■異例のマツダ車
「このクルマってマツダなの?」
彼女がそんな質問をしてきた真意はよくわからないけれど、たぶん「ずいぶん高級な感じがするクルマだね。マツダってそういうクルマを作る会社だっけ?」ということを言いたかったんだと思う。
新しくボクの愛車になったマツダ「CX-60」は、マツダとして異例であり、チャレンジングなクルマだ。何より驚くのは、上級グレードでは600万円オーバーの価格帯だってこと。その領域はマツダとしては初めての挑戦だ。
いっぽうで、ベーシックグレードでは300万円を切る価格が用意されているから、上と下のグレード間の価格差は300万円以上。上級グレードは“ベーシックグレード2台分以上の価格”なのだから凄すぎる。
でも、マツダCX-60のトピックはそれだけじゃない。
プラットフォームはじめ、エンジン(ベーシックタイプを除く)やトランスミッションはなんと新規開発で、しかもそれは今どきエンジン縦置きの後輪駆動プラットフォームなのだから恐れ入る。
しかも、ディーゼルエンジンは直列6気筒で、排気量3.3Lと大きなもの。それだけをみれば「なんと贅沢な!」と思うかもしれないが、その狙いが低燃費なのだから面白すぎる。
ボクの愛車は「e-SKYACTIV D 3.3」と呼ばれるマイルドハイブリッドだが、そのWLTCモードは21.0km/L(マイルドハイブリッドなしでも20km/Lに迫る!)と常識外れのスペック。
しかも高速道路を淡々と走れば、実燃費で23km/Lくらいまで伸びるのだから、ちょっと信じられない燃費性能だ。まるで狐にでもつままれたかのような気分になってくる。
●オシャレとワクワク
……でも、ボクがCX-60を選んだのはそういう理由ではない。
インテリアに惚れ込んだからだ。マツダのインテリアは、その作り込みと上質感に定評があって、どのクルマでも“ひとクラス、もしくはふたクラス上”の仕上がり。
CX-60はベーシックな内装仕様でも、ちょっとしたプレミアムブランドを超える勢いのプレミアム感だが、ボクが選んだ「Premium Modern」という仕様になると、布を糸で結ったようなオリジナリティあふれるダッシュボードの仕立となり、その仕上がりはさすが。
「レクサスでもここまではやっていないんだけど……」というのは冗談としても、リアルに1000万円オーバーのクルマの内装と言っても過言ではないと思う。
今どきのマツダは、そんなクルマを作る会社なのだ。
「そうそう、わかる。お洒落して乗りたくなるクルマ」
その作り込みには、ファッションと質感の高さには一家言ある彼女も納得だ。
「でも、コーヒーをこぼさないように気を付けないとね。そういう緊張感も、奮発した服を着ている時と一緒かな」
白いインテリアカラーのPremium Modernは、はっきり言って気をつかう。だけど、それはオシャレしたときのワクワクを演出する特別感と同じなのかもしれない。
そう感じるのはボクだけだろうか。
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:咲村 良子/ヘア&メイク:東なつみ/写真:ダン・アオキ)