マツダ「ベリーサ」発表。デミオより40万円も高い153万円で登場した異色の小さな高級車【今日は何の日?4月28日】

■高級さを追求したコンパクトカー

2005年にデビューしたベリーサ。コンパクトカーながら高級さをアピール
2005年にデビューしたベリーサ。コンパクトカーながら高級さをアピール

2004年(平成16年)4月28日、マツダは新型コンパクトカー「ベリーサ」を発表しました。

“シンプル・クオリティ・コンパクト”をキャッチフレーズに、コンパクトカーながら高級さを追求した異色のコンパクトカーで、12年間モデルチェンジすることなく販売されました。


●デミオをベースに高級感を演出したコンパクトカーのベリーサ

ベリーサのプラットフォームは、2代目デミオがベースとなるもの。そして“シック・クオリティ・コンパクト”をキャッチフレーズに、小さな高級車というフレコミで登場しました。

2002年にデビューした2代目デミオ「Sport」
2002年にデビューした2代目デミオ「Sport」

当時のコンパクトカーの代表格は、ホンダ「フィット」やトヨタ「ヴィッツ」、スズキ「スイフト」であり、それらは軽快な走りと広い室内空間が特徴でした。しかしベリーサは、それらの人気モデルとは一線を画して、コンパクトカーながらマツダの上級セダン「アテンザ」の部品を流用するなどして、質や上級感を優先させたのです。

搭載エンジンも2代目デミオと同じ1.5L直4 DOHCエンジンで、トランスミッションは4速ATのみ。駆動方式は基本FFですが、後輪をモーターで駆動する電気4WD“e-4WD”も設定されました。

また装備についても、アテンザ用シートやカードキー、HDDミュージックサーバー、オプション設定で本革シートを用意するなど、他のコンパクトカーとは比べ物にならない上質さを追求していたのです。

●ベースの2代目デミオは、“Zoom-Zoom”の象徴的なコンパクトカー

ベリーサのベースとなった2代目デミオは、マツダの経営危機を救った初代の後を継ぎ、マツダが進めた新しいブランドメッセージ“Zoom-Zoom”の象徴と位置付けられたクルマでした。Zoom-Zoomは、走る喜びを追求したマツダらしいクルマづくりを目指すという企業メッセージです。

ベリーサの豪華なインテリア
ベリーサの豪華なインテリア

ベリーサは、デミオと同じコンポーネントを使っていますが、基本的なコンセプトは大きく異なります。ベリーサのターゲットは、デミオに比べると年齢層が高くとられていました。そのため、いろいろと上質化させることによって、50歳代の夫婦までカバーできるように仕上げられました。

コンパクトカーとは思えないベリーサの快適な室内空間
コンパクトカーとは思えないベリーサの快適な室内空間

きびきびした俊敏な走りを重視したスポーティさが特徴のデミオに対して、ベリーサは走りよりも乗り心地を重視。大型のクロスメンバーを採用してボディ剛性を高め、欧州生産のモンロー製のショックアブソーバーを採用し、乗り心地を向上させながらも扱いやすいハンドリング性能を実現したのです。

●40万円の価格アップがユーザーには許容されず

異色のコンパクトカーとして登場したベリーサですが、ヒットとはならず、12年間デザインを変えることなく2015年に生産を終えました。

評価されなかった最大の理由は、車両価格の高さでしょうか。ローグレード同士で比べると、2代目デミオの112万円に対して、ベリーサは153万円と、その差は何と40万円。確かに、小さな上級車として随所に高級な装備が採用されていましたが、とは言えコンパクトカーなので、多くのユーザーはそれほど上級さを追い求めなかった、ということではないでしょう。


ベリーサは、コンパクトカーの常識を打ち破ることを狙ったチャレンジングなクルマでした。しかし、当時のコンパクトカーに求められていたのは、手頃な価格で室内が広く扱いやすいクルマ、その時流に跳ね返されたのかもしれません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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