する臨時列車を発表。磐越西線を運行する「SLばんえつ物語」が7月29日(土)から運行することも発表されました。「SLばんえつ物語」は2022年7月31日の運行以来、1年振りの運行となります。

1年振りに運行されることが発表された「SLばんえつ物語」
1年振りに運行されることが発表された「SLばんえつ物語」

「SLばんえつ物語」はC57形180号機が客車7両編成を牽引して、4〜11月の土休日を中心に新津〜会津若松間を運行しています。

2022年はC57形180号機が全般検査に入るため、4月から9月25日まで運行する予定でした。しかし、7月31日〜8月4日の豪雨により、磐越西線・喜多方〜山都間の濁川橋梁が被災し、喜多方〜野沢間が長期運休となったため、「SLばんえつ物語」の運行を7月31日で終了しました。

C57形180号機は、予定通り2022年11月10日大宮総合車両センターに入場して全般検査を実施中。一方、磐越西線の運休区間は2023年4月1日から運転を再開。「SLばんえつ物語」はC57形180号機の全検出場を待って、7月29日から復活することになりました。

●「SLばんえつ物語」の魅力

「SLばんえつ物語」は、新津〜会津若松間111kmを3時間16〜33分で運行しています。この区間は森と水とロマンの鉄道とも呼ばれていて、阿賀野川沿いの風光明媚な景色を楽しむことができます。

「SLばんえつ物語」を牽引するC57形180号機
「SLばんえつ物語」を牽引するC57形180号機

牽引機のC57形180号機は、D51形「デゴイチ」と共に日本を代表する大型SLで、美しい形態から「貴婦人」と呼ばれています。

「SLばんえつ物語」の客車編成
「SLばんえつ物語」の客車編成

「SLばんえつ物語」は客車も魅力的。12系を「SLばんえつ物語」専用に改造したレトロ客車を使用して、会津若松側から1〜7号車の7両編成を組成しています。

1号車はオコジョルーム・展望車です。オコジョとはイタチ科の動物で、東北・中部地方に生息しています。車内の2/3は子ども向けのプレイルーム。1/3は展望室となっています。

2・3・5・6号車は普通車指定席です。客室にはテーブルを備えたボックスシートを配置しています。

普通車のボックスシート
普通車のボックスシート

4号車はフリースペース・展望車です。フリースペースではイベントが開催されることがあります。展望室は床が高いハイデッキ構造で、窓は屋根部分まである大型サイズとなっています。

また、5号車には売店を設置。飲食品やグッズなどを販売しています。

新津側7号車はグリーン車で、まるでソファのような座り心地のリクライニングシートを1+2列で配置しています。最後尾には展望室を設置。3面が総ガラス張りとなっていて、眺望の良さは編成中ではダントツです。

●今後のJR東日本のSL列車に期待

「SLばんえつ物語」は7月29、30日、8月5、6、11、12、19、20、26、27日、9月2、3、9、10、16、17、23、24、30日に運転予定。時刻は以下の通りです。

往路:新津10時3分→会津若松13時36分
復路:会津若松15時27分→新津18時43分

往路は、東京7時4分発の上越新幹線「とき303号」と信越本線普通列車を乗り継いでも乗車可能な時間帯に運転しているので、東京からの日帰り往復旅行も可能です。

ここ数年、JR東日本のSL列車には変化がうかがえます。釜石線の「SL銀河」は6月11日(日)で運行を終了します。運行終了の理由は客車の老朽化と発表されています。

6月11日で運行を終了するC58形239号機牽引の「SL銀河」
6月11日で運行を終了するC58形239号機牽引の「SL銀河」

一方、牽引機のC58形239号機は2020〜2021年に全検(自動車でいう車検)を受けています。SLの全検周期は本来4年ですが、JR東日本では発足時にSLが在籍していなかったので、全検周期は電気機関車と同じ8年となっていて、C58形239号機は2029年まで使用することが可能。「SL銀河」運行終了後のC58形239号機の動向に注目です。

高崎のぐんま車両センターにはD51形498号機とC61形20号機を配置していて、上越線・信越本線を中心にSL列車を牽引しています。しかし、2022年、2023年はSL列車の運行が発表されず、後になって設定されるなど、やきもきさせる状況が続いていました。

2023年の春に「SLレトロぐんま水上」を牽引するD51形498号機
2023年の春に「SLレトロぐんま水上」を牽引するD51形498号機

幸いなことに、夏は7月7日〜9月30日の土休日を中心に「SL七夕みなかみ」「SLぐんまみなかみ」「SLぐんまよこかわ」の運転が発表されています。

ちなみにD51形498号機は2019〜2020年に全検を受けているので、当分は安泰だと思われます。一方C61形20号機が全検を受けたのは2017年なので、2025年までに全検を受ける必要があります。また、今年はまだC61形20号機を使用していないので、夏の運転に期待したいところです。

今年はまだ運転実績がないC61形20号機
今年はまだ運転実績がないC61形20号機

「SL銀河」の運行終了によって、JR東日本のSL列車の今後を心配していた人たちにとっては、「SLばんえつ物語」の運行再開と「SLぐんま」の夏季運行は朗報だと言えるでしょう。また、「SLばんえつ物語」は2024年で運行開始25周年を迎えるので、来年へ向けての期待も高まります。

2019年に運行開始20周年を迎えた「SLばんえつ物語」。来年の25周年に向けての活躍に期待です
2019年に運行開始20周年を迎えた「SLばんえつ物語」。来年の25周年に向けての活躍に期待です

今年の夏休みはJR東日本の大型SL達を見に、乗りに行ってみてはいかがでしょう。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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