スバル新型クロストレックに公道試乗して驚いた!「what3 words」が使えすぎる【週刊クルマのミライ】

■「クロストレック」は新しいスバルSUV像を表現する

水平対向エンジンとマイルドハイブリッドを組み合わせたe-BOXERを積む
水平対向エンジンとマイルドハイブリッドを組み合わせたe-BOXERを積む

2022年秋に発表された、スバルの新型クロスオーバーSUV「クロストレック」にようやく公道で乗ることができました。すでに1.2万台も受注しているという、この新しいSUVは公道でどんな顔を見せてくれるのでしょうか。

クロストレックの概要をざっと記すと、パワートレインは2.0L水平対向エンジンを中心としたマイルドハイブリッド「e-BOXER」だけの設定で、駆動方式はFWD(前輪駆動)とAWD(全輪駆動)。

グレード構成はTouringとLimitedとなり、後者には11.6インチの縦型画面を採用したインフォメーションディスプレイや18インチタイヤが標準装備となっています。

まず乗ることになった車両は上級グレードLimitedのAWD車で、ボディカラーはカタログの表紙などでも使われているオフショアブルー・パール。

受注の中身をみると、売れているグレードはLimited(75%)、選ばれている駆動方式はAWD(72%)、そして人気色はオフショアブルー・パール(36.9%)となっています。公道初試乗の個体は、まさに新型クロストレックの人気を凝縮したような仕様だったのです。

●国産車初の「what3 words」を音声コントロール

陸地だけでなく海上も含めて世界中を3m四方に区切り、それぞれに3ワードを割り当てたイギリス生まれの位置情報ソリューション
陸地だけでなく海上も含めて世界中を3m四方に区切り、それぞれに3ワードを割り当てたイギリス生まれの位置情報ソリューション

それはともかく、クロストレックのコクピットに収まって感じたのは、非常に未来的な印象に仕上がっていること。最大の理由は、ハンドリングの味つけにあります。

最低地上高200mmを確保したクロスオーバーSUV、かつ悪路走破性や乗り心地に貢献すべく、サスペンションはストロークたっぷりのシャシーセッティングになっていますから、峠道などでのハンドリングに関しては、多少の妥協があるのかと思いきや、まったくネガティブな印象はありません。

ハンドル操作からの入力と、電動モーターによるアシストの入力経路を分離した2ピニオンタイプの電動パワーステアリングを採用したこともあいまって、非常に素直にクルマが動いてくれます。いい意味で、出来のいいシミュレーターのような無駄やラグのない挙動はSUVとは思えないレベル。

新型クロストレックのハードウェアを冷静に分析すれば、基本的なアーキテクチャーは従来モデルと同じまま、全体にブラッシュアップしたという設計なのですが、完全に作り直したかのような新しさがあるのです。

そうした未来感は純正カーナビの使い勝手でも実感することができました。

2013年にロンドンで設立された「what3 words」は世界標準を目指すサービス
2013年にロンドンで設立された「what3 words」は世界標準を目指すサービス

クロストレックの純正ナビは、日本車として初めて「what3 words」に対応、完全音声入力にて使える仕様となっています。

「what3 words」というのは、イギリス・ロンドン生まれの位置情報サービスで、世界中を3m四方に区切り、それぞれに3つのキーワードを当てはめることで、キーワードだけで場所を特定できるようにしたソリューションです。キーワードについては、AIによって自動的に割り当てられているので、その場所に関連するものというわけではありません。

実際、この機能が役立つのは住所がないような場所です。たとえば、河原でバーベキューをやっているときに住所で場所を伝えるのは不可能ですが、「what3 words」を使えばほぼピンポイントで集合場所を共有できます。まさに、クロストレックの使い方にぴったりの位置情報サービスといえるでしょう。

今回の試乗に合わせて、筆者のタブレットに「what3 words」のアプリをインストール、目的地を示す3ワードをあらかじめ調べておきました。

ちなみにスバル本社前の普段はクルマを展示しているスペースの3ワードは「むちゃ。あまい。でいり」だった
ちなみにスバル本社前の普段はクルマを展示しているスペースの3ワードは「むちゃ。あまい。でいり」だった

