6月11日で運行終了。東日本大震災の復興支援の宮沢賢治「銀河鉄道の夜」由来、釜石線を走る「SL銀河」を見るラストチャンス!

■東日本大震災の復興支援で運転を開始

釜石線花巻〜釜石間を運行している「SL銀河」は、残念ながら今年2023年6月11日(日)で運行を終了します。

6月11日で運行を終了する「SL銀河」
6月11日で運行を終了する「SL銀河」

「SL銀河」は、東日本大震災の復興支援のために2014年4月12日に運行を開始しました。列車名の由来は、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」。宮沢賢治は花巻出身の作家で、銀河鉄道のモデルは釜石線の前身である岩手軽便鉄道と言われています。

「SL銀河」をけん引するのは、C58形239号機。

「SL銀河」を牽引するC58 239
「SL銀河」を牽引するC58 239

C58 239は1940年に製造されて、名古屋・奈良地区で活躍後、1943〜1973年に東北地区で活躍。廃車後は、岩手県営運動公園内の交通公園で保存されていたものを動態復元しました。

客車は4両編成。外装は「銀河鉄道の夜」の世界観を表現して、さそり座・いて座・わし座・はくちょう座をシンボルとしています。また、車内は宮沢賢治が生きた大正・昭和の世界観をイメージしています。

「SL銀河」の客車は「銀河鉄道の夜」の世界観を表現
「SL銀河」の客車は「銀河鉄道の夜」の世界観を表現
「SL銀河」の車内は大正・昭和の世界観をイメージしたデザイン
「SL銀河」の車内は大正・昭和の世界観をイメージしたデザイン

実は、この客車はエンジンを搭載していて、自走することができる気動車のキハ141系です。気動車とした理由は、釜石線の急勾配区間でC58 239を後押しするためです。そのためキハ141系の運転台には運転士が乗務しています。

上り勾配でC58 239を後押し中のキハ141系
上り勾配でC58 239を後押し中のキハ141系

「SL銀河」の運行を終了する理由は、このキハ141系の老朽化とされています。キハ141系は1978〜1982年に製造された50系客車にエンジンを搭載して気動車化改造したのですが、車体の経年はまだ40年程度ですので少々残念です。

●「SL銀河」は見応えあり。ウォッチングポイントを紹介!

運行終了が発表されてから「SL銀河」は満席が続き、乗車するためにはキャンセルを狙うしかありません。一方、「SL銀河」は比較的煙を多く出してくれるので、見応えがあります。ここでは「SL銀河」を手軽にウォッチングできるポイントをいくつか紹介したいと思います。

「SL銀河」は、土曜日に往路の花巻→釜石間、日曜日に復路の釜石→花巻間を運行。走行距離90.2kmを往路は4時間10分、復路は4時間59分かけて走っています。また、ゴールデンウィーク中は5月3日に往路、4日に復路を運行します。途中、停車駅は新花巻・土沢・宮守・遠野・上有住・陸中大橋の4駅。この他に、足ヶ瀬駅では客扱いをしない運転停車を行って、仙人峠越え前後の点検を行っています。

煙を期待するなら、やはり各駅での発車シーンとなりますが、実は一番手軽に楽しめるのが新花巻駅で、往路は10時50分に、復路は15時8分に発車します。

新花巻駅を発車する「SL銀河」の往路。この日はヘッドマークなしの運転でした
新花巻駅を発車する「SL銀河」の往路。この日はヘッドマークなしの運転でした

新花巻駅は東北新幹線との乗換駅で、アクセスしやすいのが最大のメリット。また、釜石線は東北新幹線と直角に交差していて、線路の両脇には道路があります。特に、南側の道路は「SL銀河」との距離が近いのでオススメです。

