■男性だけでなく、女性や高齢者が担う領域が拡大
ヤマハ発動機の広報グループが発信しているニュースレター。今回のテーマは「エルゴノミクス」です。
人間工学とも訳され、人間が無理なく効率的に使用できるツールやレイアウトなどを研究する学問であり、工業デザインでもあります。クルマでもインパネスイッチなどについて、人間工学に基づいて設計されたという説明を聞くことが多々あります。

ヤマハ発動機では、各部門、各職場で多様な人材が活躍でき、能力を最大限発揮できる取り組みを推進しているそうです。そこで活用されているのが、エルゴノミクス。
磐田南工場の船外機部品組立ラインで活躍する大石かのこさんは、職場の女性リーダーと協力し合い、二人三脚で「身体への負荷を数値化するエルゴノミクス(人間工学)の手法」を使った環境改善に取り組んできたそうです。
「2年間の改善活動で、女性や高齢者のオペレーターが担う領域が大きく広がった」と、その成果を披露しています。

大石さんたちが改善の基軸としたエルゴノミクスの手法は、作業における運動部位の7項目(首・肩・腰・膝・肘・手首・指の動き)に対して、負荷の大きさを測定して10段階で評価するもの。
たとえば、棚から部品をピッキングする動作では、肘の角度160度(Lv.7)・首35度(Lv.7)・手首20度(Lv.3)というように、身体への負荷を数値化。同じ作業における男女オペレーターの差異などが検証、検討されています。
1つのラインに対して、評価対象は、7000項目にも及んだそう。
課題に対して棚の角度を変更する、治具の位置を調整するなど、作業の手元化や自動化など細かく、念入りに改善されました。
結果、以前は働き盛りの男性だけが担っていた工程に、多くの女性や高齢者も加わるようになったそうです。
大石さんは、「以前は、夕方が近づくと疲労を感じ、木、金曜日あたりにはそうした傾向が強まる印象を受けていました。その結果、生産性のバラツキなどにも影響を及ぼしていました」と、改善前を振り返っています。
エルゴノミクスを採用した評価と解析は、感覚的な負荷を「見える化」しただけでなく、疲労要因の特定、疲労感に対する職場の理解共有にもつながったとのことです。

世界的な感染症の拡大やサプライチェーンの混乱などにより、各生産現場は、変化や変動への対応力が問われています。こうした課題に対しても誰もが働くことができ、補い合える環境づくりは、現場の対応力を高めることにもつながっています。
大石さんは、「できることが増えるのは、モノづくりに関わる者として純粋にうれしいですし、生産性の向上や、間接的に働く仲間の私生活の充実にも貢献できたと思います」と手応えを得ているそうです。
入社以来9年間、組立職場で活躍してきた彼女は、今春、男性比率の高い加工職場に異動し、そこでもエルゴノミクスによる職場環境の改善にチャレンジすることになっているそうです。
(塚田 勝弘)
