■アルピーヌの故郷ディエップに集結
フランスはディエップという町に来ております。
ここは、ドーバ海峡にほど近いイギリス海峡に面している港町で、主な産業は漁業と観光、ホタテの水揚げでフランス随一の漁港であり、ムール貝をはじめとするシーフードが名物となっています。
そして、忘れてはならないのが、アルピーヌの本拠地であること。
アルピーヌの創設者となるジャン・レデレが、1950年代初頭、ルノーのディーラー経営時代に、ルノー4CV(日本では日のルノーとしてノックダウン生産されタクシーでよく使用されていました)をドライブし、モータースポーツで好成績を収めます。
ディエップは海辺の町ですが、くねくねした峠道で特に強かったことからブランド名に「高山」を意味するアルピーヌ(ALPINE)と名付け、セダンの4CVをベースにしたクーペボディの「A106」を1955年にリリース、自動車メーカーとしてスタートしました。
2+2クーペボディの「A108」などを経て、1962年には基本メカニズムを新しいルノーR8をベースとした「A110」(現在発売しているものでなく当時のもの)が登場することとなります。
「A110」はアルピーヌの名に違わず、山岳ラリーでますます成績を上げてゆき、1973年に開催された最初の世界ラリー選手権では、「A110 1800」が 1位、2位、3位、5位でフィニッシュ、初代WRCチャンプとなったのです。
その後、世界的な経済危機やオイルショック、他社の追い上げなどにより、1983年に「A310」、1991年に「A610」などをリリースするも、自動車メーカーのアルピーヌとしては1995年に生産を一旦終了します。そして、ルノーのスポーツ部門として、ルノー・スポールの開発、製造を請け負うこととなります。
ルノーとしてもアルピーヌブランドの復活を試み、2012年には、ルノー・アルピーヌA110-50を発表しますが、コンセプトカーのみでプロダクトモデルには至りませんでした。
そして2017年、現在のアルピーヌA110が発表され、多くのファンを再び生むことと成りました。
と、とても短く紹介すると上記のようなアルピーヌの歴史です。
今回、ディエップでは、アルピーヌのオーナーズ・クラブ「IDéA Association」主催によって、1973年WRC初代チャンピオンとなった記念として 「MEN、A TITLE、A LEGEND」と題したファンミーティングイベントが開催されています。
フランス国内外から新旧「A110」や「A310」「A610」を始め、さまざまなアルピーヌが手掛けたスペシャルモデルが勢ぞろいしています。
さらに、2023年5月9日に英国ブリストルで発表されたばかりの電動車両「A290_β」や、2022年7月のF1フランスGPで発表されたピュアEVスポーツカーの「A110 E-ternité」も展示され、ファン主催のイベントながら、メーカーであるアルピーヌもしっかりフォローしており、今後のアルピーヌは電動化への足がかりとなるブランドとなることがわかります。
ちなみに、今後のアルピーヌのネーミングのルールは、例えば「A290_β」では最初の数字「2」は車両のサイズ、「90」はSUV等に使用され、ピュアスポーツ車には「10」の番号が与えられるそうです。βはコンセプトであるためで、市販になると外れるとのことです。
さらに、水素燃料エンジン搭載のコンセプトカー「アルペングロー」は、今後ル・マンへ挑戦するハイパーカーのデザインを示唆しているとも思われます。
イベントは2023年5月19〜21日まで。もしお近くにいらっしゃったら、ぜひ足を運んでみてください。美味しいシーフードとたくさんのアルピーヌがお待ちしているはずです。
(クリッカー編集長 小林和久)