京急「Le Ciel」が受賞したブルーリボン賞ってなに?

■鉄道の進歩発展に寄与したものを表彰する賞

●ブルーリボン賞・ローレル賞は鉄道車両のイヤー賞

ブルーリボン賞を受賞した京急1000形1890番台「Le Ciel」

ブルーリボン賞・ローレル賞は、全国規模の鉄道愛好団体である鉄道友の会が毎年選定している賞です。

2022年のブルーリボン賞は、京浜急行電鉄1000形1890番台「Le Ciel」が受賞。12月4日(日)に京急蒲田駅で受賞式を行いました。

京急「Le Ciel」のロングシートモード
京急「Le Ciel」のロングシートモード
京急「Le Ciel」のクロスシートモード
京急「Le Ciel」のクロスシートモード

京急「Le Ciel」はロング/クロス転換シートを備えていて、有料座席列車やイベント列車等に使用するときは、クロスシート車として使用可能な車両。

チャレンジングな姿勢と、堅実性を兼ね備えたトータルバランスに優れた車両であることが、受賞理由となっています。

京急は、ブルーリボン賞のプレートを1893編成の4号車、運転室仕切り壁左上に取り付けたほか、1893編成の前面と2号車トイレ側側面には記念ステッカーを貼りました。

1893編成の4号車車内に取り付けたブルーリボン賞のプレート
1893編成の前面に貼った記念ステッカー
1893編成の2号車トイレ側側面に貼った記念ステッカー

ローレル賞は、東京メトロ有楽町線・副都心線17000系と、半蔵門線18000系、および京阪電気鉄道3000系3850形プレミアムカーが受賞しました。

東京メトロ17000系・18000系
京阪3850形プレミアムカー

東京メトロ17000系・18000系は、サービス設備や搭載機器のレベルアップを積み重ねた点や、2系列の基本仕様を共通化することによる取り扱い、メンテナンスを最大限共通化すると共に、投入線区の独自性も両立させたことが評価されています。

東京メトロ17000系の車内
東京メトロ18000系の車内

17000系・18000系のローレル賞受賞式は、12月3日(土)に新木場車両基地で開催されました。ローレル賞のプレートは、17000系10両車の17101編成と、8両車の17181編成の先頭車と、18000系18101編成の先頭車に取り付けられました。

京阪3850形プレミアムカーは、リクライニングシートを1+2列で配置した有料座席車です。8000系8550形プレミアムカーから進化していて、通勤・観光などあらゆるシーンで、瀟洒(しょうしゃ)で心地よい移動空間を楽しむことができる点が評価されました。

京阪3850形プレミアムカーの車内
京阪3000系一般車

3850形のローレル賞受賞式は、10月1日(土)に中之島駅で開催。プレミアムカー3851号の車内には、2009-2022ダブル受賞を記念したプレートが取り付けられています。

●鉄道友の会が選ぶブルーリボン賞・ローレル賞

ブルーリボン賞とローレル賞は鉄道友の会が、日本の鉄道車両の進歩発展に寄与する目的で制定しました。

前年の1月1日から1月31日までの間に、日本国内で営業運転を正式に開始した新造および改造車両の中から、ブルーリボン賞・ローレル賞選考委員会が候補を選定。鉄道友の会の会員の投票結果に基づき、選考委員会が審議して最優秀と認めた車両を、ブルーリボン賞、優秀と認めた車両をローレル賞に選定しています。

ブルーリボン賞は1958年に制定されました。そのきっかけとなったのが、1957年にデビューした小田急電鉄の特急ロマンスカー3000形SE(Super Express)です。

小田急3000形SEはロマンスカーミュージアムで展示されています

SEは、小田急が新宿〜小田原間を60分で結ぶことを目標として、国鉄・鉄道技術研究所の技術指導によって開発されました。その結果、画期的な軽量・低重心の流線型車体が実現。当時最新の技術が盛り込まれました。

実際その性能は素晴らしく、国鉄に貸し出して高速度試験を実施。線路幅が世界標準の1435mmよりも狭い1067mmの狭軌では、世界最高となる145km/hをたたき出し、このとき得られたデータは国鉄特急形電車や新幹線の開発に活かされました。

まさに革新的車両となったSEの登場を表彰するために、ブルーリボン賞が生まれたと言えます。

ブルーリボン賞の制定当初は、特急車両ばかりが受賞していましたが、1977年以降は通勤車や地下鉄、路面電車の受賞車も存在します。その一方で、1971年、1975年、1994年、1997年は受賞車がありません。

ローレル賞は1961年に制定されました。最初に受賞したのは、京阪神急行電鉄(現・阪急電鉄)2000系・2300系です。

阪急で保存されている2300系

2000系・2300系は通勤車両でありながら、回生ブレーキと定速運転機能を搭載した、当時としては革新的な車両で、「人工頭脳電車」「オートカー」と呼ばれました。

特急車両の受賞が続いたブルーリボン賞に対して、ローレル賞は通勤車両・地下鉄車両・路面電車の受賞が比較的多かったのですが、1975年に国鉄24系25形ブルートレインが特急車両として初めてローレル賞を受賞して以降は、特急車両・新幹線の受賞も見受けられました。しかし、1968年、2004年、2013年はローレル賞の受賞車はありません。

ブルーリボン賞・ローレル賞とも、受賞車が存在しない年があるというのは不思議な気はしますが、投票するのが鉄道愛好家なので、候補車への評価が投票数にストレートに反映されるのだと思います。

●2023年のブルーリボン賞・ローレル賞はどうなる?

最後に、2023年のブルーリボン賞・ローレル賞の受賞車はどうなるかを考えてみました。2022年1月1日〜12月31日に営業運転を開始した新造車・改造車のうち、一番技術的に評価されそうなのが、JR東海の特急車両HC85系です。

JR東海HC85系

HC85系は、ハイブリッド方式を採用した特急車両。最高速度120km/h運転を実現するために、ハイブリッドシステムの発電機と駆動用モーターに同期電動機を採用して、バッテリーの容量も増強していて、従来のハイブリッド車と一線を画しています。

ローレル賞の候補としては、JR東海315系、東京都交通局6500形、横浜市交通局4000形、京都市交通局20系などのほか、観光車両として近鉄「あをによし」、JR四国「伊予灘ものがたり」、JR九州「ふたつ星4047」などがデビューしています。

京都市交通局20系
京都市交通局20系

通勤車両はどれも甲乙付けがたいのですが、ここでは京都の伝統工芸を内装に活かしている京都市20系を挙げてみたいと思います。

近畿日本鉄道「あをによし」
近畿日本鉄道「あをによし」

観光車両では「あをによし」の内外装が印象深いです。

ローレル賞に関しては、複数形式が受賞することが多いので、予想がとても難しいです。

2023年のブルーリボン賞・ローレル賞は5月下旬頃に発表されると思いますので、いろいろ予想してみるのも面白いかもしれません。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
続きを見る
閉じる