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■窓に面した車いすスペースも登場
東海道・山陽新幹線に導入が進められているN700Sは、2021年4月に登場した第13編成(J13編成)でマイナーチェンジを実施して、車いすスペースを従来の2ヵ所から6ヵ所に増やしました。
マイチェン編成は、車いすスペース部分の床に四角い枠とアイコンを設置し、視覚的にも分かりやすくなっています。
車いすスペースのうち、海側(太平洋側)11〜13番AB席の横にある3ヵ所は、隣の11〜13番B席とセットで購入。B席は車いすから移乗しやすいように、肘掛けが跳ね上げ式となっています。また、車いすを固定するベルトを装備しています。なお同伴者は11〜13A席を購入して並んで座ることができます。
山側(富士山側)の車いすスペースには移乗席がなく、車いすがそのまま窓側席となります。
座席番号は11〜13番E席となっています。11〜13E席の窓下にはコンセントを設置。また11・13E席はテーブルも利用することもできます。
●バリアフリー法の改正で増えた車いすスペース
N700Sが登場する以前の東海道・山陽新幹線用車両、N700A(N700系)・700系・500系・300系の車いすスペースは1ヵ所だけで、床には枠やアイコンもありませんでした。
N700Sも開発テストのための確認試験車を製造した2018年当時は、従来通り車いすスペースを1ヵ所としていました。しかし、国土交通省のバリアフリー法に基づいて車いすスペースを1編成あたり2ヵ所とするため、車内を改装してレイアウトを検討しました。
この試験結果を反映させて、2020年7月にデビューしたN700S量産車は車いすスペースを2ヵ所としました。
N700S初期車では、まだ車いすスペースの枠やアイコンはありません。
しかし、N700S量産車がデビューする前の2019年12月から、国土交通省は新幹線のバリアフリー検討会を開き、2020年8月には「新幹線の新たなバリアフリー対策」をとりまとめ、10月にバリアフリー基準を改正しました。
新しい基準では、2021年7月以降に営業運転を開始する新幹線の車いすスペースを増やすことが義務づけられました。さらに、車窓を楽しめる窓際のスペースの設置も義務づけました。
車いすスペースの広さの規定は少々複雑です。基本は長さ1300mm×幅750mm以上となっていますが、2台分縦列する場合の長さは、2台分で2400mm以上(1300mm+1100mmまたは1200mm×2)とすることができます。
また、ストレッチャータイプを2台置けるスペースの確保を義務づけられました。1台分のスペースでは長さ2000mm以上が必要となります。ただし、基本サイズ2台分のスペースに1台を置くことでも義務をクリアすることができるようです。
●座席数に応じて車いすスペースの数を規定
車いすスペースの数は新幹線の座席数によって定められ、東海道・山陽新幹線N700Sのような座席数1001名の車両は6ヵ所以上となりました。N700Sの車いすスペースがデビュー後1年弱で3倍になった理由はこれです。
また、北海道・東北新幹線E5系や、上越・北陸新幹線E7系・W7系など、座席数500〜1000名の車両の増備車は4ヵ所以上、山形新幹線E8系や西九州新幹線N700Sなど500名未満の車両は3ヵ所以上が義務づけとなりました。
●在来線特急車両も車いすスペース増設へ
新幹線の車いすスペース増強に対し、在来線特急車両の車いすスペースの数は現在、通勤車両と同じ規定となっていて、1列車に原則2ヵ所以上(3両編成以下は1ヵ所以上)となっています。
在来線特急車両の車いすスペースについても、国土交通省は2024年4月以降、原則3ヵ所以上とする方針で、新幹線と同様、500席未満は3ヵ所以上、500席以上〜1000席未満を4ヵ所以上、1000席以上を6ヵ所以上としますが、2両編成や100席未満の車両は2ヵ所とすることができるとしています。
在来線の特急車両で2024年4月以降にデビューするのは、JR西日本の特急「やくも」用新型車両273系で、新規定適用第1号となるかもしれません。
鉄道のバリアフリー設備は車両に限らず、駅設備も年々充実しています。しかし、地方路線を中心にバリアフリー対応が進んでいない路線もあり、今後は国や自治体の支援も含めた改善が必要となるかもしれません。
(ぬまっち)