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■19インチタイヤは見た目はスポーティでも乗り味は硬め
1.8L、2.0Lを展開するトヨタの新型プリウスのシリーズパラレルハイブリッド(従来の呼称は、THS II)仕様は、売れ筋グレードの「Z」と「G」が2.0L。
「KINTO Unlimited」専用の「U」、そして「X」グレードが1.8Lとなります。1.8Lも含めて第5世代のTHS IIになっています。
今回は、新型プリウスPHEVのプロトタイプと従来型PHEVをサーキットで乗り比べることもできました。新旧のスペックを比べてみます。
従来型プリウス(HEV):「2ZR-FXE」型・直列4気筒1797cc/エンジン最高出力72kW(98PS)/5200rpm/エンジン最大トルク142Nm/3600rpm/フロントモーター最高出力53kW(72PS)/フロントモーター最大トルク163Nm/リヤモーター最高出力(E-Four)5.3kW(7.2PS)/リヤモーター最大トルク55Nm/システム最高出力90kW(122PS)
新型プリウス(HEV/U、Xグレード):「2ZR-FXE」型・直列4気筒1797cc/エンジン最高出力72kW(98PS)/5200rpm/エンジン最大トルク142Nm/3600rpm/フロントモーター最高出力70kW(95PS)/フロントモーター最大トルク185Nm/リヤモーター最高出力(E-Four)5.3kW(7.2PS)/リヤモーター最大トルク55Nm/システム最高出力103kW(140PS)
新型プリウス(HEV/Z、Gグレード):「M20A-FXS」型・直列4気筒1986cc/エンジン最高出力112kW(152PS)/6000rpm/エンジン最大トルク188Nm/4400-5200rpm/フロントモーター最高出力83kW(113PS)/フロントモーター最大トルク206Nm/リヤモーター最高出力(E-Four)30kW(41PS)/リヤモーター最大トルク84Nm/FF:システム最高出力144kW(196PS)/E-Four:システム最高出力146kW(199PS)
従来型プリウスPHEV:「2ZR-FXE」型・直列4気筒1797cc/エンジン最高出力72kW(98PS)/5200rpm/エンジン最大トルク142Nm/3600rpm/フロントモーター最高出力53kW(72PS)/フロントモーター最大トルク163Nm/システム最高出力90kW(122PS)
新型プリウスPHEV:「M20A-FXS」型・直列4気筒1986cc/エンジン最高出力111kW(151PS)/6000rpm/エンジン最大トルク188Nm/4400-5200rpm/フロントモーター最高出力120kW(163PS)/フロントモーター最大トルク208Nm/システム最高出力164kW(223PS)
※社内測定値に基づく開発目標値
●本格スポーツハッチに迫る動力性能
今回、試乗したのは新型プリウス(HEV)の2.0L(FFとE-Four)、新旧PHEV(サーキット内での乗り比べ)です。
1.8Lの試乗車は用意されていませんでしたが、同じシステムを積む現行ノア/ヴォクシー(車両重量1640~1670kg)を思い起こしても、新型プリウス(1.8L HEV)の1360kg(Uグレード)よりも280~310kgも軽いため、十分な速さを備えていそうです。
新型プリウス(2.0L)は、FFもE-Fourも文句のない速さを披露してくれます。
Cセグメントでは、最高出力245PSを誇るフォルクスワーゲン・ゴルフGTI、320PSに達するゴルフR、330PSのホンダ・シビックタイプRなどの本格スポーツハッチは別にして、トヨタを代表する燃費スペシャルという顔を持つプリウスから想像するよりもダッシュ力、パンチ力ともに備えています。
なお、2.5Lハイブリッドを積むRAV4のシステム最高出力は、FFが160kW(218PS)、4WDは163kW(222PS)に達するものの、車両重量は1620~1690kgとノア/ヴォクシー並みの重量があるため、新型プリウス2.0Lハイブリッドの速さがうかがえます。2.0Lエンジンも含めたツキの良さも美点で、一般道ではそのハイレスポンスにも驚かされました。
今回は、高速道路を走らせる機会はありませんでしたが、高速巡航時もストレス知らずの動力性能を披露してくれるのは間違いないでしょう。電気式無段変速機によるスムーズな発進性、中間加速の滑らかさもEVに近いようなフィーリングを示してくれます。