そうして、クロストレックのステアリングにある音声入力ボタンを押して、「ワットスリーワード」と発声すれば、ナビが3ワードの入力を待つ状態になります、

つづけて、アプリで調べておいた目的地の3ワードを言えば、目的地候補が出てくる(発声の癖を考慮していくつかの候補を挙げるということです)といった流れ。そのまま目的地設定までシームレスに音声入力で行えるのは、本当に未来的な体験でした。

クロストレックを購入するのであれば、「what3 words」が活用できる純正ナビを選ぶことを是非とも検討してほしいと思うほどのエクスペリエンスが、そこにはあります。

他のスバル車では、北米仕様のアウトバックに「what3 words」対応ナビが採用されているということです。今後、登場するスバル車がどんどん、このサービスに対応していくことは間違いないでしょう。

●スバルSUV初のFWDはどうだ?

クロストレックは非常によくできたシミュレーションのようなハンドリングが味わえる
クロストレックは非常によくできたシミュレーションのようなハンドリングが味わえる

クロストレックでの注目ポイントといえば、スバルのクロスオーバーSUVとして珍しいFWDが設定されていることです。

水平対向エンジンから後輪デファレンシャルまで、左右対称にメカニズムを配置したシンメトリカルAWDがスバルのコアテクノロジーですから、FWDというのは熱心なファンからすると邪道と感じてしまうかもしれませんが、その走りはどうだったのでしょうか。

いろいろな見方はあるでしょうが、筆者個人の印象としては「燃費と値段以外はAWDのほうが優っている」というもの。FWDはAWDより40kgほど軽いのですが、ハンドリングにおいてそのメリットを感じられる部分はほとんどありませんでした。

AWD(全輪駆動)は全体的な落ち着きがある乗り味。段差などでの乗り心地はどちらの駆動方式でも快適だ
AWD(全輪駆動)は全体的な落ち着きがある乗り味。段差などでの乗り心地はどちらの駆動方式でも快適だ

むしろ、後輪の駆動がないことによるスタビリティの違いが、ネガティブな方向で気になります。アイサイトを利用して高速道路をまっすぐ走っているときには、スタビリティの差は感じられないのですが、ひとたびコーナーに入ると、FWDは後輪の横剛性が足りない印象を受けたのです。

FWDは、ハンドリングのキビキビ感においては、AWDに優っているという評価もできるかもしれません。このあたりは、好みで選べばいいでしょうが、駆動方式による印象は意外に異なるので、購入時にはどちらのキャラが好みなのか、じっくり検討して欲しいと思います。

今回の試乗においてメーター表示で確認した実燃費は、AWDがWLTCモードの80%程度、FWDは110%程度といったところでした。走行したルートが異なるので、そのまま比較はできませんが、諸元によると、駆動方式によるカタログ燃費の差は少ないクロストレックながら、リアルワールドではそれなりに駆動方式による燃費差がつくのかもしれません。

●新型クロストレックの主要諸元

FWD(前輪駆動)はドライバー操作に対するアクションが元気。それは後輪の横剛性の低さから来るものという印象もある
FWD(前輪駆動)はドライバー操作に対するアクションが元気。それは後輪の横剛性の低さから来るものという印象もある

●クロストレックLimited(AWD)
車両型式:5AA-GUE
全長:4480mm
全幅:1800mm
全高:1580mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1620kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB20
エンジン形式:水平対向4気筒ガソリン直噴
総排気量:1995cc
最高出力:107kW(145PS)/6000rpm
最大トルク:188Nm(19.2kg-m)/4000rpm
モーター型式:MA1
モーター形式:交流同期電動機
最高出力:10kW(13.6PS)
最大トルク:65Nm(6.6kg-m)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
変速装置:CVT
燃料消費率:15.8km/L (WLTCモード)
タイヤサイズ:225/55R18 98V
メーカー希望小売価格:3,289,000円

●クロストレックLimited(FWD)
車両型式:5AA-GUD
全長:4480mm
全幅:1800mm
全高:1580mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1580kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB20
エンジン形式:水平対向4気筒ガソリン直噴
総排気量:1995cc
最高出力:107kW(145PS)/6000rpm
最大トルク:188Nm(19.2kg-m)/4000rpm
モーター型式:MA1
モーター形式:交流同期電動機
最高出力:10kW(13.6PS)
最大トルク:65Nm(6.6kg-m)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
変速装置:CVT
燃料消費率:16.4km/L (WLTCモード)
タイヤサイズ:225/55R18 98V
メーカー希望小売価格:3,069,000円

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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