「あおり運転」と思われないベストな車間距離とは。ポイントとなる「ゼロイチ」「ゼロニ」って?

■その運転、あおり運転かも?

●あおり運転になる運転行為とは

急ブレーキのイメージ
2020年6月に定められた「妨害運転罪」により、あおり運転をはじめとする「妨害運転」は厳格な取り締まりの対象になりました

近年、ニュースなどで話題にされることの多いのが「あおり運転」です。SNSにドライブレコーダーで撮られた悪質な威嚇行為の動画がアップされることもあるように、身近に潜んでいる危険のひとつとして認識されるようになりました。

2019年、北陸自動車道で起きたあおり運転による死亡事故では、被告の意図的ではないという主張を退け、懲役6年の判決が下されました。あおり運転の被害者・加害者にならないためにも、その実情を把握しておきたいところです。

では、そもそも煽り運転になる運転行為とはどのようなものが該当するのでしょうか。警察庁では、以下の10の違反行為をあおり運転の類型として定めています。

・通行区分違反
・車間距離を詰める
・急ブレーキをかける
・不必要なクラクション
・進路変更禁止違反
・ハイビーム威嚇の継続
・乱暴な追越し
・安全運転義務違反(幅寄せや蛇行運転など)
・最低速度違反
・高速道路などでの駐停車違反

なお、上記のうち、「ハイビーム威嚇」「最低速度違反」「高速道路などでの駐停車違反」を除く7類型の違反については、自転車による行為でも該当します。

2020年6月に定められた「妨害運転罪」により、あおり運転をはじめとする「妨害運転」は厳格な取り締まりの対象になりました。

違反行為を行うと、最大で懲役3年の刑に処せられるとともに、運転免許の取り消し処分の対象となります。また、前記違反行為を行い、著しい交通の危険を生じさせた場合は、最大で懲役5年が科せられることになります。

●車間距離が短いと誤解されることも

車間距離のイメージ
ルールを守るのはもちろん、相手にあおり運転の誤解を与えないためにも、適切な車間距離を保たなくてはいけません

また、道路交通法の第26条により「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない」と、車間距離を取らなければいけない旨が定められています。

ルールを守るのはもちろん、相手にあおり運転の誤解を与えないためにも、適切な車間距離を保たなくてはいけません。適切な車間距離が何mなのかについては諸説ありますが、実際に走行中に前のクルマとの距離を測ることは難しく、正しい距離を感覚で測ることは難しいです。

交通心理学会が調べた、車間距離の取り方についての実験結果によると、運転していて走りやすい車間距離を時間に換算すると、「全ての速度で走りやすい感覚は約1.8秒」になるということです。また、統計的には車間時間2秒以内での事故は死亡事故を含む重大事故が多く、2秒以上離れていた時は大きな事故とはなっていないことが示されています。その実験結果と統計的事実から、車間距離は2秒が適切だとされています。

よって、安全な車間距離の目安に関しては「2秒」といえます。

なお、数え方は、スピードに関係なく、前者が目標地点となる電柱や照明灯などを通過した瞬間を「0」とし、自分のクルマが同じ目標地点を通過するまでに「2秒以上」数えることができれば、車間距離が2秒以上あることになります。

2秒の計り方としては、ゆっくりと「01(ゼロイチ)」、「02(ゼロニ)」と唱えるのがいいとされています(ゼロを付けないと早すぎてしまうため)。

また、車間距離は空ければよいというわけではありません。4秒空けると割り込んできてかえって危険なことも。このように、「あおられやすい運転」にも注意が必要です。たとえば、自分よりも速度を出して走行しているクルマの前に急な車線変更で進路を塞いだり、高速道路の追い越し車線をノロノロといつまでも走っていれば、当然後続車両の迷惑となります。

なお、高速道路においては、最低速度である50km/hよりも遅いスピードで走行するのは違反行為に該当します。追い越し車線を走り続けることも、通行帯違反と呼ばれる違反行為に当たるので、行わないようにしましょう。

●無意識のあおり運転に気をつけましょう

ドライブレコーダーのイメージ
疑わしい運転をしているとあおり運転として捉えられてしまう可能性もあるため注意が必要です

あおり運転の話題の増幅とともに、ドライブレコーダーの普及率も上がっています。疑わしい運転をしているとあおり運転として捉えられてしまう可能性もあるため、注意が必要です。

実際に、チューリッヒ保険会社が全国のドライバー2230人を対象に調査した「2022年あおり運転実態調査」では、「あおり運転をされた経験はあるか?」という質問に対し、「ある」と回答したドライバーは51.3%と、半分以上を占めていることが分かります。

「自分は大丈夫」と思いたいところですが、あおり運転と感じているドライバーが半数以上いるのも、また事実です。特に、急ブレーキやハイビームの消し忘れなどのうっかりミスには注意が必要です。自分を守るためにも、自分の運転を客観視し、思いやりある運転を心掛けましょう。

梅村 ゆき

※2021年12月15日の記事を2023年1月6日に追記・再編集しました。