アウディらしい高級感、先進的な内外装を備えたBEVの「Q4 e-tron」の魅力とは?

■ボディサイズでは、兄弟車のフォルクスワーゲンID.4はもちろん、日産アリアにも近い

アウディは、ドイツ本国で2022年12月に電動化戦略について改めて発表を行い、「2026年以降の新型車はEVにのみになり、内燃エンジン搭載モデルの生産を段階的に廃止。2029年までに、すべての生産拠点で電気自動車を生産する」としています。

今回は、第3のBEVとして日本に上陸を果たしたQ4 e-tronについてご紹介します。

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アウディQ4 e-tronの走り

アウディは、日本にもBEVを続々と投入していて、Q4 e-tron(イー・トロン)、e-tron、e-tron GTがあり、各モデルにスポーツバックが設定されているほか、e-tronには「S」「GT」「RS」グレードも用意しています。

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アウディQ4 e-tronの走行シーン

全長4590×全幅1865×全高1630mmという短めのボディサイズをもつQ4は、フォルクスワーゲンのID.4と同じ「MEB」プラットフォームがベースになっています。

ボディサイズは、ID.4はもちろん、日産アリアとも比較的近く、トヨタbZ4X/スバル・SOLTERRA(ソルテラ)、メルセデス・ベンツEQBは少し大きくなっています。サイズ(車格)上のライバルと比べてみます。

こう並べてみると、ややワイドな全幅はともかく、全長は短めでアウディがコンパクトSUVと表現しているのも理解できます。

●サイズ

アウディQ4 e-tron:全長4590×全幅1865×全高1635mm、ホイールベース:2765mm

フォルクスワーゲンID.4:全長4585×全幅1850×全高1640mm、ホイールベース:2770mm

日産アリア:全長4595×全幅1850×全高1655〜1665mm、ホイールベース:2775mm

トヨタbZ4X/スバルSOLTERRA:全長4690×全幅1860×全高1650mm、ホイールベース:2850mm

メルセデス・ベンツEQB:全長4685×全幅1835×全高1705mm、ホイールベース:2830mm

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アウディQ4 e-tronのリヤまわり

駆動方式はRWDで、リヤアクスルに駆動用モーターを配置し、1速固定式のトランスミッションを用意。総電力量82kWhのバッテリーがフロア下に配置され、モーターのスペックは、最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nmとなっています。0-100km/h加速は8.5 秒で、WLTCモードの一充電走行距離は594km。

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アウディQ4 e-tronのイメージ

充電は、200Vの普通充電は、標準は3kWで、オプションとして最大8kWまで対応。急速充電は、最大でCHAdeMO規格の94kW(2022年8月に更新)に対応しています。こちらもライバルと比較してみます。

●スペック

アウディQ4 e-tron:総電力量82kWh、最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nm、一充電走行距離594km

フォルクスワーゲンID.4(Pro):総電力量77kWh、最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nm、一充電走行距離618km

日産アリア(B6):総電力量66kWh、最高出力150kW(204S)、最大トルク266Nm、一充電走行距離470km

トヨタbZ4X/スバルSOLTERRA(FF):総電力量71.4kWh、最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nm、一充電走行距離559km

トヨタbZ4X/スバルSOLTERRA(4WD):総電力量71.4kWh、最高出力80kW(109PS)+80kW(109PS)、最大トルク169Nm+169Nm、一充電走行距離540km

メルセデス・ベンツEQB(FWD):総電力量66.5kWh、最高出力140kW(190PS)、最大トルク385Nm、一充電走行距離520km

メルセデス・ベンツEQB(4WD):総電力量66.5kWh、最高出力143kW(194PS)+72kW(98PS)、最大トルク370Nm+150Nm、一充電走行距離468km

ブランド違いの兄弟車ともいえるQ4 e-tron、ID.4(Pro)のスペックはほぼ同値で、bZ4X/ソルテラとEQBの4WDモデルは、リヤモーターの加勢によりパワフルな走りが得られる反面、航続距離は若干短くなっています。

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アウディQ4 e-tronのコクピット

以前お伝えしたように、筆者は欧州仕様のアウディQ4 e-tronに試乗する機会があり、今回は右ハンドルの日本仕様。試乗車は「Q4 40 e-tron Sline」で、8万円の「ナバラブルー・メタリック」をまとっていました。

車両本体価格は689万円で、オプションで11万円の「advancedインテリアプラスパッケージ」も装着。

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フラットボトムのステアリングを採用

前後席は、床面が少し持ち上がったような、わずかな上げ底感を抱かせますが、運転姿勢、後席の乗車姿勢ともにほとんど違和感は抱かせません。さらに、フロアトンネルがない後席は、足元が広く、4.6m以下という全長を考慮すると十分な余裕が確保されています。

キーを携行して運転席に乗り込み、ブレーキペダルを踏むと始動するのは、ボルボのBEVなどと同じ。「P」に入れると自動的にパーキングブレーキも作動します。

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アウディQ4 e-tronの前席

フラットボトムのステアリングは慣れるまで少し時間が掛かる印象で、今回の試乗コースは街中や郊外路が中心でしたが、タイトな山岳路などの操作性が気になるところ。

一方で、エアコンパネルのキーは、物理スイッチで直感的に操作でき、扱いやすくなっています。個人的には、ID.4など最近のフォルクスワーゲンなどが採用しているディスプレイのタッチ式よりも、ストレスなくコントロールできるように思えます。

●+アルファの余裕を感じさせる動力性能

発進時から十分なトルク感が得られるアウディQ4 e-tron。ボディサイズを考えると、2.1tという車両重量は重量級といえるものの、アクセルの操作に対してBEVらしくレスポンスもよく、どの速度域でもスムーズに加速していきます。

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アウディQ4 e-tronのリヤシート

いまでは速いEVはいくらでもありますが、あまりにも強烈過ぎて、街中ではややコントロールしにくいモデルもありますから、動力性能は+アルファの余裕を備えつつ、ちょうどいい塩梅といえそう。

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アウディQ4 e-tronのタイヤ&アルミホイール

一方で、フォルクスワーゲンID.4を思い起こすと、足まわりは若干硬く、大きな段差を乗り越えた際など、荒れている路面では揺すぶられるようなシーンもありました。

「Sライン」は、フロント235/50R20・リヤ255/45R20というタイヤサイズに加えて、スポーツサスペンションを履いている影響もありそう。

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アウディQ4 e-tronの走り

今回の試乗コースでは、タイトな高速コーナーなどはありませんでしたが、床下に重い電池を積んでいるのと、引き締まった足まわりにより、コーナーでの姿勢も安定していて、重厚感を伴いながらもスポーティなハンドリングも楽しめます。また、RWDということで、少し速度を上げるとリヤから押してくれるような旋回姿勢になり、重量の割に小気味よさを抱かせるシーンもありました。

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アウディQ4 e-tronのラゲッジスペース

ほかにも、パドルシフトにより4段階で回生ブレーキの強さを選択できるのも美点です。回生ブレーキでは、完全停止には至らず、最後は物理ブレーキを踏む必要があります。内外装のデザインや先進的なコクピット、高い質感など、随所にアウディらしい魅力が感じられるQ4 e-tron。

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ラゲージボード下に充電ケーブルなどが収まる

日本でも取り回ししやすいサイズに収まっていて、最小回転半径は5.4m。大人4人が無理なく座れる秀逸なパッケージング、520Lという大容量ラゲッジスペースも備えていますので、初めてBEVを購入する人やファミリー層にもオススメできる1台になっています。

(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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