●フリクションのないすっきりした操舵フィール
さらに、パワーステアリングの軽さとスムーズさも印象的。単に手応えが軽いのではなく、タイヤの接地感とコーナーでの手応えを備えていて、もちろんフリクションも抱かせません。
個人的には、最近のCセグメントでは、現行ゴルフのスムーズさ(16インチタイヤは軽すぎますが)が好印象で、国産Cセグメントでは新型プリウスの操舵感、ボディの剛性感が抜きん出ているように感じられます。
一方で、走り出して意外だったのは、一般道での微振動と大きめのギャップを超えた際のショックの大きさ。同じコースで直接乗り比べたわけではないものの、足まわりの硬さでは、ホンダ・シビックと近い印象を受けました。
最近のトヨタ車は、新型クラウンもそうですが、ひと昔前のようなソフトな乗り味とは完全に決別し、ハンドリング重視に舵を切った感があり、高いボディ剛性感とシャーシの仕上がりの良さにより、切れ味鋭い操縦安定性を獲得しています。
その分、後席はもちろん、前席でも路面によっては多少の突き上げ感があります。エアボリュームの増した大径タイヤを履いていることもあるのでしょうが、19インチタイヤということもあり、快適性という意味ではもう少し煮詰めたいところ。
なお、FFとE-Fourでは、ダンパーも含めたセッティングがチューニングされているそう。両駆動方式ともに、基本的には引き締まった乗り味を前後席で確認できました。FFからE-Fourに乗り換えると、ボディの重さが伝わってくる一方で、発進や加速時などで後ろから押されるような一押しがあり、旋回姿勢もより安定しています。
基本的には、雪上などで実感できる生活四駆ともいえそうですが、ニーズの高いという降雪地域ではE-Fourの恩恵をより実感できるはず。
また、先述したように、ドイツ車のようなミシリともいわない剛性感がありますから、揺れは一発で収束。また、郊外路を少し飛ばした程度では、ほとんど風切り音も感じさせないほど圧倒的な静粛性を実現している一方で、タウンスピードでもロードノイズが少し気になります。ロードノイズ、そしてエンジン始動時や加速時の音も大きめに伝わってくるのも静粛性が際立って高いためで、余計に気になる面もあります。
なお、「スポーツ」モードにすると、よりレスポンスが鋭くなるだけでなく、音を聞かせる演出も加わり、かなり元気な印象が増します。開発陣は、先代の課題でもあったロードノイズを減らすことにも注力したそう。
今回は、旧型プリウス(HEV)と公道を乗り比べる機会はありませんでしたが、新型PHEV(プロトタイプ)と従来型PHEVをサーキット内で乗り比べると、静粛性も1枚も2枚も新型が上回っていて、4代目プリウスのオーナーが新型に乗り換えるとスムーズな発進、加速性能はもちろん、静かな車内にも驚くはず。
速さとレスポンスを増した新型プリウス。動力性能の向上だけでなく、ブレーキのタッチと得られる制動力も素晴らしい出来映えです。
回生ブレーキとメカブレーキの協調制御の進化により違和感はほとんどなく、オンデマンド式のポンプ加圧タイプの採用により、スムーズでリニアなフィーリング、そしてサーキットでも十分な制動力を確認できました。
●新型プリウスPHEV(プロトタイプ)の走りは?
そのサーキット内で新旧を乗り比べたPHEVは、速さではもちろん新型が従来型を大きく上回っています。PHEVは「できるだけEVとして長く乗りたい」というニーズが多いため、EV走行距離を従来型よりも50%以上向上させる目標を据えつつ、システム最高出力は約80%増しになっているだけあって、とにかくパワフル。
今回は、街中走行を想定し、80km/hという速度上限(目安)が要請されていましたので、高速域のパンチ力は試せませんでしたが、その速度内でも鋭いレスポンス(コーナーでの立ち上がりなどで)も実感できました。
EVモードでも80km/h内ならサーキット走行をモーターでまかなえるだけでなく、ハイブリッドモードでエンジンが始動すると、さらに力強さとピックアップの良さが増す印象。
また、先述したように静粛性の高さも際立って高く、従来型と比べるとコーナーでの旋回姿勢も格段に安定しています。ロールはもちろん許すものの、重心が低い感じが顕著でスポーツハッチに乗り換えたような差を感じられます。
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久、トヨタ)