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■昭和に大ヒットした意外な大衆車もランクイン
今や空前の旧車ブーム。特に国産車では、スポーツカーを中心に高い人気を誇っており、販売終了になって数十年が経った今も惜しまれている名車が数多くあります。
国産スポーツカーにも、たとえばトヨタの「スープラ」や「GR86」など、後継モデルが復活を遂げ、現在も販売されているモデルもいくつかありますが、旧車好きの中には、ほかにも復活を願うクルマは数多いのではないでしょうか。
では、旧車ファンは、一体どんなモデルの復活を願っているのでしょうか?
カレント自動車では旧車に興味のある男女208名を対象に、復活して欲しい車種に関するアンケートを実施。その結果、人気トップ5に入ったモデルを発表したので、ちょっと紹介してみましょう。
なお、今回の調査は2023年1月19日〜2023年1月29日の期間、インターネットによるアンケート形式で行われたものです。また、ランキングは上位5位までを抜粋して紹介します。
●1位:マツダ・RX-7
87票を獲得し、2位以下と大きな差を付けて1位に輝いたのは、マツダ「RX-7」です。
コンパクトで高出力を発揮するローターリーエンジンを軽量なボディに搭載し、鋭い加速力や高いコーナリング性能などで、日本だけでなく、北米など海外でも高い人気を誇ったのがRX-7。
初代モデルは1978年に登場。1985年に発売された2代目までは「サバンナRX-7」の名称で販売されていましたが、1991年登場の3代目では、当時のマツダ販売チャンネル名を冠した「アンフィニRX-7」に変更。後に販売網の統一もあり、「RX-7」のみのネーミングとなりました。
特に3代目のFD3Sは、シーケンシャルツインターボ付き2ローターの13B型ロータリーエンジンを搭載し、最も馬力が高い仕様では280psもの最高出力を発揮。シリーズ最強ともいえるモデルです。
また、低いフロントノーズや流麗なボディライン、リトラクタブルヘッドライトなどを採用したデザインも秀逸。外観から走りまで、まさにピュアスポーツといえる1台です。
そのFD3Sが2003年に販売終了となって今年で20年。長い年月が経ってもいまだにファンが多いことが、今回の1位獲得につながったのではないでしょうか。
●2位:日産・スカイラインGT-R
47票を獲得し2位に入ったのは、日産製スポーツカーの象徴ともいえる「スカイラインGT-R」です。
現在も後継モデルとして「GT-R」がありますが、当初は大衆車「スカイライン」のハイスペック仕様として存在。今のGT-Rはスカイラインから独立したモデルとなっているため、スカイラインGT-Rとは一応、別のラインというポジションになっています。
初代モデルの「スカイライン2000GT-R」は1969年に登場。おとなしいセダンのボディに、荒々しいほどの性能を発揮する高性能エンジンを搭載したことで、「羊の皮を被った狼」とも呼ばれたモデルです。
ちなみに、ベースとなった3代目スカイラインは「ハコスカ」の愛称を持つため、その高性能バージョンという意味で「ハコスカGT-R」の名称でも親しまれています。
その後も、スカイラインGT-Rは1973年に2代目が登場。ベースとなった4代目スカイラインの愛称から「ケンメリGT-R」とも呼ばれています。
そして1989年、スカイラインGT-Rとしては16年ぶりの復活となる3代目のR32型が登場します。エンジンには、専用設計の直列6気筒「RB26型」エンジンを搭載し、最高出力280psものハイパワーを発揮。グループA、全日本GT選手権(現在のスーパーGT)など、数々のレースでも活躍したことで大ヒットを記録します。
その後も、1995年に4代目R33型、1999年には5代目R34型が登場。特にR34型は、その高性能ぶりもさることながら、ハリウッド映画の「ワイルドスピード」にも登場したことで、世界中にファンを持つ人気モデルに。
特に当時、北米などでは正式販売がされなかったこともあり、海外のスポーツカー愛好家にとっても垂涎のクルマ。今では、中古車が数千万円するほど価格が高騰しています。
ちなみに、3代目R32型、4代目R33型、5代目R34型までを、RB26型エンジン搭載モデルということで、愛好家の間では、スカイラインGT-Rの「第2世代」と呼んでおり、初代や2代目とは区別されています。
●2位:日産・シルビア
スカイラインGT-Rと同じく2位に入ったのが、日産「シルビア」。
こちらも、最終モデルの7代目S15型が販売終了となってから20年以上経ちますが、いまだに多くのファンを持つモデルです。
1965年に登場した初代モデル以来、長年販売されたロングセラーモデルでしたが、特に高い人気を誇ったのが1988年登場の5代目S13型と、1999年発売の7代目S15型でしょう。
S13型はホンダの「プレリュード」と共に、当時の若者を中心に大きな支持を受けた「デートカー」というジャンルの立役者。
2ドアクーペの流麗なフォルムと、ハイパワーを誇る2.0L・直列4気筒の「SR20型」エンジンを採用(前期型は1.8Lエンジンを搭載)。スポーティでおしゃれなボディと俊敏な走りを両立したことで、スポーツカーでデートをすることが最先端だった時代にマッチし、大ヒットを記録します。
