トヨタ「セラ」登場。日本初の跳ね上げ式「バタフライドア」採用【今日は何の日?3月8日】

■バタフライドアで注目された小型スペシャリティカー

「SERAのすべて」(ニューモデル速報すべてシリーズ第82弾・1994年4月三栄書房刊)の表紙(但馬治:撮影)
「SERAのすべて」(ニューモデル速報すべてシリーズ第82弾・1994年4月三栄書房刊)の表紙(但馬治:撮影)

1990(平成2)年3月8日、トヨタからバタフライドアを採用した「セラ」がデビューしました。

セラは、「スターレット」をベースにガラスを多用した丸みを帯びたボディに仕立て上げられ、国産量産車初のバタフライドアを採用するなど、その斬新なスタイルは大きな注目を集めました。

●夢のあるクルマとして登場するもバブル崩壊であえなく低迷

1990年にデビューしたセラ。最大の特徴は、バタフライドアの採用
1990年にデビューしたセラ。最大の特徴は、バタフライドアの採用

セラの原型であるコンセプトカー「AXV-II」は、トヨタの若い技術者が夢のあるクルマを目指して開発した小型スペシャリティカーで、1987年の東京モーターショーで公開され、観衆の大きな注目を集めました。

球面ガラスが多用されているセラ
球面ガラスが多用されているセラ

市販化されたセラは、「スターレット」をベースにガラスを多用した丸みを帯びたボディに国産量産車初のバタフライドアを採用。また、インテリアについても“スーパーライブサウンドシステム”や専用の内装を採用するなど、すべてにおいて個性的で斬新さが溢れているのが特徴でした。

1.5L DOHCのスターレット用をロングストローク化した低中速トルク重視のエンジンでしたが、バタフライドアやガラスを多用した結果、車両が重くなってスタイリングの割に走りは評価されませんでした。

セラ特有のエクステリア
セラ特有のエクステリア

ユニークで豪華な仕様ながらセラの価格はベースグレードで160万円とリーズナブルに設定され、初年度は1万台近く販売。セラの魅力に飛びつく動きはあったものの、その後の販売は急下降して1995年あえなく生産終了となりました。

●初めてガルウイングドアを採用したのは、メルセデス・ベンツ300SL

セラの跳ね上げ式ドアは、バタフライドアと呼ばれましたが、こういったドアは広く「ガルウイング」と呼ぶことが多いものです。

ガル(カモメ)ウイング(翼)は、ドアを開けたときのシルエットが、カモメが翼を広げたように見えることから名付けられました。ガルウイングを最初に採用したのは、1955年に登場したメルセデス・ベンツ「300SL」、日本ではセラが最初ですが、他にも採用例があります。

1992年にデビューしたマツダのオートザムAZ-1。ガルウイングのMRスポーツ
1992年にデビューしたマツダのオートザムAZ-1。ガルウイングのMRスポーツ

1992年に軽自動車で唯一ガルウイングを採用したマツダの「オートザムAZ-1」、その後も三菱自動車の「スタリオン・ガルウイング」、スポーツモデルではなく移動販売車などに使われたダイハツ「ミラ・ミチート」などが採用しました。

また、比較的最近では2016年にテスラの「モデルX」が、後部席に“ファルコンウィングドア”と呼ばれるガルウイングを採用して、注目を集めました。

ガルウイングの魅力は、なんといってもドアを開けたときのカッコよさですが、横のスペースがなくても開閉できるメリットがあります。一方で、構造が複雑で重くなる、当然コストも上がるというデメリットがあります。

●跳ね上げ式ドアには、厳密にはガルウイングの他にシザードアとバタフライドアがある

ランボルギーニ・カウンタックのガルウィングドア(厳密に言うと、シザードア)
ランボルギーニ・カウンタックのガルウイングドア(厳密に言うと、シザードア)

ランボルギーニ・カウンタックも、ガルウイングのスーパーカーとして有名ですが、厳密にはガルウイングではなく、シザードア(シザーズドア)と呼ばれます。

ガルウイングドアは、車体に平行な軸を支点に翼のように開くドアを指し、カウンタックのように車体側面から垂直に開くような、ちょうどハサミ(シザー)が開いた時のような開き方をするから、シザードアというのです。

ただし、厳密に分けると混乱するので、これらを含めて跳ね上げ式ドア全般をガルウイングドアと呼ぶ方が一般的のようです。


セラを含めて日本のガルウイング車は、ほとんどがバブル期に登場したバブルの賜物です。実用性が重視される現在、採用するにはコストも重量も増える難題があるガルウイングですが、たまらない魅力もありますね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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