ワーゲンバスがEVになって2024年に帰ってくる【週刊クルマのミライ】

■公式見解として「タイプ2」のEV版が「ID. Buzz」

いわゆるミニバンスタイルだが空気抵抗に関するCd値は0.29と非常に優秀
いわゆるミニバンスタイルだが空気抵抗に関するCd値は0.29と非常に優秀

フォルクスワーゲン車が日本に正規輸入されるようになって70周年という節目の2023年、様々な特別仕様車によってアニバーサリーを祝うということです。

最大のトピックといえるのが、話題の電気自動車「ID. Buzz」が正規導入されることでしょう。上陸予定は2024年末となることも正式に発表されました。

2022年にワールドプレミアされたID. Buzzは、日本でも「ワーゲンバス」というニックネームで愛されてきた「タイプ2」がEVバージョンとなって甦ったといえるモデルです。

スタイルとしてはノーズの短いスライドドア車ですから、オーソドックスなミニバンフォルムといえるでしょう。

ただしオリジナルのタイプ2に敬意を表してか、リヤ駆動としているのは日本的なミニバンとはひと味違うところかもしれません。

●オリジナルのワーゲンバスはキャブオーバーだった

オリジナルの「タイプ2」はキャブオーバースタイル。リヤに空冷エンジンを積んでいた
オリジナルの「タイプ2」はキャブオーバースタイル。リヤに空冷エンジンを積んでいた

フォルクスワーゲン・タイプ2がEVになって復活という商品企画については、ユーザーレベルで感じていることではなく、公式見解といえるものです。

ただしタイプ2はフロントタイヤの上に運転席を置くキャブオーバースタイルでしたが、見ての通りID. Buzzはフロントタイヤの後ろに運転席があります。

パッケージとしては、まったく異なっているのです。

最高出力150kW、最大トルク310Nmのモーターでリヤタイヤを駆動する
最高出力150kW、最大トルク310Nmのモーターでリヤタイヤを駆動する

それでもID. Buzzにタイプ2の世界を感じるのはフラットなルーフラインにタイプ2へのオマージュが込められているからでしょう。

逆にいえば、それ以外はまったく異なるのに”ワーゲンバス”の世界観を再現しているのはデザインの妙といえます。

そしてEV時代に、ヘリテージを活かすことができるのは伝統ある既存メーカーならではのブランド戦略といえそう。

フォルクスワーゲンのID. Buzzに限らず、フィアットの500eも同様のヘリテージを利用した商品企画といえますが、このあたり欧州メーカーのトレンドとなっているのであれば、他のヘリテージモデルもEVになって復活するのかもしれません。

●ボディサイズは幅の広さが気になるかも

キャビンの雰囲気も外観同様にポップ。バッテリー総電力量はネット77kWh(グロス82kWh)となる
キャビンの雰囲気も外観同様にポップ。バッテリー総電力量はネット77kWh(グロス82kWh)となる

ID.Buzzのボディ寸法(海外仕様)は次のようになっています。

全長:4712mm
全幅:1985mm
全高:1936mm
ホイールベース:2989mm

全長に対して全幅が広くなっていることで、写真でみると凝縮感もありますが、意外にボディサイズは大きいのでした。

日本で使うことを考えると、2mに迫る全幅は取り回しの点で気になるかもしれません。ちなみに海外仕様のミラーtoミラーは2212mm、これはトヨタ・アルファードと同等の寸法といえます。

海外では「ID. Buzz Cargo」というバン仕様もラインナップされている
海外では「ID. Buzz Cargo」というバン仕様もラインナップされている

日本仕様については、スペックや価格、グレード構成など詳細情報は未公表です。

海外でのバリエーションを見る限り、2列シート仕様とラゲッジとキャビンの間に仕切りを入れたカーゴ仕様が用意されていますが、商用バン仕様が日本に正規導入されることはないでしょう。

前述したボディサイズの余裕を考えると、日本向けには3列シートが設定されると、一大ブームになりそうな気もしますが、はたしてどうなるのでしょうか。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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