■東京〜新潟間が最速1時間29分に!
2023年3月18日のダイヤ改正では、上越新幹線の車両をE7系に統一するとともに、大宮〜新潟間の最高速度を現行の240km/hから275km/hにアップさせることが発表されました。
スピードアップにより、東京〜新潟間の最速列車の所要時間は、現行よりも7分短縮した1時間29分となります。
また、大宮〜高崎間で上越新幹線の線路を走っている北陸新幹線の列車も最高速度を275km/hにアップさせ、所要時間を最大2分短縮します。
現在、新幹線各線の最高速度(一部の速度制限区間を除く)は、国鉄時代に開業した、いわゆる既設新幹線である東北新幹線・宇都宮〜盛岡間の320km/hを筆頭に、山陽新幹線の300km/h、東海道新幹線の285km/h、東北新幹線・大宮〜宇都宮間の275km/hの順。
続いて、いわゆる整備新幹線の北海道・新幹線・東北新幹線・盛岡〜新青森間、北陸新幹線、九州新幹線、西九州新幹線の260km/h。そして、既設新幹線の上越新幹線が一番遅い240km/hとなっています。
が、3月のダイヤ改正で、上越新幹線が最高速度最下位を脱して、整備新幹線よりも速くなります。
そんな上越新幹線ですが、実は1990年3月10日に日本で初めて最高速度275km/h運転を行い、日本一速い路線だったことがありました。
当時JR各社は、新幹線のスピードアップに積極的に取り組んでいて、JR西日本は1989年に最高速度275km/h運転を目指して、100系3000番代「グランドひかり」を開発し、1990年2月10日に277.2km/hを達成。
しかし騒音レベルがクリアできず、営業最高速度は山陽新幹線内での230km/hに留まりました。
また、JR東海は最高速度270km/h運転を目標として開発した300系試作車を、1990年3月8日に製造して実走テストで開発を行いました。
1991年2月28日の速度向上試験では325.7km/hの速度を記録しています。量産車は1992年から登場。3月14日に「のぞみ」でデビューして、最高速度270km/h運転を開始していました。
JR東日本も当時運用していた200系を使用し、1988・1989年の速度向上試験で276km/hを達成していました。そして、新幹線で初めて最高速度275km/hでの営業運転を上越新幹線で開始したのです。
もっともこの最高速度275km/h運転は、かなり限定的でした。200系は275km/h対応に改造した4編成に限定。275km/h運転をする区間は上毛高原〜浦佐間の、大部分がトンネルで、なおかつ下り勾配に限定。運行する列車も「あさひ」下り列車の一部に限定していました。
限定的ではありましたが、1997年3月22日にJR西日本500系が山陽新幹線で最高速300km/h運転を開始するまでは、上越新幹線が最速でした。
1998年12月28日に東北・北陸新幹線用のE2系を上越新幹線にも投入。E2系は東北新幹線で275km/h運転をしていましたが、上越新幹線では地上設備を改良しなかったため、最高速度240km/hで運転しました。
しかし、200系よりも高性能だったので、200系の275km/h運転と同等以上の所要時間で走ることができました。200系の275km/h運転は、1999年12月4日で終了。以後は最高速度240km/hの最も遅い新幹線となっていました。
●2017年に上越新幹線で275km/h速度向上試験を実施
E2系は、2004年3月に上越新幹線から一旦撤退し、上越新幹線の車両は200系とオール2階建て新幹線のE1系・E4系の3形式となりました。2012年には、E5系の投入で高速化が進む東北新幹線から撤退したE4系が上越新幹線に集結。その代わり、E1系が引退しています。
東北新幹線の高速化はさらに進んで、余剰となったE2系が上越新幹線に移動。2013年1月26日からE2系の運用が復活しました。
これにより200系が3月に引退し、上越新幹線の車両はE2系とオール2階建て新幹線のE4系の2形式体制となりました。
JR東日本は、2017年4月4日に北陸新幹線用のE7系を2018年度から順次投入して、2020年度末までにE4系を置き換え、上越新幹線の車両をE2系とE7系とすることを発表しました。
E7系は北陸新幹線用と同一仕様。北陸新幹線の最高速度は260km/hですが、E7系の動力性能はE2系と同じく275km/h運転が可能な車両です。
E7系の導入に先駆けて、2017年9月にE7系とE2系を使用した275km/h速度向上試験を実施。両形式の試験編成には、パンタグラフから発生する騒音を遮断するためのパンタグラフ遮音板を搭載。沿線で騒音を測定してデータを収集しました。
E7系は2019年3月16日から営業運転を開始しましたが、パンタグラフ遮音板は設置されていませんでした。上越新幹線にデビューしたE7系のうち2編成は、期間限定でピンクのラインとオリジナルロゴを貼っていました。
なお、上越新幹線へのE7系投入のスケジュールは、2019年10月13日に発生した令和元年東日本台風で、北陸新幹線用E7系8編成が被災したことにより遅れ、その結果、E4系の引退は計画の2020年度末から2021年10月1日に延期されました。
JR東日本は2019年5月8日に、2022年度末までに上越新幹線の地上設備を改良するとともに、車両をE7系に統一し、最高速度を275km/hに引き上げることを発表しました。
残念ながら、E2系は上越新幹線で275km/h運転することがないまま、再びの撤退となってしまいました。E2系用パンタグラフの前面投影面積がE7系用のよりも大きいなど、細かいところで騒音性能に違いがあったのかもしれませんが、上越新幹線で本領を発揮する姿を見ることができなかったのは残念です。
ともあれ、上越新幹線のスピードアップで、既設新幹線の高速化が一段落を迎えることになりますが、今後、東北新幹線・宇都宮〜盛岡間の最高速度が360km/hに引き上げられるかどうか気になるところです。
最高速度260km/hの整備新幹線路線についても、JRが費用を負担すれば260km/h以上にスピードアップは可能。
現在、JR東日本が東北新幹線・盛岡〜新青森間、JR北海道が建設中の北海道新幹線・新函館北斗〜札幌間の最高速度を320km/hとすることを検討しているので、今後に期待したい所です。
(ぬまっち)