電動バイクもヘリテージを重視するホンダに期待【バイクのコラム】

■ホンダが中国向けElectric Bicycleを発表

Honda Cub e: / Dax e: / ZOOMER e: Electric Bicycles
ホンダ二輪の象徴ともいえる「カブ」は電動二輪でもアイコンとなる。Honda Cub e:

二輪の世界でも、電動化は待ったなしの状況になっています。ご存知のように、とくに中華圏では電動化が進んでいます。

そんな中国市場のZ世代とされるヤングユーザーに向けて、ホンダが新しい電動二輪車ブランド「Honda e:」を立ち上げることを発表、同シリーズのローンチにあわせて登場する3モデルのスタイルを公開しています。

ポイントは、3モデルともに「ひと目でホンダの二輪」とわかるアイコニックなスタイルとなっていることです。

●日本での販売は予定されていない

Honda Cub e: / Dax e: / ZOOMER e: Electric Bicycles
ユニークなルックスで伝説となっているスクーターが電動モデルで復活したZOOMER e:

それぞれモチーフとなっているのは、言わずとしれた「スーパーカブ」、水冷エンジンのスクーターとして人気だった「ズーマー」、そして、最近になって原付二種モデルとしてグローバルに復活した「ダックス」です。

いずれも、ホンダの原付クラスモデルとして印象的なスタイルを見事に電動モデルとしています。とくにズーマーは、ほとんどエンジン車のイメージといえるのではないでしょうか。

とはいえ、公開された写真をよーく見ると、自転車のような足でこぐペダルがついていることがわかります。

これらは電動モーターと足こぎを併用できる二輪モビリティで、最高速度は25km/hに制限されるというカテゴリーのモデルとなっています。

日本の電動アシスト自転車とは異なるレギュレーションで開発されているため、日本での販売は考えていないというのは残念ですが、こうした商品企画の背景は非常に興味深く、また日本市場への関連性も期待できます

●伝統をオマージュできることがブランド価値

Honda Cub e: / Dax e: / ZOOMER e: Electric Bicycles
日本でも原付二種のエンジンモデルとして復活したダックスのスタイルは電動二輪でもホンダらしさを表現。Dax e:

電動キックボードの販売状況などを見ていると、新興メーカーが多数登場しているのがわかるように、一般論として簡易的なモビリティになるほど参入ハードルが低くなりがちです。

ホンダが世界シェアトップとなっている二輪業界においても、小さな新興メーカーが続々と参入してくることで、ホンダをはじめとした大手メーカーが押される状況になることは容易に想像できるところです。

そこで重要になってくるのはブランド力でしょうし、それをアピールする手段として、ヘリテージを感じさせるオマージュスタイルのニューモデルというのは有効になります。

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ホンダの電気自動車専用モデル「Honda e」。ルーツを感じさせるスタイリングだ

伝統のアピールが実際の販売にどこまで寄与するかは断定できませんが、ヘリテージを感じさせるモデルが電動化においてもブランド力となるであろうことは、今回発表された3モデルから十分に感じられるといえるでしょう。

そして、歴史や伝統というのは新興メーカー・ブランドは絶対に手に入れられない要素です。

四輪では、二輪の新ブランドと似た名前が電気自動車「Honda e」として使われています。このモデルも、どこか初代シビックを感じさせるスタイリングが特徴です。モビリティが電動化していく時代のブランド力は、内燃機関の時代に積み重ねてきた伝統が生み出すのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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