目次
■三菱ミニキャブ・ミーブがインドネシアで現地生産
三菱自動車が「軽商用電気自動車『ミニキャブ・ミーブ』をインドネシアで2024年に生産開始」を発表しました。
軽自動車をそのまま海外で生産するというケースは非常に稀ですが、さらに軽EVの現地生産となると、おそらく日本の自動車メーカー全体としても初めてとなるはずです。
今回のプロジェクトについて、三菱自動車の加藤隆雄社長は次のようなコメントを出しています。
現在、自動車会社は世界中で急速に進んでいる脱炭素社会への取り組みについて対応することが求められています。その中でも軽商用EVは、物流における『ラストワンマイル問題』への最適解と考えております。
アセアンにおけるEVへのニーズの高まりに応えるため、今回、海外初の現地生産を決定しました。引き続きインドネシアの自動車産業の発展を後押しすると共に、同国の環境への取り組みに対しても貢献をしていきたいと考えております
まさしく軽自動車という日本独自の規格が、アセアン圏においては物流と電動化の課題に対するソリューションとして有効と考えられるわけです。
●軽自動車がグローバルに展開できる可能性は?
言うまでもなく「軽自動車」というのは日本独自の規格で、典型的なガラパゴス商品として批判されることも少なくありません。新車販売の4割近くが軽自動車ということで、歪んだ市場になっているという指摘もあります。
今回のように、アセアン地区において軽自動車規格のEVをそのまま展開して、現地ニーズを満たすことができ、それなりに市場シェアをとれるとなれば、軽商用EVはデファクトスタンダードになりえるかもしれません。
日本という、ユーザーの目が厳しいマーケットで鍛えられてきた軽自動車は、ボディサイズのわりにコスト高な商品になっているため、グローバル展開が難しいという見方もありますが、そうした作り込みは売価が上がりがちなEVであれば、逆に評価ポイントになるともいえます。
現在、軽商用EVはミニキャブ・ミーブが市場を独占していますが、すでにスズキが軽商用EVを2023年度内にローンチすることを発表しています。2024年春にはホンダもN-VANのEVバージョンを登場させる予定で、競争が激しくなれば商品力が上がります。それがグローバルでの競争力につながるというわけです。
●スケールすれば日本の軽EVはもっと安くなる?
軽EVがグローバル展開をすることは、日本のユーザーにとっても朗報となるでしょう。モーターやバッテリーといったEVの主要コンポーネントの調達量が増えることによって、量産効果が生まれ、コストダウンにつながることが期待できるからです。
日本におけるミニキャブ・ミーブのスターティングプライスは243万1000円となっていますが、前述したホンダのN-VAN EVは100万円台での販売を宣言しています。こうした競争による価格ダウンが、軽商用EVが世界的商品としてスケールすることによって、さらに加速することもあり得るでしょう。
軽商用EVに搭載されるモーターやインバーター、バッテリーなどのコンポーネントは、当然ですがスペック的に軽乗用EVにも活用可能といえます。
軽商用EVがグローバル商品としてスケールすることは、日本国内向けの軽EV全般のコストダウンにつながり、補助金がなくとも100万円台での販売が当たり前といった状況になるのは、そう遠い日のことではないかもしれません。