兵庫県神戸市の和田岬線から3月18日に勇退する「103系」ってどんな電車?

■日本で史上最大の新造両数を誇る通勤型電車

●103系は国鉄通勤型電車の決定版

JR西日本は2023年3月18日(土)のダイヤ改正で、兵庫県神戸市内の和田岬線を運行している103系電車の勇退を発表しました。

和田岬線を運行している103系
和田岬線を運行している103系
勇退記念ヘッドマークのデザイン(JR西日本プレスリリースより)
勇退記念ヘッドマークのデザイン(JR西日本プレスリリースより)

JR西日本は103系の勇退を記念して3月1日〜18日に記念ヘッドマークを掲出します。また、車内や兵庫駅にポスターを掲出します。

運行最終日の3月18日の9時40分頃に兵庫駅で103系の出発式を開催予定です。103系の最終列車の運転時刻は、混雑を防ぐため非公表となっています。

本来の性能を発揮できなかった101系
本来の性能を発揮できなかった101系

103系は国鉄時代の1963〜1984年に製造された通勤型電車です。

1957年に登場した国鉄通勤型電車101系は高加減速性能を発揮するために全電動車方式を採用したものの、変電所の容量不足により全電動車方式を断念せざるを得ず、本来の性能が発揮できませんでした。

京都鉄道博物館で保存されているクハ103-1。山手線→京浜東北線→大阪環状線→阪和線で活躍しました
京都鉄道博物館で保存されているクハ103-1。山手線→京浜東北線→大阪環状線→阪和線で活躍しました

そこで国鉄は、電動車と付随車の比率1:1で、101系と同等の加速性能と101系を上回る減速性能を持たせた通勤型電車として103系を開発しました。

電動車を減らすことで経済的に優れた電車となり、さらに高減速力性能は山手線のような駅間距離が短い路線には特に有効でした。その後は駅間距離が長い路線にも103系が続々と投入され、国鉄通勤型電車の決定版となりました。

103系は首都圏と関西の主要通勤路線のほとんどに進出。そのほか、仙台地区の仙石線、名古屋地区の中央本線、兵庫の加古川線・播但線、岡山・広島地区、そして九州の筑肥線と、各地で活躍しました。

103系の新造車は3447両にもおよび、これは国内の電車としては最大の両数を誇ります。製造期間も長かったためマイナーチェンジを数回行っていて、先頭車で見分けた場合、試作車、初期車、試作冷房車、第1次改良車、新製冷房車、高運転台車に大別することができました。

そのほか、他形式からの改造車も存在しました。

さらに、地下鉄千代田線直通用の1000番代、地下鉄東西線直通用の1200番代、福岡市地下鉄直通用の1500番代も製造されました。

そんな103系も老朽化によって引退が進み、JR東海車は2001年に全廃されました。JR東日本車は2005年までに首都圏から姿を消し、最後まで残っていた仙石線の車両も2009年に引退して、全廃となりました。

JR西日本では大阪環状線・阪和線・関西本線などの主要通勤路線に長い間103系が残っていましたが、2017〜2018年に相次いで淘汰されました。2022年には奈良線の車両も引退し、主要通勤路線からは姿を消しました。

●残る103系はどうなる?

和田岬線の103系が引退した後、103系が残るのはJR西日本播但線・加古川線と、JR九州筑肥線の3路線となります。

播但線用103系3500番代
播但線用103系3500番代

播但線は1998年3月14日の姫路〜寺前間の電化に合わせて、103系3500番代2両編成9本を投入しました。103系3500番代は、初期形の先頭車+中間車ユニットの中間車に運転台を設置したもの。新設した運転台と前面デザインは既存車に準じていて、和田岬線の103系無き後、原型デザインの面影を残す貴重な存在となりそうです。

加古川線用103系3550番代
加古川線用103系3550番代

加古川線は2004年12月19日の全線電化の際に、103系3550番代2両編成8本を投入しました。103系3550番代は、新製冷房車の中間車ユニットに運転台を設置改造した車両です。

増結時に編成間を通り抜けることができるように運転台は貫通構造とし、前面デザインはオリジナルとなりました。そのため、播但線用の103系3500番代よりも注目度が今ひとつですが、走行音は紛れもない103系です。

筑肥線用103系1500番代
筑肥線用103系1500番代

筑肥線には、1982年の電化と福岡市地下鉄への直通運転のため、103系1500番代6両編成9本を新造しました。地下鉄乗り入れ用車両は、前面非常口が義務づけられていたため、同時期に登場した105系に準じた前面デザインが採用されたので、従来の103系とイメージは異なりますが、純粋な103系新造車です。

JR九州発足後、4本の中間車に運転台を取り付け改造して3両編成8本として、乗客が少ない筑前前原〜西唐津間を3両編成で運用できるようにしました。現在は後継車の305系に6両編成5本と3両編成2本が置き換えられ、残る3両編成6本が筑前前原〜西唐津間の限定で使用されています。

播但線・加古川線・筑肥線の103系の今後については、まだ発表がありません。とはいえ、現存する車両で一番新しい筑肥線用の車両でも車齢40年を経過しているので、余談は許さないでしょう。乗れるウチに乗っておくことをオススメします。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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