目次
■自動車部品からスマートシティのインフラへ
毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」は、年を追うごとに自動車関連色を強めています。
2023年には、ソニー・ホンダモビリティが開発しているプロトタイプのEVを展示したことでも話題となりました。
そんなCESには、自動車業界でメガサプライヤーと呼ばれる大手部品製造・開発会社も出展しています。2023年に創業100年を迎えるフランス系メガサプライヤー「ヴァレオ」もそのひとつです。
『温暖化と安全とイノベーションで解決する』をテーマとする同社の発表は、多岐にわたるものでしたが、ここではメガサプライヤーとしてクルマからインフラへ事業を拡大させることを予感させる提案についてフォーカスしていきたいと思います。
●スマートシティに欠かせない「スマート・ポール」とは?
それが2023年のCESで初公開された「スマート・ポール」です。
第一印象では、どこか南国の植物を思わせるデザインの街灯といった風に感じるかもしれませんが、歩行者、自動運転車、マイクロモビリティなどが行きかう近未来のスマートシティを想定した、多機能な次世代インフラを目指したものです。
歩行者が近づいてくれば、その動きに合わせてライティングを変化させることができますし、通過する車両のデータを計測・記録する機能も備えています。
さらに、EV用の充電プラグも備え、充電情報は路面プロジェクションによりユーザーへ伝えることも可能となっています。まさに未来のインフラです。
●技術的には実現可能なレベルにある
ヴァレオがフランス系テック企業と共同開発しているスマート・ポールの特徴は、けっして未来を見過ぎてはいないことです。
歩行者の動きを検知したり、通過する車両を認識するためのセンサーは、ヴァレオが得意としているADAS(先進運転支援システム)用のセンサーとして実績があるものを利用しています。
すでに自動車向けに量産されているセンサーですから、コストや信頼性において実現可能なレベルにあることは容易に想像できます。
スマート・ポールの筐体には、バイオ素材の複合材料を使っているという点も注目すべきでしょう。CO2削減のためには石油由来の樹脂使用量を減らす必要がありますが、その辺りの対策も考慮しているのです。
自動車の先進安全装備の開発で培ったセンサー技術や、アルゴリズムといったノウハウを活かしたスマート・ポールは、すぐさま量産化されるというわけではありません。とはいえ、街灯までも知能化することでモビリティの安全性を高めようというアプローチは、大いに注目すべきではないでしょうか。