■eKワゴンの駐車のしやすさを見てみよう
リアル試乗・eKワゴンの第7回は車庫入れ編。
ekシリーズの中の標準型・eKワゴンの駐車、車庫入れのしやすさを見ていきます。
はたしてどうなのか?
●斜めのウエストラインに惑わされるな
「はたしてどうなのか?」なんて白々しく書きましたが、前々回のアルトや前回のアトレーが入った車庫なら、全長、全幅はそのままに、全高が両車の間にあるeKワゴンも入るに決まっています。やる前から答えはわかっているのだ。
で、いつもの車庫でやってみたらどうか。
ちゃんと入りました。当然だ。
車庫寸法は写真に掲げているとおりで、5ナンバーサイズ(全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下)の車両収容が前提の広さなので、eKワゴンが入らないはずはありません。
そのようすは次の写真のとおり。
ただ、サイドのウエストライン(サイドガラス下端)が高めであることが左サイドの、そのライン後端のキックアップが、斜め後方の視界を、それぞれ阻害しています。
はっきりいってこれはデザイン遊び以外の何ものでもなく、使って便利な点はひとつもありません。ついでにいうと、リヤピラーの黒いパネルだって何の役割もなく貼っつけてあるだけで、音の侵入を抑えながら室内気を排出するダクトにするとか、左側なら燃料給油口に充てるなど、ただの飾りと見せかけておきながら何かの意味が与えられていれば拍手ものでした。
話もどして、車両サイドから眺めたとき、せめて全高の半分くらいはガラスにしてほしいところで、先回のアトレーのような1BOX型なら仕方ないにしろ、ウエストラインから下の死角が増え、ポールなどを見落とす可能性が出てきます。
大きい声じゃいえませんが、ハンドルに手を添えるとき、肘をかけやすい高さにあるウエストラインのクルマは総じてサイド視界がよく、着座高さとの関係にもよりますが、運転席から見て助手席ドア向こうのポールやガードレールの見落としが少なくなるものです。
そのウエストラインが斜めなのは、運転が不慣れなひとにはまっすぐ駐車をさせにくくするでしょう。キックアップを残すにしても、いまのドアミラー位置からせめてキックアップ直前までのラインだけでも水平であれば周囲の障害物が目に入り、駐車線や壁などを目安にまっすぐ停められるようにもなるのに…ここをスラントさせたいなら、ガラスすみっこに材質などの刻印を入れるのと同じ手法で、地面と平行なラインをついでに1本、ドアガラス下端に入れてほしいといつも思うのですが、筆者が過去、助手席ガラスに「盗難警報装置装着車」のシールをたった1枚貼っただけで車検をパスできないといわれたことがあるほどなので法規を変えなきゃだめか。
水平なウエストラインは自宅でよりもスーパーなどの駐車場で重宝し、右でも左でも目に入った駐車線とラインが平行になれば、まっすぐに停められる道理。「おれ自身が平衡センサーよ」という自信家は別に、このeKワゴンが、運転初心者や駐車操作が苦手なひとにも気になるエントリー軽であるだけに、そのあたり、何か配慮があってもよかったのではと思うわけです。
いっぽう、いいところもあって、後ろを向いてありがたいのは、後席ヘッドレスト高さが控えめで、かつ下部をバックレストとややラップさせ、定位置にあるときの後方視界低下を最小限にとどめようと努めていることです。
がんじがらめの規制は現在、乗員の頭部保護にまでおよんでおり、いまは前席後席、「何もここまでしなくとも」と思うほどデカいサイズのヘッドレストになっています。
無配慮のクルマだと、前席用が気ィ悪くするほど、天井に向かってそそり立つようなヘッドレストのクルマがありますが、そんなクルマに限ってスタイル優先でリヤガラスが小さく、悪い方に相乗効果が現れ、後ろがほとんど見えないクルマも少なくありません。
車庫入れの話に戻りますが、正面ないし後面から見たとき、1BOXのようにサイドが直立しておらず、ウエストラインから上はわずかに内側キャンバーがついているので、高めの全高でも周囲の設置物にボディが接触するようなミスを犯すことは少ないと思われます。
もうひとつ、他の軽自動車はハンドルまわし単位角度あたりのタイヤ切れ角が少ないため、ついハンドルロックまで回してしまってクルマを必要以上に小さくまわしがちになります。ヘタするとそのせいでリヤランプ周辺を何かにぶつけかねない。全体的にいまの軽自動車は、モーター負担低減でもともとの操舵力を軽くしたいのか、ロックtoロックを多くしすぎていると思うのですが、eKワゴンはハンドルのロックtoロックが片側1回転と265度と順当で、扱いやすいのがいい点です。
●マルチアラウンドモニター(移動物検知機能付)
試乗車にはマルチアラウンドモニターが装備されていました。
ナビ画面にではなく、デジタルルームミラーの左1/2弱ほどのエリアに車両周囲の様子を映し出すアラウンドモニターは、「先進安全パッケージ(PKG1)」としてGにのみ9万3500円(税込み)にて工場オプション。
ただし、このクルマにはデンソーテン製イクリプスブランドのナビがあり、こちらにもマルチモニター画面が映るようになっていました。つまりこのクルマの場合、車両前後のようすを2か所で中継するということになっていますが、本稿ではやはりデジタルルームミラー画面にて話を進めていきます。
マルチアラウンドモニター用のカメラは車両周囲に散りばめられており、サイド用はドアミラー筐体下面に、フロント用は、このクルマでいうならライセンスプレート「葛飾」の「葛」の上位置に、リヤはライセンスプレート上辺左端上に設置されています。