また、その血統を受け継ぐS15型は、ツリ目のヘッドライトや流れるようなボディラインを採用。さらに洗練されたスタイルとなったことで、スペシャリティカーとしての地位を確立します。
2000年には電動開閉式のメタルルーフを持つオープンカー「ヴェリエッタ」も登場し、「おしゃれなスポーツカー」としてラインアップの強化も図りました。
さらに、改良されたSR20型エンジンは、2.0Lターボエンジンを搭載した上級グレード「スペックR」のMT車で250psを発揮。その高い動力性能により全日本GT選手権などで活躍したほか、D1グランプリなどドリフト競技のベースモデルとしても高い人気を誇りました。
●4位:ホンダ・S2000
ホンダの2シーター・オープンカー「S2000」が39票で4位に入っています。
ホンダとしては、小型スポーツカーの「S800」以来となるFR車として、1999年に初代モデルが登場したのがS2000です。
2.0L・4気筒のVTECエンジンは、自然吸気ながら250psものハイパワーを実現。エンジンを前輪車軸後方に配置するFRビハインドアクスル・レイアウトの採用などで車体前後重量配分を50:50とし、優れたハンドリング性能も両立します。
また、新開発オープンボディ骨格構造「ハイX(エックス)ボーンフレーム」により、クローズドボディ同等以上のボディ剛性も確保。人車一体を目指したという軽快な走りにより、当時のスポーツカー好きを虜にした1台です。
2005年のマイナーチェンジでは、エンジンの排気量を2.2Lに拡大。中・低速回転域からパワフルで余裕のある走りを実現したほか、「DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)」の採用で、リニアで自然なアクセルフィールにも貢献しました。
S2000が販売終了となったのは2009年。それ以降、ホンダのFR車は存在せず、今のところは最後のホンダFRモデルといえます。
●5位:スバル・360
ラストは、スポーツカーではなく大衆車。スバルの軽自動車「360」が38票で5位に入りました。
丸々としたキュートなエクステリアデザインにより、今でも「てんとう虫」の愛称で多くのファンを持つのがこのクルマ。
戦後の経済成長期、1958年から1970年まで生産されたモデルで、比較的リーズナブルな価格と高い実用性などにより大ヒット。販売された12年間で累計39万台を記録し、大衆車の先駆けとなったモデルです。
エンジンには356cc・空冷2ストローク直列2気筒を搭載。車体後方にエンジンを搭載し、後輪で駆動するRR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式を採用していました。
また、特に初期型などは室内を可能な限り質素とするなどで、コストダウンも実施。当時のユーザーにも手が届くリーズナブルな価格に貢献したといいます。
ちなみに、「てんとう虫」という愛称の由来には諸説ありますが、スタイルが似ているといわれる「フォルクスワーゲン・タイプ1」が「かぶと虫」と呼ばれていたのに対して付けられたという話も。
いずれにしろ、今でもその愛らしいスタイルには愛好家も多く、特に初期型は、フロントのヘッドライトが出っ張っていることで「デメキン」という愛称で呼ばれ、稀少なことで知られているモデルです。
●憬れの旧車を復活させる手はある?
以上、旧車好きが選んだ復活して欲しいクルマのランキングを紹介しましたが、いかがでしたか?
近年の国産車は、スポーツカーのラインアップが減っていることもあり、やはりスポーツモデルが多くランクインしたことが印象的ですね。
ちなみに、今回のアンケート調査では、ほかにもスバル「インプレッサ GC8」、トヨタ「セリカ」、日産「ブルーバード」、トヨタ「ソアラ」、ポルシェ「911(空冷)」などの回答もあったそうです。
いずれにしろ、年々強化される排気ガス規制や安全基準、さらにはカーボンニュートラル実現に向けた電動化の波などで、こうしたモデルが復活することはなかなか難しそうなのは事実。
そんななか、日産は2023年1月13日(金)~15日(日)に開催された「東京オートサロン2023」で、「GT-R」の2024年モデルを発表し大きな話題となりましたね。国産唯一のスーパーカーともいえるGT-Rの新型だけに、今後も可能な限りモデルを続けていって欲しいものです。
またトヨタでは、今回ランキング外でしたが1983年登場の「カローラレビン/スプリンタートレノ」、通称「AE86」のパワートレインを電動化したり、水素エンジン化した仕様を展示。
旧車をカーボンニュートラル仕様とすることで、「長く乗り続けることができる」可能性を示したことも印象的でした。
復活はむずかしくても、時代にマッチした仕様とすることなども、魅力的な旧車を残していく手法のひとつでしょう。こういった動きも、今後どうなるのかが気になるところです。
(文:平塚 直樹)
【関連リンク】
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