「SL銀河」のスピードは速くないので、新花巻駅で出発を見送ってからでも楽に追い越すことができます。

人気撮影ポイントが多いのも、釜石線の魅力。国道283号線と並走している晴山〜宮守間には、クルマを駐めて「SL銀河」を見ることができるポイントがいくつもあります。ここでは、一番有名なめがね橋(宮守川橋梁)を紹介します。

めがね橋を渡る「SL銀河」は必見です
めがね橋を渡る「SL銀河」は必見です

めがね橋は宮守駅のすぐ東側、宮守川にかかるアーチ橋で、「銀河鉄道の夜」をイメージできる場所として人気があります。橋のすぐ北側には道の駅みやもりがあるほか、臨時駐車場も用意されています。通過時刻は往路が11時42分頃、復路は14時23分頃が目安。煙は往路の方が期待できます。

往路の「SL銀河」は、遠野駅に12時12分〜13時31分まで1時間19分停車するので、余裕で先回りすることができます。遠野〜釜石間では陸中大橋駅が人気です。ここには鉱山のホッパーが残っていて、雰囲気的にも高い人気があります。

鉱山のホッパーが残る陸中大橋駅を発車する「SL銀河」
鉱山のホッパーが残る陸中大橋駅を発車する「SL銀河」

遠野駅から陸中大橋駅までは、国道283号線で仙人峠を越えるルートと、東北横断自動車道(無料)で釜石西インターチェンジまで走って、国道283号線を戻るルートが選べます。仙人峠経由では途中、足ヶ瀬駅での発車シーンを狙うことが可能。充分な余裕を持って陸中大橋駅に着きたいなら、東北横断自動車道経由がオススメです。

往路の「SL銀河」は、釜石駅に15時10分に到着。C58 239は駅構内にある転車台で方向転換をした後、機関庫に入って夜を明かします。復路は釜石駅を9時57分に発車。

釜石駅で出発準備中の「SL銀河」をシープラザ釜石から見ることができます
釜石駅で出発準備中の「SL銀河」をシープラザ釜石から見ることができます

復路でも陸中大橋駅での発車シーン(10時40分)は人気が高く、トンネルの上から狙う人が大勢います。

遠野駅には11時46分に到着。「SL銀河」13時53分まで2時間7分も停車していて、その間にC58 239の給水と灰落としを行います。給水・灰落としは往路も行っていますが、復路の方が線路脇から見ることができるのでオススメです。

復路なら給水中のC58 239をゆっくり見ることができます
復路なら給水中のC58 239をゆっくり見ることができます

復路で特にオススメなのが、道の駅遠野風の丘付近。遠野駅を出発してしばらく走ったところですが、煙のサービスが期待できます。

道の駅遠野風の丘付近から見た「SL銀河」。煙が多めなのも人気の理由です
道の駅遠野風の丘付近から見た「SL銀河」。煙が多めなのもオススメしたい理由です

遠野駅を出発した「SL銀河」が、走ってくる様子を見ることができ、こちらも人気の高いスポットです。復路の通過時刻は13時58分頃が目安。ここで食事をしながら「SL銀河」を待つというのもいいと思います。

道の駅遠野風の丘からめがね橋への移動は、交通事情によっては間に合わない場合もあるので、ここでは宮守駅の停車時間を利用して国道を先回りし、土沢駅の発車直後を見ることをオススメします。ここは上り勾配になっているので煙が期待できます。

土沢駅を発車後、勾配を登るので煙が期待できます
土沢駅を発車後、勾配を登るので煙が期待できます

この後に新花巻駅の発車シーンを見るにはちょっとギリギリなので、新花巻の先で「SL銀河」を見送る方がいいかもしれません。

新花巻〜似内間の畑の中を走る「SL銀河」
新花巻〜似内間の畑の中を走る「SL銀河」

「SL銀河」の追いかけは、基本的に無理なくできるはずですが、GWでは渋滞も予想されます。また、運行終了が近いので、撮影者のクルマも増えているようです。ですから無理なスケジュールは組まずに、安全運転第一で追いかけるよう心がけてください。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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