マルチアラウンドモニター用4つに、マルチモニター用とは別の、デジタルルームミラー用にひとつ、e-Assist用がひとつ…eKワゴンの全身には計6つのカメラが仕込まれているわけです。
他に、e-Assist編で説明した前後バンパーのソナーセンサーも忘れてはいけません。ここではセンサーがキャッチした、静止した障害物を検知した際、その報知をブザー吹鳴と画面表示するのに用いられます。
スイッチはミラー本体下部にあり、中央向こう側にあるレバーを手前側に引くとデジタルミラー起動、それまで後方を映していたのがミラーから液晶画面に変わります。これがデジタルミラーモードで、このときレバー手前に並ぶ3つのうちの中央のボタンを押すか、シフトをRにするとマルチアラウンドモニターがミラー左に映るわけです。
画面は次の5とおり。
1.トップビュー+リヤビュー
車両上面視を左に、リヤビューを右に表示するモードです。各面右上の移動物検知機能作動状態アイコン(MODマーク)は、青が機能作動、白が作動しないことを示します。これは他の表示モードでも同じです。
2.サイドブラインドビュー+リヤビュー
左に車両左側面を、右にリヤビューを表示するモード。
3.リヤビュー(全画面表示)
リヤビューを全画面大写しにするモードです。
4.トップビュー+フロントビュー
左にトップビュー、右にフロントビューの表示モード。うっかりハンドルを真っ直ぐにした状態で撮ってしまったのでここには表示されていませんが(ごめんね)、このフロントビューモードでも予想進路線は表示されます。 というわけで、リヤであれフロントであれ、表示内容は同じことになります。
5.サイドブラインドビュー+フロントビュー
左に車両左側面、右にフロントビューのモード。助手席ドアに隠れた子どもないしポールなどをしっかり把握するなら、上記トップ+フロントよりはこちらサイドブラインド+フロントに限ります。
海野ユキさんの姿がよくわかりますな。車両外側から見たときのユキさんはこのようになっています。
機能や画面レイアウトは他のクルマと何ら変わりありません。
3色の距離目安線のうち、赤は車両から0.5m、黄色が1m、緑が2mと3mを示しますが、どうせなら設定で数字も表示/非表示できるようにしてほしいのと、バックドアの開閉可能限界線を1本表示してほしい…表示がナビ画面からルームミラーに移動しても機能や画面レイアウトは変わらないだけに、要望点も変わりません。
このアラウンドモニターがルームミラー表示されると必然的に全体が小さくなるわけですが、想像していたほど見にくい印象はありませんでした。ナビ画面のほうが大きく、見やすいには違いありませんが、ナビは要らないけどバックモニターはほしいというひとにはいいと思います。ナビが要るほど遠出はしないというひとも少なくない(と思う)、eKワゴンのようなエントリー軽のユーザーには適しているかも知れません。
写真は、後ろのクルマに対してひとがバックドアを開閉するスペースを残してeKワゴンを停めたときの様子を示すものです。
車両最後端に対し、ややバックドアが傾斜していてヒンジが室内側に寄っているので、直立したバックドアの場合ほど後ろに張り出しはしませんが、それでも後ろのクルマとの距離はある程度とって置く必要があります。
このときのバックドアの張り出し量は、筆者実測700mm、ひとのスペースを入れての後ろ車両との距離は1243mmでした。
車庫や駐車場によっては、1200mmほどのスペースがとれないことが多いものです。開発主体が日産だったとしても、ミニカトッポを思い出し、ガラスハッチにしてくれるとより利便性が上がるでしょう。上半分だけでも開けられようものなら、リヤシートスライドをバックドア側からでも行える肩口スライドレバーの意義がより向上しようというものです。マイナーチェンジでできないかな。
というわけで、話はここまで。
次回はeKワゴンの「ユーティリティ編」です。
(文:山口尚志 モデル:海野ユキ 写真:山口尚志/三菱自動車工業/モーターファン・アーカイブ)
【試乗車主要諸元】
■三菱eKワゴン G〔5BA-B36W型・2022(令和4)年型・4WD・CVT・スターリングシルバーメタリック〕
●全長×全幅×全高:3395×1475×1670mm ●ホイールベース:2495mm ●トレッド 前/後:1300/1290mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:BR06型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:659cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:52ps/6400rpm ●最大トルク:6.1kgm/3600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射 ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/22.7/21.5km/L ●JC08燃料消費率:24.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トルクアームリンク式3リンク ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:154万0000円(消費税込み)