ド迫力の顔は次世代BMWの救世主か? 新型XMの威風堂々なデザインを検証する【クルマはデザインだ】

■M専用モデルとしてスポーティかつラグジュアリーな存在

XM・メイン
M1以来、Mモデル専用のボディを得た新型XM。スポーティかつラグジュアリーな魅力を発揮する

「M1」以来のM専用モデルである、BMWの新型「XM」のデザインが話題騒然です。とりわけ、大型のキドニー・グリルについては賛否が渦巻いていて、「チョットやり過ぎ?」という声も少なくありません。

そこで、いま一度、XMのエクステリアデザインについて検証してみたいと思います。

●変わりつつある? BMWデザイン

先代の「7シリーズ」から大型化が始まったBMW車のグリルですが、ユーザーに対し大きなインパクトを与え始めたのは、新しい「4シリーズ」や「M3」あたりからではないでしょうか。いずれも流麗なクーペやスポーティなセダンボディですから、そのフロントにいきなり巨大なグリルが貼り付けば、違和感を与えて当然…ということです。

XM・フロント
話題騒然の巨大なキドニー・グリル。「アイコニック・グロー」として暗闇でも光り輝く

そんな中、新型の「2シリーズクーペ」からBMWデザインにちょっとした変化が見え始めていました。それまでの流麗ボディに対し、より立体的でスクエアな造形が取り入れられていたのです。この流れは新型「M2」でも一層強調され、新型の7シリーズではさらに立体的になりました。

その是非はともかくとして、直線的でスクエアなボディでは、大型になったグリルとの相性が比較的よく、とくに7シリーズでは、少なくとも他のシリーズより「シックリ度」が高くなっていました。ですから、今後はこの方向でボディとグリルの融合が進むものと思われたのです。

●賛否に関するふたつの懸念点

XM・サイド
クーペスタイルとしてルーフが緩やかに降下する流麗なサイドビュー。それだけに頭が大きく見える?

では、その点XMではなぜ賛否の声があるのでしょうか? 恐らくここには二つの理由があると思えます。

ひとつはボディの形状です。XMはBMW自ら「魅惑的なクーペ・スタイル」と謳っている通り、ルーフが滑らかに下降する文字通りのクーペボディです。ただ、とりわけフロントセクションは最近のスクエアな造形になっていて、意外なほどボリューム感があります。つまり、リアに比べて頭が大きく見えるのです。

その大きな頭(もしくは顔)に、これを助長する巨大グリルが付いたのですから、フロントの押し出し感は半端じゃありません。実際には、全長5110mm×全幅2005mm×全高1755mmの巨体と比較すれば、グリル自体は存外に大きいわけではないのですが、プロポーション的に大きさが誇張されてしまっているのです。

●ラグジュアリーカーとしての魅力

XM・リアクオーター
M1をオマージュしたというアクセント・バンド。ゴールドに輝きラグジュアリー感を醸し出す

もうひとつは、他でもなくゴールドに輝く金属素材の使用です。XMは、単に高性能SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)ということだけでなく、「ラグジュアリー」な側面も持っています。

そこで、「アイコニック・グロー」と名付けられたグリルのほか、M1をオマージュしたというボディサイドのアクセントバンド、さらにリアディフューザーにもゴールド素材が驕られています。

つまり、実はボディ全体で豪奢なラグジュアリー感を表現しているのですが、このゴールド素材がグリルに注目を集めてしまい、「デカい、派手過ぎる」となってしまった。ここは、ある意味、同車のコンセプトが正確に理解されていない、理解されにくいと言えるのかもしれません。

もちろん、ボディサイドのアクセントバンドについては、デザイン的にいささか表面的というか、取って付けた感が拭えないという点は指摘しておく必要があると思います。

●トータルで語りたいカーデザイン

XM・リア
絞り込まれたリアパネルは極めてクリーンな造形。ディフューザーのゴールドもアクセントに

デザイン視点で見れば、グリルは多くの要素を持つ部分であり、重要な場所と言えます。ただし、それでも一台のクルマのスタイリングから考えれば一部に過ぎず、肝心なのはあくまでも全体のデザインです。

それは、BMW車の象徴であるキドニー・グリルでも同じで、歴史的な特徴を尊重しつつも、そればかりに注目してしまうのは危険です。

XMには、たとえば非常にクリーンなリアパネルなど、見るべき点がほかにもあります。だからこそ、もっぱらグリルの話に終始してしまうような状況は避けたいところなのです。

すぎもと たかよし

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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