原点回帰したフェアレディZとキャラ変したGRスープラ、同じFRスポーツでも個性は異なる【新車比較】

■電動化が進む今だから、乗っておきたいピュアエンジンのスポーツカー

●日産「フェアレディZ」 VS. トヨタ「GRスープラ」

絶滅危惧種となっている国産スポーツカー。その中でもMT車を設定しているモデルは少なくなっています。ATの進化によりMTよりも速く走行することはできますが、操る楽しさはMTだけが味わえる優越感と言えるでしょう。

フェアレディZの走行シーン
フェアレディZの走行シーン

今回は、2022年4月に大幅改良を行った日産フェアレディZと、2022年8月に3L直列6気筒ターボエンジン搭載車に6速MTを追加したGRスープラを試乗して比較してみたいと思います。

GRスープラと日産フェアレディZは、どちらもFR(後輪駆動)の駆動方式を採用した2シーターのクーペ。

搭載するエンジンはGRスープラが3L&2Lの直列エンジン。一方のフェアレディZは3L V型6気筒エンジンとエンジンの型式は異なるもの、トランスミッションはMTとATを設定しています。

GRスープラRZのフロントスタイル
GRスープラRZのフロントスタイル
フェアレディZのフロントスタイル
フェアレディZのフロントスタイル

ボディサイズは、GRスープラが全長4,380mm×全幅1,865mm×全高1,295mm。対してフェアレディZは全長4,380mm×全幅1,845mm×全高1,315mmです。

全長は同じですが、GRスープラが全幅は+20mm、全高は-20mmとなっており、GRスープラの方がワイド&ローのフォルムとなっています。

フェアレディZのリアスタイル
フェアレディZのリアスタイル
GRスープラRZのリアスタイル
GRスープラRZのリアスタイル
フェアレディZに搭載される3LV6ツインターボエンジン
フェアレディZに搭載される3LV6ツインターボエンジン
GRスープラRZに搭載される3L直列6気筒ターボエンジン
GRスープラRZに搭載される3L直列6気筒ターボエンジン

搭載しているパワートレインは、GRスープラが、最高出力197ps・最大トルク320Nmと最高出力258ps・最大トルク400Nmを発生する2L直列4気筒DOHCターボエンジン+8速AT。そして、最高出力387ps・最大トルク500Nmを発生する3L直列6気筒DOHCターボエンジンは8速ATもしくは6速MTが組み合わされています。

燃費性能はWLTCモードで11.0~14.5km/Lを実現しています。

一方、フェアレディZに搭載されているのは最高出力405ps・最大トルク475Nmを発生する3L V型6気筒DOHCツインターボの1種類で、組み合わされるトランスミッションは6速MTと9速ATとなっています。

燃費性能はWLTCモードで9.5~10.2km/Lで、同じ3Lエンジンで比較してもGRスープラのほうが燃費は良いです。

スポーツカーには必要ない!と言われがちな運転支援システムですが、GRスープラの8速ATは、プリクラッシュセーフティやレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)など7つの機能を搭載し、6速MT車は機能が少なくなります。

フェアレディZのメーターパネル
フェアレディZのメーターパネル
GRスープラRZのメーターパネル
GRスープラRZのメーターパネル

フェアレディZは、インテリジェントクルーズコントロールをはじめ、インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)、インテリジェントエマージェンシーブレーキ、LDW(車線逸脱警報)、BSW(後側方車両検知警報)、RCTA(後退時車両検知警報)はトランスミッション問わず採用され、9速AT車にはさらに踏み間違い衝突防止アシストが搭載されているのが特徴です。

電子デバイスはフェアレディZがローンチコントロールぐらいですが、GRスープラは一部グレードにアクティブディファレンシャルやAVS(アダプティブバリアブルサスペンションシステム)など採用しています。

最後に車両本体価格を比べてみると、GRスープラはSZの499万5000円~RZの731万3000円。一方、フェアレディZはスタンダードモデルの524万1500円~バージョンSTの646万2500円で、3L直列6気筒エンジンを搭載しているGRスープラRZがかなり高い印象です。

それでは、GRスープラとフェアレディZのMT車を実際に試乗してみてのインプレションを紹介しましょう。

●ゆったりとシーサイドを流したいZと、峠に行きたくなるGRスープラ

フェアレディZのインテリア
フェアレディZのインテリア

まずはフェアレディZです。2008年に登場したZ34型フェアレディZをベースに約8割のパーツを新設計しZR34型へと進化しています。最大のトピックスは搭載するエンジンが3.7L V6自然吸気から3L V6ツインターボへと変更されたことでしょう。

フェアレディZのフロントシート
フェアレディZのフロントシート

外観は初代のS30型をオマージュしたデザインを採用していますが、フェアレディZはスタイリングだけでなく、乗り味も原点回帰しているように感じました。

Z33やZ34型のフェアレディZは、高い走行性能を追求したモデルとなっていました。しかし、日産には価格帯こそ違いますが、高性能スポーツカーのGT-Rがラインアップされています。

したがって、フェアレディZはその名前のとおり、ラグジュアリーな雰囲気を楽しめる大人のスポーツカーへと舵を切っています。

フェアレディZのラゲッジスペース
フェアレディZのラゲッジスペース

エンジンは非常にパワフルですが、ゆったりとした余裕のある乗り心地が特徴です。コーナーを攻めるというよりは、直線を流すという雰囲気が似合うクルマに仕立てています。まさにスタイリング同様に、初代フェアレディZのテイストに原点回帰しています。

GRスープラRZの走行シーン
GRスープラRZの走行シーン

一方のGRスープラは、先代モデルまでの“直線番長”という肩書きは返上されています。GRスープラの低重心、そしてワイド&ローのフォルム。そして50:50の前後重量バランスなどにより、高い旋回性能が特徴です。

GRスープラRZのインテリア
GRスープラRZのインテリア

今回はワインディングでも試乗しましたが、直列エンジン特有の回転数が上がるほどモリモリとパワーが出る感覚は抜群で、トレッドとホイールベースの黄金比が生み出す高い旋回性能は、気持ち良くコーナーを抜けていくことができます。

GRスープラRZのフロントシート
GRスープラRZのフロントシート

これは従来モデルから大きくキャラ変したと言えるでしょう。3Lエンジンのビッグトルクによって急勾配でもグイグイ登っていきますので、GRスープラは非常に扱いやすく、誰でも楽しめるスポーツカーに仕上がっています。

GRスープラRZのラゲッジスペース
GRスープラRZのラゲッジスペース

フェアレディZはゆったりと走りを楽しめるクルマへと原点回帰し、スープラはシットリとしたサスペンションチューニングと、トレッドとホイールベースの黄金比による高いコーナリング性能が魅力のピュアスポーツカーへと進化しています。

フェアレディZのシフトノブ
フェアレディZのシフトノブ
GRスープラRZのシフトノブ
GRスープラRZのシフトノブ

GRスープラとフェアレディZは、見た目は同じ2ドアクーペのスポーツカーですが、キャラクターや似合う走行シーンはかなり違う2台となっています。

ただ、このような時代にMT車のスポーツカーを販売してくれた自動車メーカーには感謝したいですし、こういったクルマに乗れる時間はどんどん少なくなっているのは間違いないでしょう。

(文・写真:萩原 文博)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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