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■パノラマルーフ装備車のヘッドクリアランスに余裕を
シェードを開けた状態でガラスの透過(ON)⇔調光(OFF)が瞬時に切り替えられる「調光式パノラマルーフ」。
2020年6月に発売された現行のトヨタ・ハリアーにMOP(メーカーオプション)として設定され、さらに2023年3月にはレクサスブランドのBEV(電気自動車)「RZ450e」にも搭載されました。
これまでのパノラマルーフでは、オープンカーのような開放感が味わえる反面、日射しが強いシーンではサンシェードを閉じるしかなく、開放感が損なわれていました。
本稿で取り上げる「調光式パノラマルーフ」は、そうした課題を解決すべく開発されました。そんな同製品は一体どのような仕組みになっているのでしょうか?
●調光式ガラスの発祥は建材用
ご存知の方も多いかもしれませんが、調光式ガラスは建築分野でプライバシー保護を目的に開発されました。
開発元の九州ナノテック光学(株)によると、電気を流すことで透明⇔白濁状態をコントロールできる厚さ0.12mmレベルの高機能性フィルムシートをガラス面に貼り付けているそうです。
同フィルムは赤外線を65%、紫外線を99%以上カットする性能を保有。
非通電時は、ガラス内を通過する入射光を、フィルム内の液晶高分子により拡散・乱反射させることでガラス面を白濁化。不透明にすることで、プライバシーを保護します。
遮光度合い(透明度)をコントロールすることが可能で、遮熱性にも優れています。
逆に通電時には、バラバラな方向を向いているフィルム内の液晶高分子を、瞬時に一方向に揃えることで光を透過(透明化)させる仕組みで、これを自動車用ルーフガラスの遮光に利用したという訳です。
曲面ガラスへの設置やスリット/孔開け加工も可能で、青や黒などのカラー化にも対応しているそうです。
●調光式ガラスの需要は拡大傾向
BEVの場合、バッテリーのフロア下配置に伴い、乗員のヘッドクリアランス確保が課題となりますが、レクサスRZでは調光式ガラス採用を前提に、パノラマルーフのサンシェードを廃止。
遮熱機能付き液晶調光フィルムとガラスを組み合せることで、直射日光や紫外線が厳しい環境下でも、車室内を快適に保てるように工夫しています。
液晶調光フィルムは、低温から高温までの全領域で応答性能が優れており、これまで実現が難しかった遮熱機能も実現。ルーフのガラス部分を担うAGC社と共に、課題をクリアしています。
たとえば、同フィルムをサイドウインドウガラスに装着した場合、駐車中の車内プライバシー保護や日中の車内温度低減に活用できるかもしれません。
●スポーティなBEVの必須アイテムに
ちなみにBEVの場合、航続距離拡大と共にバッテリー搭載量も増大。フロア高が上昇する傾向にあります。
レクサスRZのようなスポーティモデルの場合、空気抵抗低減を目的にルーフを低くする必要があるため、ヘッドクリアランス確保に加え、圧迫感の低減が求められます。
サンシェードレスのパノラマルーフはその打開策として、ニーズが高まると予想され、それを可能にする調光式ガラスの需要は今後も拡大する可能性が高そうです。
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【関連リンク】
レクサスRZ
https://lexus.jp/models/rz/
トヨタ ハリアー
https://toyota.jp/harrier/
九州ナノテック光学
http://kyunano.jp/